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【レビュー】Vienna Acoustics Mozart Grand Symphony Edition を購入しました

ウイーンアコースティクスのスピーカー Mozart Grand Symphony Editionを導入しましたのでレビューしたいと思います。

オーディオ卒業からの出直し

2022年以前は弩級スピーカーのinfinirty IRS-EPSILONを使っていました。それまでも長らくinfinityを愛用して自分の中で最後ともいえるIRS-EPSILONを手に入れもうスピーカーはこれであがりかな。と考えていました。伴ってこのバイアンプ必須のアンプ食いスピーカーを鳴らす為にLUXMAN C-800f、ROTEL RB-1592SE×2台を投入。これだけで定価総額400万超です。

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ですが、引っ越しを含め様々な環境変化が重なり「この機会にピュアオーディオは卒業しよう!」と決意。IRS-EPSILONもC-800fもRB-1592SEも全て売却し、もはや我が家にはAVアンプ 「SR8015」しか残されていない状態になりました。すっからかんです。

しかしながらピュア環境の比重は下げたとはいえ

・映像と共にサラウンドはこれからも楽しんでいきたい
・その為のスピーカーは必要
・そして我が家には83インチの大型テレビを導入しましたのでもうフロア型スピーカーを置くこともできない。(フロントスピーカーがないのでとりあえず便宜的にDALIのAlteco C1を床置きして音を出していました笑)

ということでサラウンド用途にちょうどよいブックシェルフかコンパクトなトールボーイをフロントスピーカーに導入しようと物色を始める事にしたのです。

AVアンプで鳴らせるスピーカーを

ここでまたパワーアンプの買いなおしをしてしまっては意味がないのでAVアンプで鳴らせるスピーカーで考えました。いえ、もちろんパワーアンプを加えた方がどんなスピーカーも良い音になるのは分かっているんですが、以前のIRS-EPSILONはAVアンプで鳴らそうもんならすっかすかの音にしかならない代物でしたので「AVアンプでもそこそこに鳴る」というのが今回の前提条件となります。

金額感としても100万円を超える様なレンジではなく20万円~50万円前後の入門~ミドルをイメージ。実はこの時点で中古も含めてVienna Acousticsは注目していました。

私の好みは「解像度の高いモニター調」ではなく「艶っぽく温かみのある音」で、特に打楽器、弦楽器、ピアノなどクラシカルな楽器の音をどれだけ艶めかしく聴かせてくれるか。を大切にしています。そういった面では往年のソナスファベールやこのViennaAcousticsは嗜好に近い存在でした。以前ソナスのクレモナも中古で試聴しに行ったこともあります。Viennaは実際に聴いたことはありませんでしたがクラシックに最適で特に弦楽器は抜群に相性がいい。と言われていましたのでとても興味があったんですよね。

とはいえ、同価格帯で色々聴きながら検討したいと思って量販店中心に店頭であれこれ比較してみました。

ざっと聴き比べたのはこのミドルクラスゾーンに並んだスピーカーたち。B&W、FOCAL、DALI、ELAC、KEF、FYNE AUDIOなどポピュラーなものを聴いていきます。最近流行りのPOLK AUDIOも聴いてみました。

試聴環境としては良くないですが、ざっと傾向を比較するには十分。AVアンプでの比較はもちろんできませんがMarantzの入門機の組み合わせで仮想SR8015と置き換えて見ていく事にしました。あくまで限られた環境でシビアではないざっくり試聴なので的確ではないかもしれません。

試聴してみて

  • B&W 603/703/704あたりが並んでいました。もう改めて聴かなくても散々あちこちで聴いた音。ある意味一番基準となる「情報量も多く、クリアで、力強さもあり弱点の少ない」スピーカーだと思います。私の好みとは違うジャンルなのでずっと敬遠し続けてきているブランドですがいつか一度手にしてもいいなと思っていました。
  • DALI RUBICON/OPTICONといったスタンダードクラスですがこの価格帯のDALIは今一つピンとこない印象。特に安価なレンジのDALIは少し音が薄くて安っぽい気がしてしまいました。RUBICONは悪くなかったと思います。ブックシェルフのEPICON2もありましたが、やはりブックシェルフは厚みが不足しがちでEPICON2でさえトールボーイと比較すると低域が物足りない印象でした。評判のMENUET SEもさすがにトールボーイ群と比較してしまうと小粒感が否めません。今回は試聴していませんが個人的にはEPICON6のルックスがとても好きでルビーマカッサルを家に置いたら綺麗だろうな~とずっと憧れていましたが、以前音を聴いた時には即決で買う感じではありませんでした。ちなみに我が家のハイトスピーカーはAlteco C1なのでDALIには親近感あります。
  • ELAC 247/267/407が中心。細いボディなのにしっかりとしたメリハリのある音を出してくれます。UFR52なんて安いのにいい感じじゃん!って思いました。何となく質実剛健、堅い音を出すブランド。というイメージを持っていましたが、さすがホームシアターなんかでもよく取り上げられるブランドだけにオールマイティ感が高い印象を持ちました。ミニサイズで評価の高い312も悪くありませんが今回の映像&サラウンド目的として考えるとMENUET同様ちょっと弱いかなと思いました。
  • FYNE 想像より好印象でした。クッキリ力強い音を聴かせてくれます。もっと温かい音をイメージしていたんですが意外と硬派。でも質感が高くリッチな音だと思いました。ブックシェルフのF500もサイズを上回る力強さを感じましたがF502SPは格が違うと思いましたね。値段がぐっと上がりますが抜群に良かったです。リーズナブルなところではノーマルF502になりますがF502SPとは全然違っていてこれを比較してしまうとF502SPに行きたくなるなと思いました。
  • POLK コスパ抜群と言われるだけあって「この値段でこの音」を出されてしまったら値段重視ならPOLK一択では?という気さえします。R600でも十分楽しい音ですし、R700くらいまでくると貫禄すら感じます。やや大味で籠り傾向ですが迫力で押し切るイメージ。ハイエンドスピーカーな音とは違うかなとは思いました。
  • KEF Rシリーズは見た目はクールなんですが音はイマイチ好きになれず。です。少しクリアさが足りずややもっさりして聴こえてしまいました。上位のReferenceシリーズは良いんだと思いますが、Rシリーズであれば価格的に他ブランドの方がいいんじゃないかなと感じました。
  • FOCAL FOCALは昔聴いてそんなに印象に残っていなかったんですが、今回はAria926がめちゃくちゃ良かったですね。個人的には936より926の方がまとまりがあって良かったです。華やか、にぎやかで、各音の描き方もうまい。ここまで聴いた中ではAria926が一番気に入りました。

ここまでの試聴で一番いい音だと思ったのはFYNE AUDIOのF502SP。でも実際バランスも考えて好みに合うのはFOCAL Aria926かな?というところです。Viennaを選ばなければこの辺りが良かったところですが、やや大きいので我が家の環境に合わせるのは難しいなぁと感じていました。

Vienna Acousticsの印象

そして試聴機たちの後ろにVienna Acousticsがあるのも見逃していません。40番Beethoven Baby Grand Referenceと、38番Mozart Grand Symphony Editionです。残念ながらモーツァルトは現行品ではない為もう値札も付いていませんでしたが試聴は可能でした。

ベートーベンはコンサートグランドとベビーグランドの2種類があり今は「リファレンス」というモデル名が最新となります。一方モーツァルトは「リファレンス」シリーズは発売されていないようで、ひとつ前の「シンフォニーエディション」シリーズが最後となっています。

特にモーツァルトはサイズ的に非常にコンパクトで我が家のニーズにピッタリ。でも箱が小さいので鳴りも小さくなってしまうんじゃないか?下手したらブックシェルフ並かも。というのが一抹の不安。

いざ聴いてみる事にしました。実は世間的にはそんなに評判の良さを聞かないモーツァルトですがサイズ感も含めて気に入るなら本命になるスピーカーだと思ってたんですよね。

試聴してみて

一聴して他のスピーカーとは違うと思いました。

なんていうんでしょう「静か」です。さっきのAria926は華やか&賑やかでじゃんじゃん前に出てくる感じの音でしたが、モーツァルトは何とも大人しい。この大人しいというのが「元気がない」という意味というより「大人びている」というニュアンスが近いでしょうか。

まず一音一音の質感が高い。安っぽい薄い音じゃなくて、輪郭と立体感を持ってホンモノの音という感じで鳴ります。比べると他のメーカーには音が賑やかになると音が安っぽくなるものもありました。このあたりが100万円を超えるハイエンドとの大きな差なのかもしれません。

でもモーツァルトはそもそも賑やかじゃないから逆に楽器の一つ一つの音が透き通るように聴こえてきます。そして決して冷たくない、角が丸くてまろやかな音を奏でています。迫力にやや欠けるかと思いましたが、低音も出るところではきっちり力強く出ています。そして響きも余韻もあります。

Aria926と比べて音数が少ないようにも感じましたが、逆にそれが心地いいとさえ思いました。音の数は減っているのに、その一つ一つの音の細かな部分に至るまでの生々しい再現力に長けているのです。情報量が少ないスピーカーなのか多いスピーカーなのかどっちとも言えないような音で不思議な感覚です。動のAria、静のMozartといった雰囲気。

なので「映画などのサラウンド向きか?」と聞かれたらちょっと違うかもしれません。室内楽や小編成のクラシック、ジャズなんかがハマる音です。

試聴してみて「あー、これがViennaの音か。なるほど。これは好きなタイプだ」と思いました。私は音楽鑑賞で一番好きなのがピアノの音で、そこに騒がしくない感じでベースやドラムが加わった小編成のジャズなんかを色っぽく聴かせてくれるスピーカーにドハマリします。

まさにViennaの音はそれでした。一方、同じクラシックでも交響曲など大編成、スケールの大きな演奏にはあまり向いてないかも。と思いました。そこは「モーツァルト」というコンパクトモデルの限界かもしれません。

そこで一回り大きくウーファーも2本積んでいるBeethoven Baby Grand Referenceを聴いてみたところスケールがぐっと大きくなりました。Viennaの主軸になる音はこれかと実感しました。でもモーツァルトの繊細な響きはこれはこれで個性的です。これをベートーベン、モーツァルトと名付けて位置づけたセンスは凄いですね。

小鳥のさえずりを微の微までリアルに表現するモーツァルト。その骨子を持ちつつスケールの大きな音を表現してくるベートーベン。まさに偉大な作曲家のイメージを冠しているように感じます。

実はVienna Acousticsのスピーカーは公式紹介の中でこんな言葉で語られています。

Vienna Acousticsのスピーカーは不思議な存在です。爆発的に売れる事はありません。しかし、新製品と呼ばれる時期を過ぎてなお、常に新しいユーザー様に選ばれ続けます。これは流行を追いかけるのではなく、真摯に音楽と向き合って設計している事で生まれる安心感という名の一種のオーラがそうさせているに違いありません。スピーカーの試聴を重ねる事によって自分が何を求めているのか迷ってしまった。そんな方が最終的に選ぶスピーカー、それがVienna Acousticsなのです。

色んなスピーカーを聴き、色んな音の良さを感じ、その結果求めている音に迷った人が最後に選ぶスピーカー。よくこんな表現に辿り着いたものです。そして何となく共感してしまう自分もいます。

公式で書いている通り「爆発的に売れているスピーカー」ではないのでB&WやDALIのようにショップのセンターに陣取って展開されるモデルではなくひっそりと「あ、いた」という感じで佇んでいるタイプのスピーカー。レビューサイトもあまり多くはありませんが、逸品館さんでは古くからVienna Acousticsのスピーカーを評価されていましたね。このレビューなんかを見ると、私の印象とも近いものを感じました。

ちなみに評判の良いブックシェルフのハイドンも聴いてみました。こちらも繊細で良い音色でしたが我が家の用途ならトールボーイかなと思いました。最初から気になっていたスピーカーでもありますし、ここはモーツァルトを一度導入してみよう。と決断しました。

Mozart Grand Symphony Edition導入

という事で、狙っていたところに無理やり落とした感もなくはないですが、我が家にモーツァルトが到着しました。

カラーはチェリーです。ローズウッドがオシャレかな?とも思いましたが、色々写真を見るとローズウッドはプリントが安っぽく見える気もしたのでチェリーで良かったと思います。

ユニットはこの世代のViennaの特徴のスパイダーコーンモデルです。

背面にはバスレフポートが2つずつ。ちょっと低音の暴れが心配ではありますが元々低音がそんなに強いモデルでもないのでバランスは悪くないかもと想像。

サランネットは中央に縦線が入っていてこれがディフューザーとして音の拡散効果をもたらしているそうです。一般的にサランネットがない方が音はクリアになるイメージですが、本機の場合はより広く響きのある音に貢献しているということでサランネットを着けた状態が正しい音になるのだと思います。

スパイクとスパイク受け(J1プロジェクト)を黒御影石の薄めのオーディオボードと合わせることにしました。

このような形で83インチテレビの横にセット。計算通り上手く隙間にハマりました。

音出しを色々

設置が終わったので音出しです。プレイヤー CocktailAudioのX45や動画コンテンツなども含めAVアンプSR8015経由で鳴らしてみます。

良い点

色々音楽を鳴らしてみましたが試聴時の印象通り、とにかく音がまろやか。小音量でも痩せることなく質感の高い音を鳴らします。そして軽やか。リズミカルにポンポン軽快に鳴ります。どの楽器もとろけるような音でとにかく気持ち良い。最大の長所だと思いました。

予想通り音数の少ない小編成のジャズなんかは本当に相性が良く、リアリティのある楽器の音が軽やか、まろやかに奏でられるのでまさに「大人の音」といった感じです。ドンドンシャリシャリ派手な音を鳴らすのではなく、上質な音をフラットにすっと出してくれる。そして耳に障らず、むしろ包み込んでくれるような広がる音色。と言っても決して籠っているのではなく音は透き通る透明感と生々しい弾力があります。

芯のある力強さもあり、奥行きのある立体感も感じますし、ボーカルも美しい。改めて自宅環境で聴いてみて「好きな音だ」と安心しました。

及第点

低域も十分な量感を持って出ますが「重低音」までは出ないですね。ズンと沈み込む低音ではなくボンボンという低域。沈み込みが足りないのはスピーカーの限界なのか、アンプの力量なのか推し量り切れませんが、ここはモーツァルトの特徴でもあり物足りなさにもなってくると思います。

もし低域の沈み込みを求めるなら上位グレードのBaby Grandがそれに応えてくれるのか?それともサブウーファーを足すような運用が良いのか?やっぱりアンプを追加するしかないのか?など今後考えていきたいと思います。ただ大げさな音にならず音を素直に楽しむにはこのくらいがちょうど良くて、あまり低域が主張するとかえってバランスが崩れますし、むしろモーツァルトも量感は十分すぎるのでバスレフポートに何か詰めると良いかもと感じる曲すらありました。

沈み込みという意味では、私が以前infinityのIRS-EPSILONという地響きになるほど沈み込む低域を体験していたから猶更そう感じるのかもしれません。

物足りない点

物足りない点を挙げるとすればやっぱりスケール感。でしょうか。ポップスや小編成のバンドなどではむしろ透明感や質感が抜群ですが、大編成の楽団などではスケールが出来らない感じで違和感に繋がります。

ここも先ほどの低域と同じでbaby grandなどの上位グレードではスケール感もしっかり出てくるのかもしれませんし、パワーアンプを加える事で力強さが増してくるかもしれません。

ちなみにSR8015ではサラウンドモードをマルチチャンネルやAuro3Dなどに引き上げる事でスケール感を出していく事が出来ます。AVアンプならでは強みでもありますし、ピュア派な人からすれば邪道だと思いますが、今回の私の狙いからすればAVアンプの味付けを最大限活かすのは計算通りといったところですね。

ということで、Vienna AcousticsのMozart Grand Symphony Editionはおおむね予想していた通り、いや、その質感では予想を上回る音を体験する事が出来ました。

好きか嫌いかで言えば「完全に好きな音」ですし、普通の音楽ファイルをAVアンプでこれだけ鳴らせるのは凄いと思いました。SR8015もなんだかんだやっぱり優秀なAVアンプですね。十分ピュアな音を感じる事ができました。

まずは素のモーツァルトを十二分に楽しみつつ、また色んなアレンジを考えていきたいですね。

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