前回、前々回でOLEDへの注目と2016年モデルの評価について記載しました。CES 2017ではSONYとパナソニックからもOLED(有機EL)テレビが発表されて注目を浴びました。また、ついに国内正式発売モデル一番乗りとなる東芝のOLEDモデルも発表されましたね。
どうせ高額でしょうから今回の私のターゲットにはならないのですが、あまりにスペック的に革新的であればこれは今の購入を見直す必要が出てくる可能性もあります。特に気になるのは「最高輝度」と「HDR規格対応」です。
3メーカーのOLED発表モデル
LG 7シリーズ
2016年の6シリーズから、世代が新しくなり7シリーズが発表されました。従来のG/E/C/Bに加え壁に貼り付ける超薄型のWシリーズの5シリーズです。
E7P
従来より25%輝度が上がったとの事で、てっきりパネルが第3世代になったのかと思いきや、どうやら第2世代のまま(実態は2.5世代?)だそうです。6シリーズは公称800nitでしたので同世代のまま1000nitに突入か?という気もしますが実際はどうなんでしょう。従来の3D対応モデルE6P/C6Pは実測ピーク652nitでしたから、ここから25%だとやっと公称の800nitに届く程度です。3D非対応のB6Pは実測ピーク787nitでしたからここから25%だとほぼ1000nitまで届きます。ネット上には1000nitという言葉もちらほら出てきていますので期待したいところ。暗部階調の見直しなども図られているようですのでマイナーアップグレードといったイメージですね。
HDRは6シリーズの「ドルビービジョン」「HDR10」に加え「HLG」更にはテクニカラー社の「Advanced HDR」と現世代のHDRとしては完全網羅となるんじゃないでしょうか。
パナソニック EZ1000
パナソニックからはEZ1000というモデルが発売されます。
海外で販売されていたOLED前モデルのCZ950から約2倍の輝度になった。とされています。CZ950は最大輝度450nit程度だったようですから単純計算では900nitとなりますが、公表値では800nitのようです。LG第2世代パネルを使っているのでパネルスペック通りですね。
そこにパナソニック特有の映像処理エンジン。特にプラズマ時代からのノウハウで日本人好みの画に仕上げてくれるんじゃないかと期待できます。色域の正確性はもちろんの事、LG6シリーズで批判された暗部階調などもしっかり認識した上で対策しているとコメントされていますから仕上がりが期待できますね。
規格としては「HDR10」と「HLG」の対応は確認できています。ドルビービジョンの対応が公称されていないのがちょっと気がかりですね。
画面下には80W出力のサウンドバーを配置し、サウンドにも気を配っているデザインとなっています。
SONY A1E
SONYが発表したOLEDも輝度は800nitとの事でした。パナソニック同様LG第2世代パネルで3D非対応ですからスペックどおりですね。
A1E
LGはノイズを目立たせないために暗部階調を殺しているのでは?との意見もありましたから、SONYであれば暗部階調を上げながらもノイズ低減できる処理をしてくれる期待もあります。
A1Eは「HDR10」「ドルビービジョン」「HLG」の3規格への対応を謳っているので、パナソニックよりもちょっと安心材料が多いですね。特に現時点でのHDR最高画質であるドルビービジョンはこれから発売されるモデルには必ず対応してもらいたい規格です。
SONYもサウンドには拘りがあって、パネル自身をスピーカーにして、ディスプレイから音を出してしまう「アコースティックサーフェス」という構造になっています。実際の視聴体験で「思った以上に音は良かった」というレビューもありましたから、パナソニックとどのくらいの差があるのか興味ありますね。
OSがAndroidを継続しているのはちょっと不安です。Z9DやDX950でもAndroidですが操作感覚がモッサリしていますし、ユーザの声でも結構再起動などの不安定さがあるようです。「今さらOSを見直すよりは・・・」という事なのかもしれませんが、そろそろキビキビ安定したOSに仕上げて欲しいところです。
ちなみにVIERAのOSもモッサリしていますし、サクサク動くのはLGのWebOSだけという印象です。
東芝 X910
そして遅れて東芝からX910が発表されました(国内正式情報としては一番乗りです)
http://www.toshiba.co.jp/regza/lineup/x910/index_j.html
X910
こちらもパネルは当然LG第2世代だと考えられます。最高輝度で800nitという事で横並びですね。REGZAらしく高画質エンジンやゲームモード、タイムシフトマシンなど、液晶テレビで培った技術、機能が全て盛り込まれます。従来のZ20Xの後継として液晶もZ810Xが発売されますが、型番から見ても想像できる通りOLEDモデルが最上位という位置づけになります。
こちらも白飛び、黒潰れをそれぞれ独自に処理した上で改めて合成する事で改善する機能を搭載しているそうです。画質が楽しみですね!
4Kスカパーチューナー内蔵など、国内仕様がいち早く出てきていますのでOLED2017年国内モデルのリファレンスとして情報収集するにはちょうど良いですね。HDR規格ではパナソニック同様「HDR10」「HLG」に対応しているようです。
という事で、今までの話をまとめるとこんな感じですね。
※LGの2016年モデルもファームアップでHLGへの対応予定があるようです。
各社LGの6シリーズと同じパネルを使っていますが、作り込みで品質を上げてくるのが2017年モデルという印象です。あるいは若干パネル自体にも改善が加えられて2.5世代になっている可能性もあります。いずれにせよ第3パネルは2018年モデルになるようですので、そこで大幅なステップアップになるんでしょうね。2017年モデルについて見つからなかった情報なんですが個人的には最高輝度よりも全白時の輝度が気に掛かりますね。ここが落ちすぎると映像の印象に影響すると思います。
それぞれの予想価格
LGは単純な世代交代ですので、6シリーズの初値に近い金額だろうと予想します。
B6P 55インチ49万円/65インチ76万円
E6P 55インチ76万円/65インチ98万円
パナソニックの海外前モデルCZ950は65インチで約100万円だったそうですから、今回のEZ1000も100万円クラスでしょう。
SONYは液晶最高画質のZ9Dが65インチで70万円ほどから出始めましたので、次世代OLEDとなるとパナソニックに近い100万円ほどで出してくるかもしれません。
東芝は見込み価格が公開されており、65インチで90万円、55インチで70万円前後とされています。
65インチだとパナソニック、SONY、LGの上位モデルが100万円横並び、液晶でもリーズナブルだった東芝が少し安い。というのが妥当な予想じゃないでしょうか。そうなるとLGのBシリーズだけが一回り安いという構図になりそうです。
HDMI2.1規格の発表
更に今回のCESではHDMI2.1についても発表がありました。
HDMI2.1では48Gbpsと、HDMI2.0の18Gbpsから約2.6倍の帯域幅に拡張されました。これによって8K映像の伝送を行います。
HDRは「ダイナミックHDR」となって動的なHDRコントロールが出来るようになり、ARCも「オブジェクトオーディオ」に対応など、一段規格レベルが上がってきます。
2017年の4K OLEDにはまだまだこのHDMI2.1規格は搭載されてこないでしょうから、2018年以降のモデルが対象になってくると思います。こうなると、2017年モデルを高額で購入するのが正解か?と言うと微妙な感じになってきますよね。
ではHDMI2.1でアガリか。というともちろんそんな事はありません。
HDMI2.1では4Kは120hz×4:4:4フォーマットで伝送できますが、8Kについては「60hz×4:4:4」「120hz×4:2:0」に限られます。組み合わせ上のフルフォーマットである「8K×120hz×4:4:4
」伝送には対応できないんですよね。現状そんなコンテンツは一般にはありませんが、将来的に8Kにする代わりのトレードオフのような事が起こる可能性があります。
例えば、今起こっているのが東芝のZ10Xのように「2KならHDRを通せるけど、4KだとHDRを通せない」というようなトレードオフ関係です。こうした規格対応には「帯域幅」がボトルネックになる事が多分にあります。今回48Gbpsは「8K×120hz×4:4:4伝送」ができない規格ですから、後々当然「HDMI2.x」としてもっと大きな帯域幅の規格が出てくると思います。
ここ数年、4K/8KやHDR、その他オーディオ規格などは毎年のように規格が追加されています。HDRは規格対応だけでなく、その中での最大輝度アップが毎回図られています。よって、テレビの買い時にベストがなくなっているのです。
私は「欲しい時が買い時」という考え方はあまり好きではないのですが、テレビに関しては「欲しい規格が出たら買い替えよう。我慢できる規格の時はスルーしよう。コスパも見極めて妥協できるラインに乗り続けよう」という考えに至っています。
結局、どのモデルを選ぶか
トータル完成度という意味ではまだ液晶の方が優位な気がします。2016年モデルで言えば「DX950」「Z9D」は間違いのない選択肢でしょう。東芝なら2017年モデルの「Z810X」が間もなく発売されますが、パッと見る限りZ20Xからの進化はそれほど劇的ではないように感じます。
一方、OLEDに期待するなら2017年モデルを待つのも手です。細かい仕様が発表された東芝や画質面では一番期待できるパナソニックもいいですね。規格とコスト重視でLG B7Pという判断もアリでしょう。特に、OLEDの素性の良さを生かしたまま、弱点とされた暗部階調や白飛びをしっかり調整しようとしている当たり2017年モデルには期待できます。
但し、OLED2017年モデルは、2016年と同じLG第2世代パネル(LGは2.5世代?)を利用しますので敢えて高額なタイミングで買うべきか微妙なところです。2018年登場予定の第3世代パネルではもしかすると同じ有機ELでも「RGBW蒸着方式」ではなく「印刷方式」となって純粋なRGBパネルになるかもしれません。あるいはSamsungが進めている量子ドットLEDが有力になってくるかもしれません。どう転ぶか分からないのが2018年モデルですので、待てるなら待つべきでしょう。そこまでとは言わずとも、輝度を始めとした基礎能力は第1世代から第2世代の時と同等のレベルアップが期待されます。
ただ2018年になると今度は8Kパネルで出すのかどうか?も見どころになってきます。これが2019年以降に転ぶとなるとまた買い時を見失いそうですね。何年サイクルでテレビを買い替えられるか。にも依ってきます。
このような状況の中で「今2016年モデルをリーズナブルに買う判断はアリ(待つなら2018年以降まで待つ)」と考え、今回はLG 55B6Pにチャレンジしたいと思います。実勢価格25万円程度ですから画質コスパとしては相当優秀だと思いますよ。色々弱点も指摘されていますが、実際に家庭でどんな画を見せてくれるのか、調整できる範疇でどう変わるのか、というのも検証がてら堪能したいですね。
今回はHDRや輝度の話を中心に話を進めてきましたが、動画性能、色域カバー率、あるいは様々なネットワーク機能などもテレビを選定する時に重要なポイントになると思います。論点として記載しませんでしたが、検討される際は是非その辺りも調べつつ判断頂くと良いと思います。