今私が使っているのはLGの65インチ4K有機ELテレビ「65C9P」で、テレビとしてはそれなりの大きさで楽しんでいますが、 2022年12月に引っ越した事をきっかけに”更に”大画面を楽しみたい!と思い始めました。
もっと大画面が欲しい!=まずプロジェクターを検討しました
まず考えたのは有機ELテレビはそのままに、プロジェクターを追加設置する事。
ただ部屋のレイアウト的に長焦点の一般的なプロジェクターを設置するのは難しそう(天吊りも棚置きも)なのと配線などの取り回しも面倒という事で流行りの「超短焦点」プロジェクターに注目しました。
最初に検討を始めたのはEPSONのEH-LS500(明るいが設置距離がやや長め)やXGIMIのAURA(長所も短所もなさげ)、OPTOMA G1(画質はこの中で良さそうだけどゲームの遅延が心配)あたりに目を付けていましたが、どれも帯に短したすきに長しといった感じで選ぶのが難しいなと思っていました。そんなところにちょうどEPSONがEH-LS800を発表。
前モデル(EH-LS500)より短い距離で投影でき、歪み補正も優秀。ゲームも低遅延で、どこよりも明るいモデルということで昼間にテレビのように使える!という触れ込みのプロジェクターです。
一般的にプロジェクターは遠くから投影するので明るい部屋には不向きですが、超短焦点なら投影距離も短く本機のように明るさの強いモデルであれば確かに昼間でもカーテンを閉めれば十分に使えるクオリティに進化しています。
弱点は価格。お値段は40万円超。正直画質だけで言えば一般の長焦点なら20万円台のもので同等のものが手に入ります。倍の値段を出しても「超短焦点」であるべきか?というのは悩ましいところですよね。
ソニーのVPLXW7000と並んでいましたので、長焦点プロジェクターの代表として見比べてみました。
上がソニー。下がEPSONです。
色乗り、画のバランスなどはソニーが圧倒していましたが、EPSONもかなりの明るさで「超短焦点でここまで戦えるようになったか!」というのが正直な感想。妥協と言えば妥協。でもここまでくれば実用として悪くないなと思いました。
そして超短焦点プロジェクターを使うならやはり専用スクリーンが欲しいところ。VIVIDSTORMの超短焦点専用スクリーンを視野に入れていました。
これが2つ目の弱点なんですが、超短焦点専用スクリーンがまたバカ高い。普通のスクリーンの2倍以上の値段を覚悟しないといけません。有機ELテレビも使いつつスクリーンも設置するなら床置きで電動でせり上がるこのスタイルが最適。でも高い。
プロジェクターとスクリーンで70万円級の予算が必要になります。
そして検討候補はテレビの買い替えへ
正直、設置イメージまでシミュレーションしてEH-LS800を導入しよう!と思っていたんですが、幾つか課題もあり購入を躊躇してしまう事になりました。
プロジェクターを買わなかった理由
- 65インチテレビに重ねて使うなら100インチ以上は欲しかったが、設置を考えると92インチが現実的と分かった
- 明るい部屋でも使えるとはいえ、高画質で見たければ結局照明を消したくなってしまう。ダイニングと繋がっているリビング使用では家族と照明オンオフで揉めそう
- そうなると起動に時間の掛かるプロジェクターが億劫になり、結局テレビばかり観る事になるのでは?と想像した
プロジェクターが高画質と言っても有機ELテレビと比べれば確実に落ちます。まして超短焦点プロジェクターはその強みとバーターで画質は同価格帯の長焦点プロジェクターよりも落ちます。それでもテレビでは到達できない大画面を気軽に実現できるのは魅力なんですが、現実的に92インチまでとなってくると急に「だったら大型テレビと大差ないのでは・・・」という気になります。
いや限界まで頑張れば120インチも置けなくないのですが、いろいろ機材環境や設置方法を吟味するほどに「92インチが落としどころかなぁ」と判断する事になりました。
92インチという「テレビにしては大きいけど、プロジェクターを楽しむにはややこじんまり」というサイズ感になってくると、どのくらいの頻度でわざわざプロジェクターを起動するだろうか?という自問自答が始まります。特に専用ルームではなく家族と共用のリビングダイニングに設置する予定なので「視聴時は部屋の照明を落とさせてもらう」といった不自由さが足かせになります。家族に「今は照明落とさないで」と言われてしまったら薄い色味でプロジェクターを楽しむしかありません。いかに超短焦点プロジェクターが明るいとはいえ有機ELの色コントラストと比較したら、明るい電気が付いた部屋じゃ比較にならないですからね。
手間が掛かって画質で劣る92インチと、すぐ使える高画質65インチ有機ELテレビ、という天秤で結局「今日はテレビでいっか」という妥協機会が増えてしまうんじゃないかと想像しました。だったらプロジェクターより自由で、プロジェクターより高画質な「80インチ級のテレビ」に買い替えるのが後悔のない選択になるんじゃないか。と考え始めました。
ちなみにプロジェクターは私も過去に2度導入経験があります。一度は遥か昔専用ルームで140インチ据え置きスクリーン&プロジェクターを。次はコンパクトにリビングで80インチスクリーン&プロジェクターも実践していた事もあります。ですからプロジェクターの楽しさは十二分に分かっていますし、一方「今日は起動しようか迷う」シーンがある事も経験済みです。そして65インチ4K有機ELテレビの高画質ぶりも現在形で体験しています。
そんな過去の経験と、現在の視聴環境とを総合した結論として「92インチのプロジェクター」なら「80インチ超級のテレビ」の方が満足度は高くなるはず。と考えるに至りました。そして、プロジェクターとスクリーンでイメージしていた予算感70万円あれば、そのクラスのテレビに手が届きます。4K以外に8Kテレビもありますが、8Kは一気に値段が跳ね上がる上にBS8Kの1局以外ではアプコン用途しかないのでコスパ的にも今回は4Kに絞って検討を進める事にしました。
80インチ超サイズのテレビの選択肢
4K有機ELテレビの国内発売モデルでは83インチが最大です。そして更に上の選択肢として出てくるのはmini LEDテレビ。mini LEDには有機ELを上回る85インチ、86インチというモデルがあり、予算的にも許容できるのでプロジェクターにギリギリ迫る為に少しでも大きな画面を狙うならこっちです。mini LEDなら有機ELからの移行でも許容できるのではないか?と想像し、まずmini LEDから候補にしてみる事にしました。
ちなみに最近では「有機ELテレビ」「液晶テレビ」「mini LEDテレビ」と3つ比較で宣伝される事も多いですが、mini LEDも普通に「液晶テレビ」です。では従来の液晶と何が違うか?というと文字通り「LED」のサイズです。液晶方式はLEDがバックライトとして点灯して色フィルタを通して映像を映し出します。バックライト方式なのでそのLEDが細かく小さいほど細やかな色や明るさ表現が出来るのですが従来の液晶はLED数も少なくて、光と暗部のコントラストを描くことが苦手でした。
そこで、なるべく一つ一つのLEDを小さくして、沢山配置する事で、バックライトの分割数を増やすという方法を採りました。それがmini LEDです。
・昔の液晶はバックライトが常に全点灯しており、黒い部分も後ろから光が当たってしまうのでグレーっぽくなっていました。当然輝度コントラストも低いです。
・次に出てきたのがエッジライト型部分駆動(ローカルディミング)です。ライトを複数に分けて大雑把にライトをオンオフする事が出来るようになりました。
・更に次に登場したのがLEDをブロック状に分割して部分駆動出来る直下型ローカルディミングと呼ばれる方式です。これによって更に細かくバックライトのオンオフが出来るようになりました。しかしこれでも、明るい個所と暗い個所が入り混じってくると暗い部分なのに後ろからライトが照らされてしまうという事が起こります。
・そしてついにLEDを非常に小型化する事により数千~数万個のバックライトを配置できるmini LEDが登場しました。SHARPのXLEDやLGのQNED90などでは約3万個のmini LEDを配置しているそうです。数万個のLEDがあれば数万個の光で細やかに映像を表現で出来るので、暗闇の部分はライトをオフ、星の部分だけライトをオンにする事でコントラスト表現が明瞭になります。真っ黒な部分はライトを完全にオフにすれば良いので理屈としては有機EL同様完全な黒が表現できるはずです。但し、LED数と画面分割数はイコールではなく例えばLGの8K QNED99では3万個のmini LED×2,500個の分割で表現されることになります。
実際にソニーのX95J(直下型LED部分駆動)とX95K(mini LED)を比較されている動画がありました。この違いを見るとmini LEDがいかに進化した液晶か分かりますよね。
実際店頭でSHARPのXLEDなんかを見ると「ああ、なるほど・・・」と唸らされます。こちらは8Kプレミアムモデルですが、有機ELに近い黒っぽさと色の奥行きを感じます。
mini LEDで購入候補を検討してみました
主なメーカーのmini LEDは下記となります。
メーカー | モデル | 画面サイズ |
LG | QNED85 | 86、78、65、55 |
SONY | X95K | 85、75、65 |
SHARP | EP1 | 75、70、65、60、55 |
TOSHIBA | Z875L | 75、65 |
TOSHIBA | Z870L | 55 |
80インチ超として候補に残せるのはLGのQNED85とSONYのX95Kの2機種だけですが、その他のモデルとも比較しつつクオリティとして許容できるラインか?も調べる事にしました。
ちなみに仕様としては、4K120p、低遅延、VRR、ALLM、eARC、対応端子2つ以上というゲーミング用の条件もありますが最新モデルはどれも対応済みですので、実際は画質感を中心に検討する事になります。
ということで、各社カタログ上では「○○高画質技術」やら「○○プロ搭載」やら独自の高画質を謳っていますが、全く比較しようがないので不完全とはいえまずは店頭で見てみないと話にならない。という事でざっと見比べにいきました。
実際見比べると黒が黒じゃないのが気になる・・・
とにかくmini LEDと言えど「液晶テレビ」なので、まず気になるのは「黒の締まり」でした。今私が有機ELテレビを使っているのでここからmini LEDに乗り換えた時にどのくらい「黒の沈み」の違いが気になるか?からチェックしてみました。
上がmini LED。下が有機EL。なるほど真正面から見ればmini LEDは十分な画質。特に色乗りの良さは有機ELを上回るかもしれないとさえ思いました。
でも色んな比較環境で見比べていてmini LEDも十分黒が表現出来ているのに何で有機ELの方が「漆黒」に見えるんだろう?と疑問に感じました。下記は左が有機ELで右がmini LEDですが、右の方が映り込みがあるという事もありますが、左の有機ELの方が黒の黒さが深い気がするのです。
そこで、角度を変えてどちらも結構映り込みが大きくなるようにして比較。有機ELの方も映り込みが激しいですが、床の白部分などの雰囲気が結構違います。そうです。内部のエンジンや発光素子云々の問題ではなく、そもそもパネルが全然違うんですよね。LGの有機ELはグレア。LGのmini LEDはハーフグレアなので、有機ELが黒いガラスに映像が映されているように見えるのに対し、mini LEDは一枚「不透明なプラスチックの板」を張り付けてあるように見えます。
要するにLGのmini LEDはパネルそのものがそもそも黒じゃなくてグレーなのです。上記の画像で見ても左のランプは直接触れば「あちっ」と熱さを感じるんじゃないかと思う実物感がありますが、右のランプは窓の向こうにあるというか、何か一枚通して見ている感じがするのです。生々しさ、艶やかさに欠けます。
確かにmini LEDは従来液晶と比べれば大幅に改善されたとはいえ有機ELと比べるとやや光と暗部との境界が甘いところがあります。それはそれで確かに有機ELとの能力差です。でもそれ以上にそもそものパネルの差が圧倒的過ぎてそこに目が行ってしまうんです。mini LEDという技術自体は私には十分許容範囲だと感じましたが、このパネルの差は許容しがたいと感じました。
また別の場所でパナソニックの有機EL(左)とLGのQNED(右)を見比べました。
やっぱり「パネル自体の差」を歴然と感じます。人によっては左の有機ELは鏡のように反射しすぎる。右の液晶の方が反射を拡散させているから映り込みが気にならなくていい。という人もいるでしょう。ここは「何を許せて、何を許せないか」の好みの差だと思います。
グレアタイプの有機ELに慣れてしまった私の眼には、mini LEDの「ハーフグレアパネル上に表現された黒」は全く黒に見えなくてセロハンフィルムが貼ってあるようにボケた絵に見えてしまうのです。そして黒の深さだけではなく、描かれたオブジェクトの瑞々しさ、立体感が全く異なって見えます。
Youtubeで黒の差がとても分かりやすい比較動画を見つけました。まさにこれです。左がmini LEDで右が有機ELですが、もうパネルがそもそも全く違う。という事が分かるでしょうか?ここまで差があるともう絶対「右」がいい。と思いませんか?
もちろん普通に映像を観ている分にはそこまで気にならないですし、むしろ色味、明るさはmini LEDの方が優れている部分もあります。でも実際に店頭で見てしまうと上のYoutube検索画面の写真のようにパネルが違いすぎて「画質云々以前のクオリティの違い」を感じるのです。
mini LEDにも色んなパネルがある
第一候補にしていたLGのQNEDにガッカリしたので次のメーカーのmini LEDも見てみる事にしました。するとどうでしょう。ソニーのX95KはLGよりもパネルの黒さがまともなのです。
上記写真は左がソニーの有機EL(A90J)。右がソニーのmini LED(X95K)です。パネルの加減が明確に分かる黒背景のYoutube検索画面を見ています。確かに有機ELの方が黒いんですが、X95Kもそこそこ頑張っています。LGよりは優秀。ただソニーは独特で虹の反射のように光がパネルに点々と分散します。
ソニーのmini LED X95Kの一世代前のX95Jはmini LEDではなく普通の直下型液晶でした。比較しなければX95Jもそこそこいいかな。と思っていたのですが、隣同士で比較すると色の深みが全然違います。上記X95(右)は淡くボケた色味です。X95K(左)はmini LEDとして非常にクオリティが高いバランスの良いモデルだと思いました。
また違う場所で同じ2機種を見てみました。今度は左がX95J。右がX95K。X95K(右)と比べるとX95J(左)は色乗りが悪く明るさのコントラストも弱いですよね。この2機種だと断然X95Kだなと感じました。
次にmini LEDの代名詞。本命SHARPのXLEDも見てみます。
驚きました。mini LEDは全てハーフグレアのグレーパネルだと思っていたんですが、SHARPのEP1はLGの有機ELのようなグレアパネルなのです。これは黒い!mini LEDの能力が遺憾なく発揮されていて、まるで有機ELのようにすら思えます。これなら有機ELと十分対抗できると感じました。
そこで、もうちょっと大きいサイズがないかな?と同じEP1の70インチを見つけたので見てみたのですが何か違和感がある・・・。あれ、これさっきのほどグレア感がない・・・。
テレビに反射している文字がややぼやけているのが分かると思います。
一方先ほどの65インチに戻って見るとやっぱりパネルが鏡のように映りこんで文字もクッキリ反射しています。
ずっと見比べていたところ声をかけてくださった販売員さんが理由を教えてくれました。
販売員さん曰くSHARPのテレビはサイズによって使っているパネルが違うとの事で*0インチ(下一桁がゼロ)はSHARP製、*5インチ(下一桁が5)は社外パネルを使っていると教えて頂きました。なるほど、だから*5インチはグレアで*0インチはハーフグレアだったりするのか、と分かりました。
つまり同じ「EP1」というモデルでインチが違うとパネルが違うという事です。これ65インチを見て気に入って、実際は70インチを買って納品してもらったら違うパネルのテレビが届くという事ですね。こんなトラップ絶対気づかないですよ・・・。これって一般的な知識なんでしょうか?私は初めて知りました。
ちなみにSHARPのXLEDはEP1の前モデルDP1、8KモデルのDX1などありますが、結果有機ELに匹敵するグレアパネルは「EP1」の*5インチのものだけのように感じました。このパネルのEP1で80インチ超級があれば選択肢に入るのですが残念です。
最後にTOSHIBA REGZAも見ておきましょう。Z875Lです。はい。私にとって残念パネルでした。曇りガラスのようにグレーに浮いてしまうハーフグレアパネルです。
他にもハイセンスやTCLなどリーズナブルブランドの液晶も見てみましたがもうどれもこれも黒が黒じゃないグレーパネルでした。ちなみにハーフグレアと一言で言っても、これまた一つ一つメーカー・モデルによってその「程度」が違います。ハイセンスなんかはもうめちゃくちゃグレーでげんなりするレベル。
繰り返しになりますが、もちろん「パネル」以外に、そもそものエンジン、色再現、輝度、階調表現など様々な能力の違いがありますし、各社各モデル強みもあります。でも、それらすべての要件よりも「パネル」がダメだと、もうどうやっても補えない違いを感じるのです。まずはパネルがまともかどうか?その上で、各画質能力の違いが見えてくる。と言ってもいいと思います。
ポイント
- 「パネル」が画質の全てではなく「パネル以外の要素」も当然画質には重要である
- でも「パネル」が黒表現に大きな影響を与えている事は事実
- なので画質にこだわるならそもそも「残念パネル」のモデルを選択肢に残すべきではない
もちろん「私は正面から見る、映り込みが極力ないようにして見る、だからテレビそのもののエンジン、高画質技術で評価するんだ」という方はパネルの事は気にされなくてよいのかもしれません。むしろ「低反射パネルの方が好みだ」という方もいらっしゃるでしょう。メーカーもちゃんと狙って作っている訳ですから。
でも、有機ELの漆黒を知ってしまった私にとって、もうパネルがそもそもグレー。という時点で画質を放棄したテレビとしか思えないので選択肢から外す事になります。
ということで、mini LEDではSHARPのEP1が断トツ評価でした。ただ80インチ超級としてはソニーとLGしかありませんので、LGのQNEDは脱落、ソニーのX95Kは候補として残せるかな?と思いました。
有機ELのパネルも全部違う
さてこれでそのままmini LEDのX95K購入。という訳にはいかないと思いましたので、次はやっぱり本命となる有機ELをチェックする事にします。
4K有機ELの主なメーカーモデルは下記になります。
メーカー | モデル | 画面サイズ |
LG | G2 | 77、65、55 |
LG | C2 | 83、65、55、48、42 |
LG | B2 | 77、65、55 |
SONY | A95K | 65、55 |
SONY | A80K | 77、65、55 |
SONY | A90K | 48、42 |
SONY | A90J | 83 |
SONY | A80J | 55 |
SHARP | ES1 | 65、55 |
SHARP | EQ1/EQ2 | 77、65、55、48、42 |
TOSHIBA | X9900L | 65、55 |
TOSHIBA | X8900L | 65、55、48 |
PANASONIC | LZ2000 | 77、65、55 |
PANASONIC | LZ1800 | 65、55、48 |
PANASONIC | LZ1000 | 42 |
4K有機ELはこれだけモデルに種類がありながら80インチ超級はLGのC2とSONYのA90J(A95Kの前年モデル)しか存在しません。今回の大前提として80インチ超を検討しているので実質この2モデル比較になる訳ですが、先ほどのmini LED同様 他のインチモデルと圧倒的な画質差がないか?はチェックしておく必要があります。
さて、mini LEDの時に「有機ELと違ってパネルがグレーだから・・・」と触れてきましたが、実際店頭で見てみると実は有機ELもメーカー/モデルによってパネルが全然違う事が分かります。
早速色々見ていきましょう。右は先ほど紹介したSHARPのXLED 優秀なEP1です。一方左はSHARPの有機ELテレビES1です。一見して色が違いすぎるのが気になると思いますが、それはカメラとの相性もあって実際はこんなに色は違いません。ですが、パネルは逆に写真だと分かりづらいですがなんと有機ELの方がパネルがグレーだったのです。
許容できないほどではありませんでしたが、XLEDの方が黒が引き締まって見えるレベルでした。こういう比較をされるとむしろXLEDいいじゃない。という気になりますね。逆にES1は許せない程ではないんですが、黒に徹底して拘るべき有機ELでなぜ最高を目指さなかったのか?がすこぶる疑問です。
次はもっと酷いです。上の写真右はPANASONICのLZ2000。左はソニーのA80K。左右どちらも有機ELテレビですがこれは比較にならないくらいパネルが違います。右のLZ2000はとても深い描画が出来るパネルですが、左のA80Kは見ていられないくらい薄っぺらいグレーパネルです。
もっと拡大してみるとよくわかります。こちらはLZ2000です。有機ELらしいキレッキレの鏡面パネルです。いや、めちゃくちゃ反射するので手放しで最高という事ではないんですが、これこそが有機ELの黒を最大限発揮できるパネルなんです。
一方こちらがA80K。ボケボケのくすんだパネルです。これによって折角の有機ELでありながら黒が沈み切らないのです。
続いてLGの有機ELテレビを見てみましょう。
上の写真はB2ですが、そこそこ黒が黒っぽく見えるパネルです。見えている「臨場感UP」の反転文字など全てパネルの映り込みなんですが、A80KよりはマシとはいえSHARPやPANASONICのLZ2000と比べるとやや滲んでいますね。
続いて上位モデルのC2。高輝度、広色域になったOLED evoモデルです。同じLGでも全然違いますよね。B2に対して映り込んだ文字のくっきり感が明らかに上です。鏡かな?と思うレベル。いや、映り込み自体は「ネガティブな要素」なのでくっきり映るから良いなんてものではないんですが、このパネルの差が光が拡散せず余計な白みを無くしてくれているのも事実です。LZ2000と近いパネル感だと思いました。
更に最上位のG2です。これはもう何というか「黒い鏡」と言っていいほどのクッキリさで驚きました。もはや映り込みすら解像感が高く深い(謎ワード)
LZ2000を上回るレベルで今回比較した全てのテレビの中で圧倒的に綺麗な映り込みです(笑)
LGにおいては、グレードが上がるごとに映り込みがクリアになり、パネルに余計な滲みやくすみがなくスコーンと抜けた黒を再現してくれることが分かりました。とことんまで追及するとこういう世界に来ちゃうんだなと思いました。
参考比較として先ほど脱落させたLGのmini LED QNED85を見てみてください。濁って膜が張ったようなパネルですよね。こんなにも違うんです。こんなパネルで真っ黒が再現できるはずがありません。
パネルパネルって映り込みがなければそんなに気づかないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、やっぱり黒が多いシーンになるとこの鈍い色が見えてしまってどうしても気になってしまいます。
下記、上下で見比べてみてください上がLGのQNED。下が有機ELです。
QNEDは左に見える青の噴水なんかを見ても背景の黒と青の水が全部「グレーのパネルの向こうに描かれている」ので薄っぺらく見えるんです。一方下の有機ELは噴水の水も艶やかで、奥の背景に奥行きを感じます。もうこれを比べてしまうと「上が欲しい」とはなりません。QNEDを選択肢から早々に外したのは、それ以外の要素を検討するまでもなくこのパネルは選びたくないと思ったからです。
同様に先ほどのLZ2000とA80Kをもう一度振り返ってみましょう。
黒い背景で比較するとになると一目瞭然です。右のLZ2000は背景の黒がちゃんと黒い。でも左のA80Kは黒が青っぽく見えます。どちらも有機ELテレビなのにも関わらずこれだけ違うんです。もちろん映り込みがない状態でも違いを感じるんですが、有機ELだからといっても「どれも同じ黒表現」じゃないって事です。
ここからは電源オフの状態でのパネル比較。
まずはTOSHIBAです。下位のX8900Lは残念ながら盛大なグレーパネルでした。有機ELの本領は発揮できません。
SHARPのEQ1です。やっぱりSHARPは平均レベルが高いですね。画質を重要視したいという気持ちが伝わってきます。
SONYのA80Jです。上2つと比べるとちょうど中間といった感じでしょうか。
SONY A95K(上)とA80J(下)です。内部のエンジンもさることながらパネルだけでも断然A95Kを選ぶべきですね。
SONYは95ラインと80ラインで全く別物だという事が分かりますね。
こちらはSONY同士の比較。
上の写真 左がA95K。右がA80Kですが、もう圧倒的な違いでA95Kです。A80Kを選ぶくらいなら有機ELじゃなくてもいいのでは?という気さえします。
上の写真 左はソニーX95J(従来型液晶)右がソニーA90J(A95Kの前モデルの有機EL)。この写真だと右は反射があるので公平な比較に見えませんが、それでも黒い部分を見ると有機ELはしっかり「黒」であることが分かります。一方明るさは断然X95Jですよね。A90JはさすがA95Kの前モデルだけあって80ラインとは異なりしっかり有機ELの持ち味を発揮してくれています。
PANASONICはLZ2000が抜群に良かったので、下位モデルLZ1800も見てみましたがPANASONICもグレード差がはっきりしていました。上位のLZ2000(右)に対して、LZ1800(左)はくすんだパネルで上下黒帯が「黒に見えない」テレビでした。
SHARPのトップモデルES1(左)と2番手モデルEQ1(右)はどちらも優秀でした。ES1がやや青み掛かったパネル。EQ1が素直な黒パネルでしたがどちらも黒表現はクオリティが高いと思いました。画質は甲乙つけがたいレベルで、むしろパネルの印象では2番手モデルのEQ1の方が自然で良い気すらしました。
最後に有機ELテレビの中でもトップレベルと感じたPanasonic LZ2000とソニーA95Kを並べた比較です。同じコンテンツではないので画質比較が出来ないのが残念ですが、この2台はどちらもクオリティが高いと思いました。
近づいてパネルを見てみるとLZ2000はとにかく美しい鏡面パネル。右のA95Kはソニー独特の反射拡散モデルで赤っぽい色味で反射も歪みがあります。
各社、反射が強い鏡面パネルに対して「低反射」「拡散パネル」というようにポジティブな表現でハーフグレアパネルを謳っていますが、最上位モデルが「グレア」である事から見ても、やはりハーフグレアは「画質に劣る」画質を最優先しないユーザーをターゲットにしている事が分かります。画質に拘って有機ELにするなら「低反射ハーフグレアパネル」は選ぶべきではないと思います。
さて、ここまで有機ELについても「パネル」から見た比較を行ってきました。
さすが有機ELと思えたのはPANASONIC LZ2000、SHARP ES1/EQ1、LG G2、C2、SONY A95K、A90J、TOSHIBA X9900Lです。80インチ超の2モデル。生き残ってますね!
方式織り交ぜて幾つか比較
ここまでmini LED、有機ELテレビをそれぞれ見てきましたが、結構店頭での比較が面白かったのでもう少し確認してきた写真をご紹介したいと思います。
左上:SHARP 有機EL EQ1 右上:Panasonic 液晶 LX950 左下:SHARP XLED EP1 右下:SHARP 液晶 EN1
上段は照明の反射が強いので公平な比較ではないですが、それでも違いが明確ですよね。
右上のLX950は明らかにパネルの質が悪い事が分かるでしょうか?ずっと比較してとにかくダメだと思うのがこのタイプのパネルです。もう輝度がどうとか色域がどうとか言われても何も入ってきません。パネルが終わってるのでその時点で完全却下です。
実物で見ると左上の有機ELと左下のXLEDは肉薄していました。甲乙つけがたい。色の深み、奥行きはやっぱり有機ELですが、色合い、明るさなどはXLEDの方が優秀。トータルで見るとXLEDの方が好みかも。と思いました。ちなみに左下のEP1は65インチモデルなので、先に説明した通り下一桁が「5」の社外パネル=グレアパネルです。比べると右下の普通液晶のEN1は色表現などやはり一段落ちる印象です。
更に今の4機種に加えて右下にPANASONIC 有機EL LZ2000を含めてみました。
これはLZ2000が良かったですね。左上のSHARPの有機ELは良くも悪くも有機ELで、やや暗いシーンが暗くなりすぎる印象でしたが、LZ2000はそのバランスがとてもいい。それでも「白」を白として表現出来ているのはやっぱりXLEDの方かなと思いました。白表現は有機ELは苦手ですよね。
次はこちら、映像が違うので比較が難しいですが左上と右下は同じ映像なので違いが分かりやすいですね。
左上:ソニー mini LED X95K 右上:ソニー 有機EL A80K 左下:Panasonic 有機EL LZ2000 右下:ソニー 有機EL A95K
先ほど、ソニーのmini LED X95Kは前モデルX95Jと比べて優秀だと評価しましたが、A95Kと比べるとさすがにA95Kの方が上だなと思いました。そして右上のA80Kは先にも酷評しましたがダメパネルです。全く有機ELの価値が発揮できていません。これなら断然X95Kの方がいいです。
次はPANASONIC同士の比較です。左がべた褒めの有機EL LZ2000。右は液晶のLX950です。
LZ2000は有機ELでありながら液晶に負けない明るさを持っていて階調表現も優秀。その上で黒が沈み、生々しい映像表現をしてくれます。白、明るさではSHARPのXLEDに譲りますが本当にクオリティの高い有機ELテレビだと思います。
比較するのもかわいそうですが、近づいてパネルの違いを見てみました。視野角の差もありますが右の液晶は黒帯も映像部分も黒が浮き、平面的な映像になってしまいます。
最後にTOSHIBA REGZAを見ておきましょう。
左上はコンテンツが違うので除外しておくとして、左下:液晶 Z770L、右上:有機EL X8900L、右下:有機EL X9900L です。パネルも勿論ですが、色乗り、コントラスト、黒表現などX9900Lが圧倒していました。
結論
さて、様々なテレビを比較してきましたがまとめるとご覧のような結論となります。
テレビ比較結果
- mini LEDも有機ELも「ダメなパネル」と「良いパネル」がある。ダメなパネルはそれ以外の画質能力を全て台無しにするくらいダメ
- mini LEDモデルでは、ソニーのX95KやSHARPのXLED EP1(下一桁が5インチのモデル)は有機ELに迫る美しさ。むしろ白再現や明るさなどでは有機ELを上回る為、総合力の高さを感じました。このクラスなら有機ELからの乗り換えも選択肢に入ります。一方、LGのQNED85は残念ながらダメパネル。
- 有機ELでは「パネル」という観点からはPanasonic LZ2000、TOSHIBA X9900L、SHARP ES1/EQ1、SONY A95K、A90J、そしてLGのG2、C2はとても良い印象。各社とも比較的上位グレードは鏡面感の強いグレアが多く、下位モデルは低反射のハーフグレアの採用が多かったように思います。最高画質に拘るならグレアで、映り込みを抑えて気軽にリーズナブルに使うなら下位モデル。という棲み分け。つまり単純に画質エンジンの差ではなく、そもそもターゲットが異なるグレード分けという事になるので、画質を求めて下位グレードの有機ELを選ぶくらいならmini LEDの上位モデルを選択肢に入れるべきだと感じました。
今回見比べた中で、そもそもの私のサイズ条件「80インチ超」が存在する「買ってもいい」と思えるモデルは、mini LEDならソニー X95K、有機ELならLGのC2とソニーのA90Jだけという事になりました。唯一LGのQNEDだけがこの時点で脱落です。
今回色々店頭で見比べたり仕様的な条件を確認した結果、この3択であれば「最高」ではないかもしれませんが「十分なクオリティ」を得られると感じましたので、私の購入候補としてはこの3機種に絞って「パネル以外」の各項目をチェックしながら最終検討を行っていきたいと思います。
最後に
65インチや55インチを狙われている皆さんの場合は、もっと選択肢が広がりますので有機ELテレビであればLZ2000、A95K、G2、ES1/EQ1も加えて検討してみてはいかがでしょうか。
繰り返しにはなりますがパネルだけ見て画質評価なんて出来ません。本記事はパネルというやや特殊な切り口でご紹介しましたが、それは「いかに画質に拘ったエンジンやチューニングが行われていてもパネルが残念なものであれば台無しになってしまう」からです。逆に言えば明暗の境界のにじみ、黒の沈み込み、コントラストや色表現など細かな画質差を気にしてテレビを検討される方であれば、当然パネルがグレーなモデルは一番最初に気になるはずだと思う訳です。そしてパネルは画質モードやらコンテンツやら神経質に見なくても店頭で一瞬見ただけで判別が付くので最初にそこで足切りするのはオススメです。一方パネルは画質にとって重要なファクターであるにも関わらず、カタログやメーカーサイトで「目当てのモデルがどのようなパネルを搭載しているか」判別ができないので実機を見るしかないという側面もあります。(低反射、反射拡散、低映り込み等の表現があるとハーフグレアパネルの可能性が高いです)
その上で、許容できるパネルのテレビに絞って本質的な映像エンジン、スピーカー、遅延、輝度、各種機能、操作性、内蔵アプリなんかも調べたり、実機で細かく画質チェックしていくのが良いと思います。
店頭実機が一番感覚をつかみやすいですが比較したい機種が並んでるとは限りませんし、店頭だとデフォルトは「あざやか」設定になっているはずなので色々いじりながら見ていく方が良いですが、店頭の明るい照明と映り込みの中では家庭での利用シーンを想定した検証がしづらいのも致し方ないところです。またインターネットに繋がっていないと公平な比較コンテンツを選べません。あくまで店頭での評価は一つの軸としつつ、Youtubeの比較動画、Rtingsなどの調査結果、場合によっては国内のAV誌、AVサイトなどの情報、口コミ、掲示板、なども参考にしてみるのも良いかもしれませんね。あとはどこに拘るか?映画、地上波、ゲーム等何を重要視するかによっても違ってくると思います。
こちらの動画は各社2番手モデルでの比較ですが、各メーカーの画作り傾向という意味ではとても参考になる動画でしたのでオススメです。