ECLIPSEのサブウーファー TD316SWMK2を導入しましたのでレビューしたいと思います。
フロントスピーカーの課題
最近フロントスピーカーとしてVienna AcousticsのMozart Grand Symphony Editionを導入しました。
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【レビュー】Vienna Acoustics Mozart Grand Symphony Edition を購入しました
ウイーンアコースティクスのスピーカー Mozart Grand Symphony Editionを導入しましたのでレビューしたいと思います。 オーディオ卒業からの出直し 2022年以前は弩級スピーカー ...
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非常に艶やかまろやかな音で、小編成のジャズやクラシックなどは本当に気持ち良いスピーカーです。またコンパクトな形状ながらゲームや映画などでも十分なクオリティと迫力を出してくれると思います。
全体的に非常に好みに合うスピーカーですが低域周りには課題を感じました。
低域の課題
1.まず重低音が出ません
15.2cmウーファー一発ですので仕方がないところではありますが沈み込む低音を感じられないのが物足りない
2.一方中途半端な音域での低域がボワついて中高域をマスクしてしまう
決して低域が出ない訳ではなく十分すぎる低音量があります。本スピーカーは背面にバスレフポートが2つあるのでこの影響もあってか広く大きく低音が響きます。しかしながら沈み込まない緩い低音で、しかもその量感から中高域に被ってしまい全帯域がモッサリしてしまう事があるのです。
サブウーファー追加を検討
低域だけではなくスケール感の不足もあったのでパワーアンプを追加するというのも対策になるでしょうし、バスレフポートを塞いだり吸音パネルを置いたりという設置見直しも出来ます。
ですが、もっとも手っ取り早い対策は低域が足りないなら「サブウーファー」を導入すればいい!という案です。そもそも現時点で4.0.4chのサラウンド環境を作っている訳ですから、その面でもサブウーファーの追加はしごく当然の手順。フロントだけではなくその他サラウンドスピーカーの低域も受け持たせられますからサラウンド環境の向上にも繋がります。
幾つか候補を検討
今回の導入主旨は「映画などの環境音の迫力を増やす、ドドドド音」ではありません。むしろ量感は多すぎと考えています。沈み込み重低音を再生し、効果音ではなく楽器の音そのものを沈み込ませたいので「タイトでスピード感のある低音」が欲しい訳です。
となると迫力重視のサブウーファーより引き締まった重低音に適したサブウーファーを検討したいと考えました。予算的には数万円~10万円前後くらいまで。
YAMAHA NS-SW300/500
サブウーファーとしてもっともポピュラーなのはやっぱりYAMAHAでしょう。バスレフ型なのでどちらかというと映画などの迫力重視派ではありますが、最近のモデルは音楽再生への意識も高くスピード感のある低音も期待できるとの事。
NS-SW500はより音楽にマッチするモデルとして先行しており、近い価格でオールマイティ型のNS-SW300が後発で登場しました。とはいえどちらも素性は非常に似ているので、形状、サイズ、価格などで選択しても良いのではと思います。どちらか選ぶならフロントにスイッチがあって操作しやすいNS-SW300でいいかな?と思いました。
価格も5万円前後とトライしやすいですし、非常に評判も良いサブウーファーなので有力な選択肢でした。クラスで言えばNS-SW700の方が他モデルと釣り合いが取れるんですがSW700はユニットが下向きに付いていてまさに響き重視のモデルなので音楽再生も視野に入れるならSW300の方が相性がいいかなと思います。
FOSTEX CW200D/CW250D
バスレフ型の中心モデルがYAMAHAだとすれば、密閉型の中心モデルはこれじゃないでしょうか。特に250Dは売れ行き、満足度評価ともに非常に高いモデルです。
密閉型なのでバスレフと違ってユニットからの音だけで低音を出力します。その分響きや余韻は少なくなりますが、一方でスピード感のあるタイトな低域には有利です。比較するなら映画の迫力、部屋中を包み込むような低域が欲しいならバスレフのYAMAHA。コントラバスやパイプオルガンなど重低音な音をドンっと出したいなら密閉型のフォステクス。という感じじゃないでしょうか。
CW250Dは10万円台前半とやや価格が上がりますが、弟機のCW200Dは小ぶりですが価格も安く非常にバランスが良いモデルとされています。部屋が大きくないならこれで十分。とも言われますね。また現行モデルは「D」ですが前世代の「A」や「B」などは中古で比較的安く手に入ります。コスパを考えれば前世代も十分選択肢になると思いました。
ECLIPSE TD316SWMK2
そして最終的に購入する事になったECLIPSEのTD316SWMK2です。こちらもFOSTEX同様密閉型のサブウーファーで、タイトでスピード感のある重低音に期待できます。
本シリーズは更に上位にTD725SWMK2、TD520SWなどがあり口径も価格もぐっと上がってきます。TD316SWMK2は一番コンパクトな入門モデルではありますがそれでも価格は10万円超。サイズもYAMAHAやFOSTEXと同等なのでクラスで言えばTD316SWMK2が比較対象となってきます。
一般的には重低音再生の為には「コーンの口径が大きいほど有利」とされています。それだけ振動も大きく空気を押し出せるからです。一般的なスピーカーでも30cmウーファーを超えてくるとその沈み込みも凄くなりますよね。私も以前までメインスピーカーは4台連続で30cmウーファーモデルを使ってきました。ですからサブウーファーでも重低音を出したいならウーファーサイズも大きくなるのがセオリー。
しかしながら本機はたった16cmのウーファーしか搭載していません。え!本当にサブウーファーなの?と心配になります。
一方、ユニットサイズが大きくなるとどうしても音の遅れの原因になります。映画などでもドォォンという豊かに響く音が収録されていますが、サブウーファーによってその録音内容よりも更に過剰な響きと遅延が出てしまいます。収録されているとおりに低音や響きを再生出来ればコンテンツが伝えたい音響を正確に感じることが出来ます。そこで口径を小さくする代わりに2本のユニットを搭載しハイパワーのデジタルアンプでタイトな低域を押し出すのがECLIPSEのコンセプトです。
なるほど、速さでは最も有利な機構を積んでいるという事ですね。ですがYAMAHAやFOSTEXが再生周波数帯域の最低が20hzなのに対し、本機は30hzまでしか仕様上は対応していません。やっぱり本当に沈み込む低域という面では不利なのかな?という想像をしました。
また2本のユニットはフローティングで筐体にほとんど振動を与えない機構だったり、コーン自体は16cmなんですがエッジ部分がめちゃくちゃしっかりしていてユニット自体は25cmの大きさがあるなどなかなか個性的な構造をしています。
その他の候補
基本的には上記3つのブランドを候補としていて、バスレフで音楽再生も磨き上げるYAMAHAか。密閉型の王道なセオリーを行くFOSTEXか。密閉型&独自の機構でスピード感を出すECLIPSEか。というところで悩みつつ、DALI、KEFなども簡単な情報収集を行いました。
ブランド | YAMAHA | FOSTEX | ECLIPSE | DALI | KEF |
モデル | NS-SW300 | CW250D | TD316SWMK2 | SUBE-12N | Kube12b |
方式 | バスレフ | 密閉 | 密閉 | バスレフ | 密閉 |
ユニットサイズ | 25cm | 25cm | 16cm×2 | 30cm | 30cm |
出力 | 250W | 300W | 125W | 250W | 300W |
再生周波数帯域 | 20~160hz | 非公開 200Dは20~220hz | 30~200hz | 28~190hz | 22~140hz |
電源 | 前面 | 背面 | 背面+リモコン | 背面 | 背面 |
サイズ | 42×36.6×35 | 34×36×39.4 | 39.9×36×38.4 | 34×37×38 | 41×39.3×41 |
重量 | 18kg | 19.5kg | 23kg | 14.7kg | 20.6kg |
価格 | 57,200円 | 154,000円 | 132,000円 | 137,500円 | 129,800円 |
スペックから見た印象
- YAMAHA バスレフ型の基準モデルという印象。20hzと低い周波数再生に対応し映画メインで音楽も。という事であれば最有力。安い。
- FOSTEX The王道。音楽再生をメインに考えるならまさにセオリー通りの作りこみ。音楽中心ならコレだと思います。
- ECLIPSE 個性派。仕様上はユニットも小さく再生周波数帯も物足りないですが実力はFOSTEXを上回るとの声も。リモコンも良い。
- DALI バスレフ&30cmですが再生周波数は28hzからとやや物足りないか。ルックスは良いが軽すぎるのも気になるところ。
- KEF 密閉&30cm&300W出力で22hzから対応とスペック的には一番期待できるモデル。実際聴き比べたいモデルですね。
ここに並べた5台は正直どれもハズレ無しなんじゃないかと思います。価格や傾向も踏まえて選択頂ければ間違いないと思いました。
ECLIPSEに決定
正直スペックだけでは判断できないところがありますが、レビューや口コミ何かを見て見るとそれぞれ一長一短という感じがしました。
YAMAHAは音楽も行けると言いつつもやっぱりバスレフ特有の緩さが残るので「メインは映画で加えて音楽もOK」という感じで、今回の私の目的からすると逆かな?と思いました。でも値段は魅力。
FOSTEXは音楽メインで私の用途にピッタリですが、逆に映画では少し物足りなかったり暴れる事もあるみたいなので少し気になりました。大丈夫だと思うんですけどね。
ECLIPSEはそういう意味では音楽も映画もいけて、数値以上に低域も沈むという評判もあったので最後に選ぶならコレかなというところに辿り着きました。そしてリモコンで位相やBASS強化、音量も調整できるのはありがたいですよね。曲によって低音過多かな?となればすぐ調整できますし、電源もオート判定はどうしても完璧にはいかないのでそんな時に遠隔でオンオフできるのは安心材料です。音良し、音楽映画どちらも相性良し、利便性良し、というところが決定打となりました。
比べるとDALIとKEFはやや情報が少なく、判断材料に欠けたというところがあります。
いざ導入
やっぱり箱は相当な大きさでした。
ちょっと笑ったのは外箱をスポッと持ち上げると中から少し小さな箱が出てきました。マトリョーシカ?
2つ目の箱は本体でした。ちゃんと上から抜けるようになってるので取り出しやすいですね。それでも23kgの本体はなかなかの重さ。そして足が付いてない完全立方体なので置き方に注意しないと指を挟みます。
付属品は電源ケーブル、底面用フェルト、リモコンです。サブウーファーでリモコンがあるの少ないですし助かります。
底面にフェルトを貼りましたが脚を取り付けられるネジ穴もありますね。少し浮かしたい時は都合の良い脚を探してきて取り付けるのもアリ。
正面はこんな感じです。ユニットは側面にあるので正面はこの表示パネルのみ。ここでも位相、BASS強化、音量などが直接操作できたり、音量レベルがインジケータで分かるようになっています。この辺りも他社のサブウーファーと比べると独特ですよね。便利です。
こちらは背面。ローパスフィルタはオフにする事も出来てAVアンプ側での調整に任せる事も出来ます。40hzまでフィルタ出来るのは良いですよね。そしてオート電源もあります。スピーカーケーブル端子もしっかりしたものが付けられていますね。
ユニットは左右にそれぞれ1つずつ。この構造から置き場所には多少配慮が要りますね。四方全てに空間が必要です。また先述の通りとても16cmとは思えないユニットサイズです。大型のエッジで筐体が振動しない構造を取られているようです。
今回はAVアンプのサブウーファープリアウトから繋ぐ事にしました。
調整&音出し
AVアンプ側で出力設定します。
まずいわゆる0.1chとしてのLFEだけではなく「メインスピーカー」の低域部分の役割も担わせます。これで普通に2ch音楽再生等の時にもウーファーが効いてきます。ローパスフィルターはやや高めの80hz。重低音だけでなく通常の低域もウーファーから出してみる事にしました。
一方、フロントスピーカーのクロスオーバーは60hzにセット。40hzくらいまでメインスピーカーで担っても良いんですが、もともとMozart G SEの低域は暴れがちでボワつく傾向もあったのでバサッと60hz以下は任せない事に
サラウンドではなく2チャンネル再生時でも2.1ch再生となるようセッティングしました。
これが実際聴いて見ると本当に大当たりでした。
課題だった低域のボワつきがなくなり、TD316SWMK2のタイトな重低音に代わります。そして当然ながらMOZART G SEよりしっかり低いところまで出てきますので音に広がりが出ます。超重低音が出ているか?と言われたら「超重低音」ではない気がしますが必要十分な重低音だと思います。映画などでは「圧」を感じるようになりましたし、むしろこれ以上部屋を響かせると音が濁ります。
副次効果として低域のボワつきによるマスクが無くなった事、また低域出力の負担を取り除いた事でMOZART G SEに余裕が出てきて高域~中低域まで非常にクリアでメリハリのある音に変わりました。まさに狙い通り。
あまりに気持ちよすぎてここから3時間以上ずっと音楽再生してしまいました。
とろけるようなピアノのまろやかさは更に磨きがかかり、ホルンのふくよかな響き、バスドラのアタック感、トロンボーンや弦楽器の輪郭もクッキリします。まさにVienna Acousticsの艶やかさとリッチな楽器の質感に加えて、TD316SWMK2による密閉型のスピード感のある低域の深さが加わり、このタッグでフロア型スピーカーと同等レベルの音が作り出されるようになりました。
正直とてもAVアンプの音とは思えません。数々のAVアンプやピュアアンプを使ってきましたが、自分史上最高のピュア環境に引けを取らない音楽体験を得られていると思います。
ちょうどアンプの持つパワーとスピーカーの鳴りのバランスが良い事、低域はアクティブサブウーファーに任せる事でアンプにもスピーカーにも余裕が出てきた事、が上手く噛み合ったのだと思います。
もちろんブックシェルフ+サブウーファーというのも良いと思いますが、トールボーイで中低域の厚みも出させつつクロスしてサブウーファーが重低音を支えるというフォーメーションも素晴らしいと思います。
映画やゲームの低域もまたちょっと表現が変わって音楽としての質が高まり、音楽再生もピュア的に楽しめるようになりましたので正直想像していた以上の効果を感じました。もしかしたらパワーアンプを追加しないとパワー不足なのでは?と考え始めていた今回の課題ですが、サブウーファー追加によってほぼその心配もなくなりました。大編成のスケール感だけはさすがにフロア型に追いついたとは言えませんが、それでも十分な鳴りに辿り着いたんじゃないでしょうか。