パナソニック史上「最強のUHD プレイヤー」であり且つ「最強のBlu-rayレコーダー」と呼ばれる「DMR-ZR1」を購入しました。
私が購入に至った理由は公式サイトや様々なWebサイトで語られている本機の魅力に惹かれたからなんですが、それらの情報を私なりの視点で網羅的にまとめてご紹介します。
最強プレイヤー&レコーダー「DMR-ZR1」とは?
パナソニックが発売した「DMR-ZR1」は要するに「DIGA」です。そうブルーレイレコーダーなんです。なんだDIGAの最上位モデルか。と侮ってはいけません。これはDIGAの皮を被ったモンスターマシンです。
今提供されている最高画質メディアは「UHD BD」です。そしてそのUHD BDを最高画質で楽しめるプレイヤーは「レコーダー」ではなく「再生専用機」です。OPPO UDP-205、Pioneer UDP-LX800、そしてPanasonic DP-UB9000。この3つが最強3モデルとして評価され、今では現行品はUB9000のみ。UB9000は他の2機種と比べて音質ではやや劣っていたり、画調も好みが分かれたりと言われる事もありますが、現行品トップモデルはUB9000一機種となったと言って良いと思います。最近ではフランスのREAVONという企業がUBR-X200というハイエンドプレイヤーで参入してきましたがこちらもUB9000と並んで語られるモデルになろうとしています。
対してブルーレイレコーダーは「最高画質を極める」というよりは、テレビ放送の録画を主目的として作られていますし、画質で劣る地デジ放送を更に圧縮して録画する用途も多かっただけに、チューナーの数やHDDの容量、他の機器やスマホへのリンクなど機能の拡張に目を向けられてきました。いや、決してレコーダーが画質にこだわらなかったのではありません、「再生専用機」にはそれを遥かに上回る画質へのこだわりが投入されていたという事です。
そんな中、DMR-ZR1は再生専用機であるUB9000を更にブラッシュアップして「画質、音質を極めるプレイヤー」という顔を持った「DIGA」として登場しました。
「なるほど強化版UB9000+DIGAか」と思われましたよね?
違います
単なる「+DIGA」ではなく、画質を極めた機器で「テレビ放送」を観たらどうなるんだろう?それが「録画」出来たら最高じゃない?!そんな叶いっこない夢を実現させたのが「DMR-ZR1」なのです。
4K放送を最高画質で体験するには「最強のプレイヤー品質で4K放送を受信できる」という機器を開発するしかない訳です。だから「UB9000より劣っては意味がない、UB9000を画質で上回る必要があった」という開発陣の言葉には説得力があります。それは「単なる願望」ではなく「そうでなければコンセプトとして意味がない」という本機の存在意義そのものだからです。
更にこのコンセプトがあったからこそ22.2ch放送のドルビーアトモス変換、字幕輝度自動調整、60p→24p/30p変換など「放送コンテンツを最高の環境で視聴するには?!」という発想の機能をいくつも実装できたのです。従来のDIGAの開発コンセプトでは難しかった機能群だと思います。
このコンセプトを実現する為、開発陣のインタビュー記事では「パワーポイント70枚におよぶ仕様原案」が作られたと言われていました。前代未聞だそうです。もうこれだけでも「これは買わないといけないモデルなのでは?!」と予感させられますが、ここからはそのこだわりポイントを「購入を決めた3つの理由」に分類してご紹介したいと思います。
理由1)徹底した筐体と回路の作りこみ
まず、これはちょっと尋常じゃないぞ?!と度肝を抜かれたのは機器としての設計です。もうこの部分だけでもこの機器は職人魂の結晶だと感じました。
シャーシとパネル外装
これはパナソニックUHD BDプレイヤー「DP-UB9000」の設計を基本的に受け継いでいます。
まずは注目して欲しいのは「底」です。底板部分だけで4枚の鋼板が張り合わされておりこれだけで5.6kgの重みをもたせています。信じられます?床部分だけで5.6kgですよ?もう既に異常。
そして3mmのサイドパネル、天井板も2層構造、更には7mmもの厚みで作られたフロントパネルで囲まれて四角い鉄の箱が完成します。
背面も含めると10枚もの板でこの箱が作られているという事です。なんでも止めるビスの種類や長さにまでこだわりが及んでいるとか。この鉄の塊を支えるのはハイカーボン鋳鉄で出来たインシュレーター。鋼製の10倍の制振性でただでさえ重い筐体の振動を更に押さえ込みます。
次に内部ノイズ対策です。ZR1の内部構造は4つの独立したブロックで構成され、大きくは、電源部、ドライブ、デジタル基板を完全に分ける事でノイズ混入を防いでいます。この辺りはピュアアンプ的な発想ですよね。
そして、どんなにシャーシや本体を重く高剛性を持たせたとしても、内部をブロック分けしたとしても、ディスク機器の宿命である「回転振動」を押さえ込めなければ意味がありません。そしてUHD BDもHDDもどうしたって回転振動が生まれます。この対策は本機でも重要な要素になっています。
まずディスクドライブは3層の鋼板でガッチリ固定。ドライブ本体が振動でフラフラしないように筐体に密着させています。
ハードディスクも同様に重量級の鋼板2枚でダイレクトに筐体に固定されています。ハードディスクを板に張り付けて固定するって実は結構特殊なんです。
普通ハードディスクって回転によって本体自体がブーンと振動して動こうとしますよね。そこでデスクトップPCなんかではゴムのワッシャーや制振マウンタなどで、要するにハードディスクを挟み込んで浮かせる(フローティング)方式で周りに伝わる振動を吸収するのがセオリーです。
でもZR1ではそのセオリーとは真逆で完全に本体に固定してしまう方式を採用しています。「それじゃ振動がダイレクトに伝わってしまうんじゃないか?」と思われると思いますが、ドライブベースと筐体とを完全固定し、圧倒的な筐体の剛性と重さで振動を押さえ込むという設計になっています。これは普通の設計のレコーダーでは恐らく無理で、徹底して剛性と低重心を実現している本機だからなしえた方法論です。常識を覆す追い込みには本当に驚かされます。
更にハードディスク自体も適当に選ばれている訳ではありません。メーカー選定から音質にこだわって本機専用に特注されたハードディスクで、更に全数検査もされているとの事。私が購入した機体に内蔵されているハードディスクも「独自検査された上で出荷されている」という事ですね。
こだわりの基盤回路
そして「UB9000」の遺伝子を継ぎながら、大きく転換したのがアナログ音声の排除とデジタルへの集中です。本機のDACを使ってアナログ出力したかった人にとっては大きなインパクトのある削減だと思いますが、ここをズバッとなくしてHDDを搭載させたことに本機の狙いがあります。
UB9000では電源部をデジタルとアナログで分離させる事でノイズの混入を防ぎ、純度の高いアナログ音声を出力してたんですよね。UB9000のこだわりです。
しかしZR1ではこのアナログ専用電源を取り外し、そのスペースを利用してデジタルの電源を「ドライブ用」と「デジタル基板処理用」の2つに分けました。つまりアナログで利用していたスペースをデジタルだけで贅沢に使用する事で、HDMI出力させる場合はUB9000よりも更にノイズ対策を強化できたという事です。
アナログを排除した事を残念に思う方はいらっしゃると思いますが音楽再生については同軸(光)出力で外部DACに送り込むトランスポートに徹して、映像機器としての本懐部分を更に追い込むと判断した訳です。
その証拠に、アナログ基盤を排除した代わりに、同軸出力回路にテクニクスのハイエンドネットワークプレイヤー「SU-R1」と同様に「真鍮削り出しの端子」「出力トランス」を採用してデジタルトランスポートとしての質を1段引き上げています。
そして同軸出力だけでなく、HDMIの音声出力も更に磨き込まれています。本機には上級プレイヤー/レコーダーでは当たり前になっている「映像」と「音声」を分離させる2系統のHDMI端子があります。これだけでも映像と音声を純度高く出力できるメリットがある訳ですが、ZR1では更にチップビーズとチップフィルムコンデンサを追加して、映像用HDMIから逆流してくる微小なノイズまでも音声用HDMIに回り込まないようにしています。この辺りもUB9000より更に拘られたポイントです。
こうして見ると「音を軽視してアナログ音声を削ったのではない。むしろデジタルフォーカスする事でデジタルの音質を磨き上げた」という開発者の思いが分かってきますね。
惜しみなく投入される高品質パーツ
上記でも少しご紹介したように、シャーシ、パネル、回路設計と基本部分が徹底してるだけに留まらず、高品質パーツと技術を惜しみなく投入しているのがZR1です。公式標準機体自体がもはや「特別チューン品」「魔改造」レベルの作りこみになっているんです。
例えば本機ではUSBパワーコンディショナーの回路を本体に内蔵してしまっています。UB9000にもフロントUSBにだけ搭載されていましたが、ZR1ではリアUSBに加えて、映像、音声2系統のHDMIにまでもそれぞれ搭載させています。本体だけで既にノイズ低減の追加回路が盛り込まれているのです。
他にも、システムクロック用に超低位相ノイズ推奨発信器を取り付けたり、AVクロック用に超低ジッターPLLを採用したり、LAN端子にまで超低ジッター水晶発振器を搭載。ピュアオーディオ機器かと思うような細部へのジッター対策もされているようです。開発者の「積めるものなら全部積んじゃえ!」という、もはや技術者の遊び心を全部反映させた徹底ぶりを感じます。
理由1として「ここまでこだわるか?!」という程にこだわられた筐体についてご紹介しました。既に公式サイトや各種記事でも語られている部分ではありましたが、私なりの理解として解説してみました。
理由2)UHDも放送も録画も全てを高画質、高音質に
そして、これだけの物量投入で画質も音質も良くなるに決まっているんですが、それだけに留まらず内部機能も「そこまでやるか!」という機能の開発が行われています。ZR1ならではの実装機能をご紹介しましょう。
シアターモード
先ほど、ハードディスクについて徹底した制振構造になっていると話をしましたが、それでも回転ディスクである以上振動源であることは間違いありません。「Blu-ray再生時に余計な振動源があっては困る!」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
そこでZR1では「シアターモード」というモードを採用。ディスク再生している間は「ハードディスクを完全停止させる」という設定が可能になっています。
これでハードディスクが「再生専用機としての阻害要因になる」という心配は皆無になります。そして筐体に完全固定されたハードディスクは、鉄の塊としてむしろ筐体の低重心性を更に高める重石の役割も果たしてくれる事になります。これがフローティングだと僅かなブレの原因になる可能性もありますがその懸念すら排除した構造のメリットでもありますね。
ちなみに録画処理とは排他されるので、例えば近い時間で録画予約されている時にシアターモードが起動する時には「○○時に録画予約がありますが良いですか?」といったような注意を促してくれます。この辺りも親切ですね。
ハイクラリティサウンド
徹底して余計なノイズを排除するために、筐体や回路にこだわるのはもちろんですが、どうしてもカットできない部分もあります。でも、そのノイズを少しでも抑えたいのであれば「不要な箇所の電気信号」を止めてしまえばいい訳です。
そこで設定できるのが「ハイクラリティサウンド出力設定」です。
この設定で「映像出力を止める」「音声出力に使っていない回路を止める」「本体表示も必要なければ消す」という事が出来ます。
設定項目
動画再生&音楽再生それぞれで
- 映像出力 する / しない
- 音声出力 全て出す / HDMIのみ / 同軸(光)のみ
- 本体表示 する / しない
HDMIと同軸両方で音声出力する事はないでしょうから、片方が動いている時はもう片方の端子は止めてしまえばいい訳です。本体表示窓も無駄な電気信号だから止めてしまいましょう。
動画再生の時に映像出力しない。なんていう変態設定も出来ますが、動画メディアを再生しているが「音だけに集中したい」なんてことまで出来るという事なんでしょうね。さすがにやりすぎの域かと思いますが開発者の徹底ぶりに笑ってしまいますよね。
この徹底ぶりは外観上でも感じ取る事が出来ます。UB9000とZR1で酷似しているフロントパネルですが、十分シンプルだったUB9000に対してZR1では更に「再生ボタン類」までも無くしました。普通の感覚だとレコーダーの方が操作ボタンは増えそうなものですが、必要な物は徹底して積み、悪影響を与えるものは徹底して排除するという設計思想が見えます。
4K放送の24p/30p変換出力
次に4K放送の「24p/30p変換出力」です。
そもそも4K放送は基本的に60pで信号が送られているらしいんですよね。24コマ映画も、30コマドラマも全部一度60p変換して送ってくるらしいんです。
本来60pではないコンテンツを無理やり60pに変換して(同じコマを複数回重ねて)送信してくるのも無駄ですし、正しいコマ数で再生して欲しいと思うんですが、悪影響はそれだけではなく4K60pを伝送するために「4:2:0」にして送ってきているようなんですね。ZR1では本来の24p(30p)に戻してやることで正しい情報が届けられると共に4:4:4 12bitでの伝送に引き上げる処理が行えます。無駄な60pを排除した上で、パナソニックが得意とするクロマアップサンプリング処理を行ってより高画質に出力させるという事ですね。
ZR1ではクロマアップサンプリングを強化した「クロマアップサンプリングPlus」が搭載されていますが、4K放送においてクロマアップサンプリングさせるために一度フレーム数を落とす処理を入れるとかZR1やりすぎです!(誉め言葉)
惜しむらくはこの機能「手動」で切り替えるしかないんですよね。多分4K放送で送られてくるコンテンツのどれがオリジナル24pでどれが30pなのか判別付かないからだと思います。主に映画なら24pに、それ以外は30pにするのが良い気もしますが面倒なので全部30pにしておくのが現実的かもしれません。実際24pにしたまま地上波の録画を再生したらガクガクになってしまいました。
この辺、配信側がメタデータでオリジナルフレーム数をパラメータ化しておいてくれたらいいんだと思いますが、ここにこだわるのはニッチ過ぎてさすがに難しいかもしれませんね。パナソニックさんから是非掛け合って欲しいです(笑)
ちなみに、別の設定でAmazon Prime Videoで4K/24pで配信されているコンテンツをそのまま24pで出力してくれる設定もあります。UB9000には無い機能のようです。
映像字幕の輝度低減
次のこだわり機能は「映像字幕の輝度低減」です。
「字幕の輝度って変えられるモデルはあるよね?」はい、それはそうです。ZR1でもUHD BD再生中に字幕輝度を変えられます。これは映像に対して「字幕」が別レイヤーで重ねられているからです。字幕のオンオフが出来る仕様のものですね。
でも、4K放送などで放送される「字幕版映画」などは字幕が映像の一部として一体化して送られてくるので文字だけ輝度を変える事はできません。でも作品によっては暗いシーンが多くて「字幕が眩しい!」と感じる事もあると思います。
そんな映像に組み込まれている字幕の輝度を解析して「暗いシーンの時は可変して暗くしてくれる機能」が「映像字幕の輝度低減」なのです。
この設定をオンにするとDIGAがフレーム毎に分析して、再生しながら暗いシーンでは字幕の輝度も落とす。という処理をします。これ何気にめちゃ凄い技術ですよね!今回新しく導入された新技術で特許出願中なのだとか。
ここまで来たらUHD BD再生中の輝度も「自動で可変」させてくれたら最高だと思います。次なる開発進化に期待!
レコーダーとしても妥協無し
ご覧いただいたように、ZR1では再生専用機で詰め込まれるような最強エンジンが放送でも録画でもストリーミングでも活かされると共に、「放送コンテンツだから」生まれた機能も搭載されています。
そしてもちろん、レコーダーとしての基礎性能が十分に高い。3チューナー搭載でハードディスク容量も6TBとレコーダーの基本として妥協がありません。更には1.3倍録画というモードでで4K2時間作品を最大限高画質な状態のまま25GB BDに保存できるようにもしてくれました。単なる技術視点ではなく、ユーザが最大限価値を享受できる設定、仕組みで提供してくれているのがまさに「妥協無し」という感じですよね。
我が家ではメインのテレビの他、ダイニング用にUltra HD Premiumに対応したUHD BD再生対応のDIGA「DMR-UBZ2020」を使用しています。ここともお部屋ジャンプで相互連携出来ますので、それぞれで録画した番組を逆の環境で観る事も容易ですし、スマホとの連携ももちろん快適です。
他のDIGAで搭載されている基本的な機能は全て搭載されている安心感もありますよね。変に尖った技術志向でこういう誰でも使いやすいDIGAの汎用性が損なわれては意味がないので、そこは100%残して機能融合させている事にも好感が持てます。そもそもDIGAが使いやすいレコーダーかどうかはさておき(笑)
理由3)22.2chをドルビーアトモスに変換!
様々な機能投入について触れましたが、あえてこの機能だけは「理由3」として切り出させて頂きます。ホームシアターサラウンド世界の革新的な技術として、もはやプレイヤー、レコーダーという範疇を超える機能なのが「22.2ch音声のドルビーアトモス変換」です。
22.2チャンネル音声のドルビーアトモス変換とは?
我が家ではドルビーアトモス&Auro 3D 6.0.6チャンネルサラウンド環境を構築しています。
フロント、リア、サラウンドバックという地上6つのスピーカーに加えて、それぞれの真上にもう1セット(フロントハイト、トップミドル、リアハイト)設置して合計12チャンネルです。以前はセンタースピーカーも使っていましたが、フロントとの質の差が大きくなりすぎたためファントム運用としています。サブウーファーも使用せず全部フロントの30cmウーファーに背負わせています。
この環境で基本的にはディスクもストリーミングも全てのコンテンツをしっかり再生できしたが、唯一4K放送で稀に登場する「22.2ch」のコンテンツだけは再生できません。5.1chにダウンミックスされた音源をもう一度アップミックスするような体験しかできなかったんですよね。これでは本来のディスクリート22.2ch収録は意味をなさず5.1chとしての体験に留まります。
もちろん22(24)個のスピーカーが物理的に設置できるかどうかも課題ですが、そもそもそれ以前に22.2chのサラウンドなんてデコードできるAVアンプが存在しないんですよ。我が家のAVアンプはMarantz SR8015ですが13.2ch分までしかプロセッサーを搭載していません。それでも搭載プロセッサ数としては最上位です。つまり一般家庭の環境ではどうやったって再生しようがないのが22.2chコンテンツ。
そんな22.2chコンテンツを「ドルビーアトモス」へ変換する機能がZR1に搭載されたのです。
重要なのは5.1chや7.1ch、あるいは13.2chなどにチャンネルオーディオとしてダウンミックスさせたのではなく「ドルビーアトモス」というオブジェクトオーディオに転換する方式を実現した事です。
チャンネル型サラウンドは各スピーカーの数に合わせて音を配置する方式。一方ドルビーアトモスなどのオブジェクト型サラウンドはスピーカーの配置に合わせて、中間に位置する音を仮想的に作り出すサラウンド方式です。
例えばフロントハイトとトップミドルスピーカーを使って、ちょうどその間くらいに音源(オブジェクト)があるように音を再現する事が出来ます。ZR1の技術では、22.2chに割り当てられた音源を「22か所から鳴っている点音源」として解析し、それをオブジェクトオーディオ技術で「そこに点音源があるかのように」ドルビーアトモスで再現する。という方式のようです。凄い!
確かに今まで22.2chサラウンドに対応した「サウンドバー」は存在しました。でも所詮はサウンドバーです。ミックスしてそれらしく音を出すだけで、自分を包囲する位置から直接音が飛んでくる訳ではありません。今回ZR1の「22.2chのドルビーアトモス変換」技術によって、最も本物の22.2chに近い環境を再現できるんじゃないでしょうか。
こうなってくると残念なのは「22.2chコンテンツがほとんどない!」という事です。今までは「なんだ22.2chコンテンツって。こんなの意味ないよな」と見ていたのに、ZR1を買ったことで「どこかに22.2ch番組はないか?!」と番組表をくまなく見るようになりました。コンサートとかだと実現しやすそうですし、次回の4K紅白歌合戦も是非22.2chで放送して欲しいです。
22.2chをしっかり録画しておける
ただでさえ少ない22.2ch放送です。常に生で視聴できるとは限りません。ですから22.2chをそのまま録画しておいてくれないといけませんよね。
ZR1では、22.2ch放送を長時間モードで録画する事も出来るようになっています。22.2ch音声は情報量が大きいので他メーカーの4Kレコーダーでは記録しない仕様になっているそうです。実際録画できたところで活かせないデータですし、それで容量を圧迫するのはもったいないですからね。ただDIGAでは以前の機種でも22.2chは録画できるようになっています。これは結果再生する段階ではダウンミックスされていても元データが22.2chで保存されている方が音質が良いからだそうです。そして、ZR1ではこれを単なる音質ではなく「サラウンド効果」としてしっかり活かすことが出来るようになったという訳です。
実はUB9000でも22.2chコンテンツを5.1chにダウンミックスして再生する事はできていたようなんですが、今回ZR1でついにそれをドルビーアトモスに変換できるようになったというのは革新的ですよね。
弱点はあるか?
もう怒涛のような作りこみに言葉を失うレベルで、到底ライバル機種が出てこられないくらい遥かトップを走ってしまったんじゃないかと思えるZR1ですが「残念な点」「惜しい点」などはあるのでしょうか?私が思いついた事をいくつか挙げてみます。
Youtubeが観られない
これは本当に残念。ネットサービスとしてPrimeVideoやNetflix、U-NEXTなどはありますしZR1によって最強画質で楽しむ事が出来ます。Abemaなんかもあるのに、なぜかYoutubeがないんです。
UB9000にも他の多くのDIGAにもYoutubeは搭載されています。単に時間的に間に合わなかったのか?何か他の戦略なのか?ここまでパナソニックの開発陣が一切の妥協なく作りこんでいるモデルです。中途半端にセコイ販売戦略上の理由なんかでカットされてるとは思えないんですよね。近い将来アップデートでYoutubeアプリも出てくることを切に願います。絶対来ますよね?!
8Kチューナーを搭載していない
ここは「弱点」ではなくて、どうせなら「8Kチューナー&HDMI2.1」までいってくれても良かったのでは?!という願望です。インタビュー記事なんかを見ると、ここはケチったのではなく全く別のチップ開発などが必要になる為避けたようですね。確かに時間を掛ければ開発できたんじゃないかという気がしますが、その機能を優先するあまり今の4K画質、音質にマイナスの影響が出てしまうリスクもあります。
Blu-rayが8K化されることはありませんし、8Kディスクに対応させる必要もない。8K放送だけに合わせた技術開発をするより、徹底して4Kにこだわった開発を行ったのは良い判断な気がします。我が家のテレビも4Kですしね(笑)
他機種で搭載している機能
例えば「全録」なんてレコーダー派の皆さんからしたら嬉しい機能ですよね。10TBくらいのハードディスクにして全禄させるなんて事も不可能じゃないでしょう。
でも、本機は「シアターモード」を搭載するくらい「再生画質を徹底したい」というコンセプトですから、裏でずーっとハードディスクが回転し続けている環境とは相容れません。ここは搭載を見送ったというよりも、搭載する事での自己矛盾を作らない事を選択したんだと思います。私もそれで正解だと思います。
あとはやっぱり「アナログ音声出力」が欲しい。という方もいるかもしれませんね。ただこれも先に触れたように、アナログ要素を排除した事によって電源部の強化も図れていますし、デジタルトランスポートとしての機能強化も図られています。そういう点で私は「映像コンテンツを最高画質、最高音質で出力する」というコンセプトを優先する事に賛成ですし、逆にそこをスポイルさせてまでアナログ音声にスペースを割く必要はないと思います。
もちろんCD再生やアップコンバートリッピングが出来たり、PCからハイレゾ音源をコピー格納したり、とミュージックサーバーとしての機能を残している事を考えると、USBアウトを搭載してDSD11.2MHzまで有線でDACに出力できるようにしてあっても良いかな?という気もしますが、私の中では本機が目指さなくて良い方向かなとも感じています。
やっぱり価格が高い?!
そうですね。これは分かりやすい「弱点」だと思います。実勢価格33万円ですから気軽に買えないという弱点です(笑)
でも、私はZR1には十分その価格の価値があると思います。冒頭で触れたように、本機は「強化版UB9000+DIGA」ではありません。従来のレコーダーの発想から完全に抜け出して「4K放送を最強の環境で視聴する。その為には最強の再生専用機のエンジン、筐体、チューンをそのまま適用させる必要がある」という今までにないコンセプトで作られたモデルです。
そういう意味では、強化版UB9000というだけでも20万円以上の価値がありますし、3チューナー6TBのDIGAと言えば18万円クラスのDMR-4X600相当ですし、むしろそこにレコーダーでは到達しえない画質、音質クオリティに引き上げた事、22.2chや字幕輝度などの新技術搭載を考えれば20万円+20万円の価値は十分にあると思います。
それが33万円で1台にまとまって登場したという事を「安い!」とまで言うつもりはありませんが、十分価格に見合うモデルであると言えると思います。
まとめ
UB9000との比較ではネットでの評判を見るに、UHD BD再生だけを取ってみても画質は同等以上、音質は確実にグレードアップしていると思いますが、UB9000から買い替えるか?という点では躊躇される方も多いんじゃないかと思います。
一方レコーダーとして見た時には、これまで存在しえなかった、再生専用機を上回る高画質、高音質のレコーダーという唯一無二の未知なる領域の存在なので、単なるDIGAの買い替えというポジショニングでもないでしょう。
ですが、4K放送も最高画質で楽しめて、レコーダーとしてもハイエンドな機能を実装していて、肝心のUHD BD再生もUB9000を上回る。となれば、この機種に全てを集約するのが最適解という事になると思います。ここに全てにおいて最強の1台がある。という明確な価値です。
そこに22.2chアトモス変換のような技術もぶち込んできたというのが本当に凄い。ここに辿り着いた全部の辻褄が合うんです。その意味では、開発陣の本機に込めた”世界を変える”思い、全部積めるものを積み切ったらこうなった!という職人魂の結晶に「惚れた」というのが正直なところかもしれません。
この機種の存在が他のプレイヤーやレコーダーの当たり前の概念を全て過去のものにしました。今後どんな方向で開発されるのか、やっぱり再生専用機が最強の座を守るのか、レコーダーと融合していきつつ更に進化するのかは分かりません。でも、過去10年以上の概念を変えた1台として、こんな機種の登場には滅多に出会えないと思います。時代の名器として再生派の方も録画派の方も是非多くの方に手にして頂きたいモデルです。
私も買ったので、歴史の証人として皆さんも買いましょう(笑)
重複する解説部分もありますが、実際に購入して半日のレビューについても是非ご覧ください。
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