ピュアオーディオ

North Star Design Supremo 導入

MarantzのNA-11S1を導入して僅か1か月。どうしても我慢できなくてまたDACを入れ替えました。今回導入したのは以前使っていたIntensoと同じNorth Star Design社のDACで、フラグシップモデルの「Supremo」です。

http://naspecaudio.com/north-star-design/supremo/

Marantzの失敗

音場の広がり、中高域の厚みを求めてNorth Star DesignのIntensoからMarantzのNA-11S1にDACを入れ替えたのが4月。

Sonica DACやDENON製品などと比較調査しながら、私の求める音の変化を与えてくれそうなUSB DACとして選びました。

Marantz NA-11S1 導入

コントロールアンプを入れ替えて抜群に質が上がったオーディオ環境ですが、それだけに浮かび上がった「JPOPなどで中高域が薄くなる」という弱点の解消と「もっと音場の広さが欲しい」という贅沢な欲求を満たす為 ...

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実際、評判通り音場は広がり、中高域もしっかりしました。ところが、ボーカルの艶や透明感、楽器のうっとりするような滑らかさが失われてしまったのです。どうにも音が淡白で乾いて聴こえます。

それからボーカルや高域のピークは詰まり気味で天井につっかえる感じもします。解像度重視のフィルタではサ行が刺さり、より乾いた音に。一方、空気感重視のフィルタでは音のクリアネスが足りません。

騙し騙し使えばそのうち慣れるだろう。と信じていましたが、それ以前に音楽を聴くのが楽しくなくなり、そもそも音楽を再生する機会が減りました。音楽を聴かなくなってしまってはどうしようもありません。生理的に拒絶しているという事です。

NA-11S1の弁護もしておくと、恐らくNA-11S1がそんなに悪い訳ではないと思うんです。毎回繰り返していますがオーディオは「組み合わせの妙」です。アンプやスピーカーとの相性、以前使っていた音の傾向と私の好み。こういったもの全てによって印象は変わります。NA-11S1も世間では良い評価を受けている機器で、艶やかさも持ち合わせているという評もありますので、むしろ私の使いこなしが下手だった。と思って頂いても良いと思います。

ただ私にとってこれは重要な問題で、来る日も来る日も以前のIntensoの透明で艶やかな音を思い出さずにはいられませんでした。でもだからと言って今更Intensoに戻す気にもなりません。今度は「中高域の薄さ」がまた不満として戻ってくるからです。

こうなったら、Intensoの透明感、艶、滑らかさを持ちつつ、中高域もしっかり出してくれるDACを探すしかありません。

検討

正直この時点でSonicaDACのような解像度重視タイプのDACは選択外になります。DENONは気になりますがネットワークプレイヤーとして30万円強の価格帯であるNA-11S1ですらDAC部分がイマイチだと感じた訳ですから、このクラスのプレイヤー兼用DACでは力不足なのかもしれない。と想像しました。DAC専用機として出てくるLUXMANのDA-06はNA-11S1と同等でリレー音もうるさいようですから検討に入りません。

そうなるとエクササウンド、マイテック、レゾネッセンスあたりの専用機を視野に入れたり、更には100万円以上クラスを見なければいけなくなります。それはさすがに無理です。

しかも一度失敗しているので、もう同じような失敗はしたくありません。となると今回試すべきはIntensoと同じNorth Star Design社製の上位DACしかありません。中でも艶やかさと滑らかさを約束してくれる最上位モデル「Supremo」が間違いのない選択肢でした。

音質チェック

これがもう感謝しかない音です。

・艶、透明感、滑らかさ

失われた3要素が戻ってきました。それも更にグレードアップして。ピアノもベースも管楽器も弦楽器も堪らなく滑らかです。そして全く澱みのないクリアなボーカル。これです。これが大事だったんです。

・全帯域の強化

そしてIntensoで不満を感じていた中高域の音がしっかり奏でられます。音源によってはボーカルがやや強く出ますが、しばらく馴らして様子をみたいと思います。

・音場と奥行き

音の深み、奥行き、広がりもこれまでよりも立体感を持って表現されています。必要十分な解像感を保ちながら決して希薄にならず濃密な空気感を感じます。音の力強さ、静寂感、精緻さなんかもいいですね。カタログスペックですがダイナミックレンジ132db、歪率0.00010%/0dbも伊達ではなさそうです。

・リレー音がしない

NA-11S1で驚いたことの一つはリレー音がカチカチうるさい事でした。これもいちいち耳に触ったのでリレー音がなくなった(本来当たり前?!)のは助かります。

音のグレードが確実に上がりましたので、クラシックが本当に気持ちよく聴けるようになりました。ブラームスのピアノ4重奏などを聴いてみるとどの楽器も滑らかさと艶やかさを感じます。

特に私はピアノが一番好きな楽器なのですが低域から高域まで行き来するピアノの音色はどこかが破綻していると一発で粗が分かってしまう楽器でもあります。ピアノをどこまで色っぽく、力強く、切なく、荒々しく、全ての感情を気持ちよく聴くことが出来るかは私の機材評価指標の一つなのですが、SupremoはこれまでのDACの中で間違いなく一番優秀です。

また最近の軽いJ-POPは録音が酷いので機材が良くなるほどそのダメな部分が出てしまう傾向がありますが、今回の組み合わせではそれすらそこそこ聴かせる音になりました。これも初めての経験かもしれません。

現時点での課題を挙げるとすれば「音源によってボーカルがやや強く感じる」事です。でもこれはこれまでの弱点とは全く異なります。

Intensoの中高域の線の細さ、音場感の狭さ、Marantzの音の淡白さ、これらは「音質」の課題です。なのでその機器のポテンシャルを超えて補正する事は出来ません。ですが、ボーカルのピークが強い事は「音量(量感)」の問題です。なのでイコライザーやトーンコントロールでどうにでもなります。

逆に言うと、艶、透明感、滑らかさ、音場、解像度、分離感、アタックの強さなどはイコライザーではどうにもならないので本質的な機器の性能が重要になるということです。

イコライザー/トーンコントロールでの調整

イコライザーやトーンコントロールの使用を否定する方もいます。私もどちらかというとそうでした。周波数帯をいじるというのは「全体音質が劣化する」「定位が崩れる」「音源を作った制作者の意図を曲げる事になる」など様々な理由から出来るだけ行いたくない処理ですし「邪道」と言われる事もままあります。

ですが一方ではアキュフェーズのDG-58のように80万円もするピュア向けグラフィックイコライザーなどもありますし、高級アンプでもトーンコントロールを搭載している機種は幾らもあります。音をいじるのではなく部屋の音響特性に合わせて補正する。という考え方で見れば機材も、設置方法も、部屋も、イコライザーも全て音作りの一つです。

そもそも制作者の環境とは機材も部屋も違うので制作者が聴いている音を再現しよう等というのは不可能です。近づけようにも各音源は千差万別な機材とスタジオで制作されている訳ですから同じになるはずがありません。そして制作者もそこ(制作環境)が史上最上の音だと感じて音作りをしている訳でもないでしょう。そもそも最近ではJ-POPはポータブルプレイヤーで聴く事を想定したチューニングをしているものがあったりしますので同じPOPSでも音源によって音が重かったり軽かったりします。

だから機器の音をいじらない事が必ずしも「正しい音」とも言えませんし、音を変えたいから機材を替えるのにイコライザーは否定する。なんて発想もおかしな事です。そもそも「正しい音」なんてものはどこにもなくて、追い求めるとすれば「自分にとって気持ちいいかどうか」だけでいいんだと思います。余計な幻想に惑わされない方が音楽は楽しめると思います。

実際、現在の環境でも全くイコライザーをいじらない方がベストな曲もあります。それも「ジャンルは関係なく」です。だとするならば、もう機材の入れ替えでどうこうできる範疇は超えています。曲によってベストなバランスが異なるので、補正すべき曲は補正した方が楽しく音楽が聴けるという事ですね。

もちろん大幅にいじると定位やバランスが乱れるので私の場合は基本はピークの強いボーカルを落とす。特に女性ボーカルが気になるので2~4khzあたりを少し落とす。という調整に使用しています。うちはPCオーディオなのでこの辺りはいじりやすいですね。

たまに出くわすもっと極端に調整したい音源の場合はアンプ側のトーンコントロールで低域を少し持ち上げる。という方法も採ります。この辺りは「曲によって」という感じなのでしばらく馴染ませて、高域や低域がボーカル域と同じように伸びてくればイコライザーは使わなくて良くなるかもしれません。

あるいは全体の微調整を電源ケーブルやタップで行ってもいいですね。

中音域の強化の為にオヤイデのL/i50 G5 という電源ケーブルを買ってありましたが、Supremoでは逆に中音域が強く出ているので出番がありません。逆にハイとローに主張のあるケーブルを使ってみるのは面白いかもしれません。

という事で、なんだかんだでDACは結局North Star Designに戻ってきてしまいました。辿り着いた音を聴くにつけ、これが一つのゴールであり、これからのスタート地点だという実感があります。

Marantzには申し訳ない事をしたと思いますが、もう「Marantzの音は淡白」という印象を持ってしまったので余程の事がない限りMarantz機を購入する事はないでしょう。好みの問題ですからMarantz機を否定するものではありません。他の機材環境や自分の好みと合うか合わないか。です。

今後のアップデートはケーブル、タップ回りでの微調整。それからDELAのようなストレージ導入でしょうか。

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