ピュアオーディオ

infinity IRS-EPSILON 導入

6年ぶりにメインスピーカーの入れ替えを行いました。私の中でinfinity終着点となるIRS-EPSILONの導入です。今回は単なるレビューではなくこれまで私が愛用してきたinfinityのスピーカーそのものについて触れながらIRS-EPSILON導入についてご紹介したいと思います。

20年以上infinityを使い続けてきました

infinityは1968年宇宙開発プロジェクトに参加していた科学者によって設立されたアメリカのスピーカーブランドです。家庭用スピーカーとしては2000年頃に主な開発は終わってしまったので今は知る人ぞ知るメーカーとなってしまった感がありますが、当時は人気ブランドの一つで今でもファンがいらっしゃると思います。ホームシアターからピュアオーディオまで幅広くカバーし、ハッとするような楽器やボーカルの生々しさ、豊かに響く低域、繊細で煌びやかな高域を持ち合わせた音場型のスピーカーです。

私が初めてinfinityを買ったのはKappa9.2iというフロア型スピーカー。高さ152.5cmの4Way5スピーカーで30cmウーファーを2つ積んでいたのが特徴的。ホームシアターにも最適とされていたモデルです。

かつてはこのスピーカーを中心に140インチシアターを作っていました。

とにかく雄大で響き渡る音。まさに映画館のような音場感で、映画はもちろんゲームも楽しんでいました。以降、他のスピーカーを使ったこともありますが結局Kappa9.2iに戻ってくるほど絶対の信頼を置いていたスピーカーです。

そして、infinityの音を「音楽鑑賞」としても高品質に楽しみたいと導入したのがIRS-OMEGAです。IRSはInfinity Reference Standardの頭文字で、数あるinfinityのスピーカーシリーズの中でも「リファレンス」として扱われる、最もinfinityの音を体現しているシリーズです。 Kappaがホームエンタテイメント志向だとすれば、IRSシリーズはピュア志向。その最後の作品がOMEGAです。

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そして、OMEGAの上質さを残しつつKappa9.2iの広大な響きを再度取り戻したいと導入したのがIRS-SIGMAでした。まさに我が家のスピーカーの完成形。IRSシリーズの持つピュアな音に加え、震える響きにより更に広がった音場空間を作り出してくれます。

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最初扱いに苦労しましたが何とか納得のいくところまで辿り着いたと思います。infinityのスピーカーとしてはこれが最終形かなとの気持ちで買ったIRS-SIGMA。実際もうこれ以降infinityを買う事はないだろうと思っていました。

本当はサイズを小さくしたかった

ここ6年ほどメインスピーカーとして稼働していたIRS-SIGMAですが、改めて高さ149cm、重量1本67kgという大型フロア型なのは大きすぎるとも感じていました。正直視聴環境からすれば完全にサイズオーバー。でもその音に惚れ込んでここまで来てしまったので自分にはこの環境が最良として楽しんできました。(単に小さいスピーカーに変えるだけではその雄大な音場空間が完全にスポイルされてしまうのです)

ただそろそろ思い切ってinfinityに別れを告げ、音楽の聴き方や音の楽しみ方を変える覚悟でもう少し小さなサイズのスピーカーに転向しようかな・・・とも考え始めていました。2021年8月にアフロオーディオさんに試聴に行ったのもそんな検討の一つ。

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でもやっぱり色々試聴してもIRS-SIGMAのようには響かない。これはある種infinityの個性でもあるので、何かが良くなるかもしれない一方で好きだったinfinityサウンドを失う事になると考えると踏み込めずにいました。

そんな時に、図らずもIRS-EPSILONを手に入れる機会を得てしまいました。

ああ。デカイ。小さくするつもりがむしろデカくなってしまう。でも見つけてしまった以上、もうこの子を引き取るのは私しかいないだろう。と里親のような気持ちで心が揺さぶられてしまったのです。

かくしてIRS-SIGMAを上回る兄弟機「IRS-EPSILON」を我が家に迎えることになりました。

IRS-EPSILONの特徴

IRS-EPSILONは歴代IRSシリーズの魂を受け継ぎ、現代風のフロア型サイズに昇華させた最終系モデルです。IRSシリーズの最後の世代はOMEGA、SIGMA、EPSILONの3モデルで、シリーズ最後の3兄弟と言えるモデルでした。

当時のカタログを見てもこの3台がセットで紹介されています。

一見すると、OMEGAだけ少しデザインが違っていて、残るSIGMAとEPSILONはそっくりに見えますよね?ですが実際はこの3台の中で最も構造が異なるのはEPSILONです。

実は「IRS-OMEGA」や「IRS-SIGMA」はIRSをIRSたらしめている大きな2つの特徴が「割愛」されています。

その意味では、より一般的なスピーカーに近づいたのがこれまで保有してきた2台です。そして、IRS-EPSILONはその2台にはないinfinityの真骨頂と呼べる特別な構造を残す最後のモデルとも呼べるのです。

IRS-EPSILONの特徴①

infinityと言えば平面ユニットがその特徴として挙げられますが、私が所有してきたKappa9.2i、IRS-OMEGA、IRS-SIGMAは中域/高域こそ平面ユニットが使われていますが中低域は16cmコーンでした。もちろんコーン型であってもその特性は追及され、調和のとれた音を奏でていましたが高域、中域のフラットなユニットとはやはり違った特徴だったと言えるでしょう。

しかしIRS-EPSILONは中低域部分に巨大な平面ユニット「L-EMIM」を配置しており、重低音を除くほとんどの音を平面ユニットだけで再現します。これによりinfinityを「infinityたらしめている」最大の音作りが体現されているのです。

このL-EMIMは幅15cm、縦30cmもある巨大なユニット。この30cmウーファーに匹敵する面積で歪みを抑えた中低域を再現します。実際聴いてみると「中低域」という音域はほとんどの音楽の土台となる音域であり、ここが音の重心の質を決めると言ってもいい部分である事が分かります。そこにinfinity最大にして最強の平面型ユニットを配する事でKappa、OMEGA、SIGMAとは一線を画す本来のinfinityサウンドを奏でるスピーカーとなっているのです。

特に高域から中低域に至るほとんどの音を平面ユニットで統一することによって繋がりの良さを実現すると共に、クロスオーバーもSIGMAの160hzに対し、EPSILONは150hzとより低い重心を中低域ユニットに任せる設計で、高解像な低域再現を目指しているように思います。

また高域部のHE-EMITはスピーカーの真裏にももう一つセットされており、前後から高域部を鳴らすことで広がる音場と独特の響きを作り出します。これはSIGMAでも採用されていた構造です。

IRS-EPSILONの特徴②

そしてもう一つ大きな特徴はOMEGAやSIGMAには存在しない「サーボコントロールアンプ」の存在です。これはウーファーを制御する為に存在するアンプで、コントロールアンプとパワーアンプの間に挟み込みます。

サーボアンプの果たす役割は以下の通りです。

サーボアンプでは、ボイスコイルに取り付けられた検出回路でウーファーの動作(加速度)をモニターし、差分サーボアンプによりこの出力を入力波形と比較しています。そして、アンプより出力された電気的入力とウーファーの音響的信号との誤差信号(低域歪)は位相反転されてウーファーのパワーアンプに戻され、歪を打ち消すような動作をします。

つまり、ウーファー側の状況をサーボアンプに送り込み、歪を打ち消すようにパワーアンプから信号が出力される。という事をぐるぐる繰り返しているイメージです。スピーカーとして非常に特殊な機構だと思います。

サーボ回路の構造

IRS-SIMGAでは割と響く低域だったのがIRS-EPSILONではしっかりと沈み込みながらもタイトな低域になっています。IRS-SIGMAの兄貴分なのでもっと豊かに響くと想像していたんですが、逆に上質で明瞭な低域になった事に驚きました。この効果と言えるかどうか何とも言えませんが、これがサーボコントロールアンプの効果だとすれば凄いですね。

またサーボコントロールアンプでは低域部のレベル調整で手動でも細やかに出力調整を行う事も出来ます。

ダイアグラムとしては以下のように表されます。

見て頂くと分かりますが、コントロールアンプから出力された信号はサーボコントロールアンプに入り、「中高域部」と「低域部」の2つの信号に分かれます。「中高域」はそのままパワーアンプにバイパス出力され、「低域部」はもう1つのパワーアンプを通して出力された後、サーボ機能により信号がサーボコントロールアンプに戻ってくる構造です。

つまり、このスピーカーを鳴らすには「中高域用のパワーアンプ」と「低域用のパワーアンプ」の2台バイアンプ構成が必須となるという事です。バイアンプに対応・・・ではなくバイアンプでないと鳴らせないという構造設計なんです。我が家ではROTEL RB-1592SEを2台使って構成しています。

そしてサーボ機能を働かせるためにスピーカーには「電池」が必要です。これは1~2年ごとに交換する必要があります。また普通のスピーカーケーブルに加えて「サーボ用のケーブル」をスピーカーに接続する事になります。

背面接続端子

9V乾電池を装着。その下にはLEMIM(中低域)、EMIM(中域)、EMIT(高域)の各ユニットの調整スイッチがあります。

IRS-EPSILONは大きい

さて、特徴としてはIRS-EPSILONが別格である事がお分かり頂けたと思いますが、大きさで言えば今度はOMEGAだけが大きく異なります。

まずOMEGAとSIGMAを比較するとこのくらい違いがあります。SIGMA(右)と比べればOMEGA(左)は子供みたいですよね。それでも122cmあるんです。そしてOMEGAは149cmです。

そしてIRS-EPSILONはそんなSIGMAより更に大きい157cm。

大きさの違い

  • IRS-OMEGA 122cm×39cm×36cm 55kg/本
  • IRS-SIGMA 149cm×46cm×44cm 67kg/本
  • IRS-EPSILON 157cm×46.8cm×44cm 78.5kg/本

この2台を自宅で並べた事があるのは日本で私くらい?!じゃないでしょうか。

セッティング

さて、前置きが長くなりすぎました。次は接続です。先述した通りサーボコントロールアンプを経由して2台のパワーアンプに繋ぐ必要があります。我が家はコントロールアンプにLUXMAN C-800f。パワーアンプにROTEL RB1592SEを2台構成しています。

標準的な繋ぎ方だと【コントロールアンプ→サーボコントロールアンプ→2台のパワーアンプ→EPSILON】となります。

普通はコントロールアンプからの出力は1系統だけですのでサーボコントロールアンプで高域、低域に振り分ける。という仕組みです。但しサーボ機能が働いているのは低域だけで高域信号はバイパスされてサーボコントロールアンプを素通りしています。よってサーボコントロールアンプの電源をオフにしていても高域信号だけは流れるんですよね。

そこで我が家ではC-800fが搭載している「バイアンプ機能」を使って最初から2系統出力を行う事にしました。

これにより、高域信号はC-800fから直接パワーアンプに送り込んで無駄な回路ルートを省き、低域信号のみサーボコントロールアンプを経由してサーボ機能を働かせます。最初から高域、低域を分ける事でより純度の高い音を目指せると考えています。

設置~サウンドチェック

非常に大きくて重たいので想定位置にセッティングするだけで一苦労でした。いや、二苦労。三苦労くらいありました。

これがIRS-SIGMAの設置状況。これまでの環境です。

右側だけIRS-EPSILONに換えました。SIGMAも大きいと思っていましたが、比較すると少し小ぶりに見えてきますね。

2台とも入れ替え完了です。確かに大きくはなりましたが元々のSIGMAも大きかったので全体の印象はそこまで変わらないですね。infinity好きな私としてはこの光景に感無量です。ちなみにテレビがとても小さく見えますがこれでも65インチあります(笑)

実際に音を出してみましたが、先ほども少し触れた通り当初想像していたものとは少し違っていました。

見た目のイメージとしてはIRS-SIGMAの上位互換だと思っていましたので低域の響きは更に大きくなると考えていたのですが、実際にはSIGMAより低域に締まりが出ました。サーボコントロールアンプによる制御の効果もあってか、非常に深く沈み込みつつも輪郭が甘くならずタイトで強さのある低音になっています。比較するとIRS-SIGMAの低域はボワボワっとしたブーミーな部分があったんだろうと思います。また量感についてはサーボコントロールアンプ側で調整ができますのでOMEGAやSIGMAとは異なりサーボ制御が掛かった状態でボリュームを持たせる事も可能です。

そして何と言ってもL-EMIMによる中低域の鳴りです。色んな音源を聴いてみると音を分厚くしているのはウーファーではなくL-EMIMの方だと気づきます。もちろん更に深く伸びる為にウーファーは活躍しているのですが、低域系の楽器の音もその骨子はL-EMIMで鳴っていますのでここが歪みなく高解像な平面ユニットで再現出来ているのは凄いと思います。まさかこんな平面から芯の太い音が奏でられるとは驚きです。もちろん中域と高域はこれまでのIRS-SIGMAと同じユニット構成で繊細で透明感のあるinfinityらしい音が広がります。

理想のスピーカーは1枚の振動版で全帯域を鳴らし切る事。かもしれませんが、平面ユニットをフラットに展開する事で繋がりの良い均一化された音を奏でられるのはこれまでのinfinityの技術の蓄積によるものだと思います。そしてそれを30cmウーファーの重低音で広く包み込む事で全体の音が成型されています。

以上のように、導入前はIRS-SIGMAの延長線で考えていたIRS-EPSILONでしたが、実際にはOMEGAで感じていた上質さを持ちつつ、SIGMAの広がる音場を融合したまさに3兄弟の長男モデル。といった感想となりました。IRS-SIGMAの時にはきちんと鳴らせるようになるまでパワーアンプを購入したり、しばらく時間を掛けたりと大変でしたが、IRS-EPSILONは弩級パワーアンプ2台が既にある環境に迎え入れましたので、何の問題もなくスッと環境に馴染んでくれたと思います。

今回のIRS-ESILONの導入によって、私のinfinityスピーカー遍歴は「終着点に立った」と言えます。もうこれ以上infinityでのグレードアップを行う事はないでしょう。もし次にメインスピーカーを買い替える機会があるとすれば同じ方向でのレベルアップではなく完全に求める音の変化が来た時になるのではないでしょうか。

infinity IRSシリーズの歴史

IRS-OMEGA、SIGMA、EPSILONはIRSシリーズ最後のモデルとご紹介しましたが、最後にIRSシリーズの歴史と何故私がIRS-EPSILONを終着点と考えているか。についてまとめておきたいと思います。

infinityのIRSシリーズは大きく分けて4世代ありました。

第1世代 IRS / IRS-V

最初にして最強・最高の1台。いや、台という単位では表せない1システム。それが「IRS」「IRS-V」です。高さは2mを超え、総重量は600kgを超えるシステム。30cmウーファーが6つ、高域&中域ユニットは48個。それが左右2セットという考えられない仕様です。

第2世代 IRS-BETA

さすがに第1世代よりは小さくなりましたがそれでも高域/中域と低域とが分かれている弩級システムです。ユニットの数こそ減りましたが中低域に巨大平面ユニットを配置したこれまた尖ったシステムです。

第3世代 IRS-DELTA / IRS-GAMMA

この世代でやっと片チャンネル1台という普通のスピーカーになりました。DELTAにサーボコントロールアンプが付いたものがGAMMAでスピーカー自体は2モデルとも同じものだそうです。

第4世代 IRS-OMEGA / IRS-SIGMA / IRS-EPSILON

そして最後の世代が私が保有してきた3台のIRSシリーズです。DELTAより更にコンパクトになり、infinityスピーカーのエッセンスを凝縮して生み出された世代です。

第4世代

  • L-EMIM&サーボコントロールアンプ(パワーアンプ2台)を擁し、IRSシリーズの魂を継承した完成形モデル「IRS-EPSILOIN」
  • 中低域をコーンに変え、パワーアンプ1台で駆動できるようにして、EPSILONをリーズナブルに昇華させた「IRS-SIGMA」
  • IRS-SIGMAの設計思想を受け継ぎ、コンパクトな中にinfinityらしさを詰め込んだ次世代に繋がる最終モデル「IRS-OMEGA」

もちろんinfinityの真骨頂はIRS-Vなどの巨大スピーカーなのかもしれません。ですが、進化を遂げながら最後にinfinityが辿り着いた第4世代は家庭用スピーカーとしてのinfinityの完成形なんじゃないかと思います。そういった意味で、第4世代3モデルを全て保有・経験し、その中の最高モデルIRS-EPSILONを手にした今、私のinfinityスピーカーの旅は「ここが最終点」と考えているのです。

20年以上掛けて手にしてきたinfinityの「ある意味終わりに辿り着いた」のは感慨深くもあり、なぜかちょっぴり淋しさも感じてしまいますが、これから十分にIRS-EPSILONを楽しんでいきたいと思います。

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