パイオニアのAVアンプ SC-LX59を購入しましたのでレビューしたいと思います。
SC-LX59は2015年モデルで現時点で昨年モデル(型落ち)です。なぜ敢えて今SC-LX59を購入したのかからご紹介します。
●選定ポイント
1.4K60p対応アンプが必要だった
4K60p対応のPlaystation 4 Pro購入を決めている私としては当然「4K60p」に対応した映像環境を作りたいと思っていました。テレビは既に4K60p対応ですがAVアンプが非対応だったのです。
私がこれまで使っていたAVアンプはパイオニアの「SC-LX86」。シリーズ最上位モデルですが既に4世代前のモデルの為「4K30p」までしか対応しておらず、ここがボトルネックとなって60p信号をテレビに届けられません。
そこで、将来も見越して4Kフルスペック(60p、HDCP2.2、HDR、BT.2020)対応のAVアンプに買い替える事にしました。テレビがHDR対応していないのは残念ですが、ここはまたいつか検討という事で。
2.どうせ新調するなら「DolbyAtmos」「DTS:X」に対応させたい
SC-LX86は最新サラウンド規格のオブジェクトオーディオ「DolbyAtmos」「DTS:X」に対応していない為いつか対応アンプに買い替えようと思っていたのですが、ここでそのタイミングがやってきましたので当然オブジェクトオーディオ対応モデルを選びます。
3.イネーブルドスピーカー対応が必要
DolbyAtmosと言えば、天井部に取り付けるトップスピーカー(あるいはハイトスピーカー)を駆使した天井からのサラウンドが肝になります。ただ我が家では天井にスピーカーを設置することは出来ませんので、妥協の産物と思しき「イネーブルドスピーカー」の採用を検討しました。トップスピーカーと比べれば効果は薄いと思いますが、それでもAtmosやDTS:X環境を作るのに天井からの音は欠かせません。また、イネーブルドスピーカーは4つ設置するのが基本となる為、通常のマルチチャンネル分のアンプに加え更に4チャンネル分のアンプが必要になります。
4.フロントプリアウトが必須
現在、我が家の巨大スピーカー「IRS-SIGMA」を駆動させる為フロントスピーカーにはROTELのパワーアンプ「RB-1592SE」を当てています。今もSC-LX86のプリアウトからRB-1592SEに繋いでフロントスピーカーを鳴らしています。当然、新しく買うAVアンプにもプリアウトが必要です。
5.合計9チャンネルアンプ&スピーカーアサイン機能が必要
我が家はこれまで7チャンネルサラウンドを作っていました。ここにイネーブルドスピーカー4チャンネルを足して11チャンネル。しかしフロントチャンネル分はプリアウトで外出しするので9チャンネル分のアンプがあれば足ります。
またフロントスピーカーをプリアウトして、残りの9チャンネル分を各スピーカーに割り当てる「アサイン機能」も必要です。フロント用アンプを他に割り当てられないタイプのAVアンプを買ってしまうと、2チャンネル分が使われず無駄になり、一方で2チャンネル分足りなくなる。という事態が起こります。ここは慎重に確認が必要です。
6.コストを極力抑えたい
最も駆動力の必要なフロントスピーカーはパワーアンプ外出ししますので、その他サラウンドスピーカー用途だけであればアンプの駆動力自体は高くなくても良いと判断しました(もちろん高いに越したことはありませんが今回はコスパも重視します)
ですからミドルクラスアンプで十分と考えましたが、サラウンド処理自体は上位モデルと同等でないと困ります。ここもチェックポイントですね。
●要件結論
・4KフルスペックのHDMI入出力
・DolbyAtmos&DTS:X対応
・フロントプリアウト搭載
・9チャンネルアンプ搭載
・スピーカーアサイン機能搭載
・コストを極力抑える
・上位モデル同等クオリティのサラウンド処理能力
上記全てを満たすアンプが購入対象となります。
●機種検討
主要メーカーの中で新旧含め「実勢10~15万円」くらいをコア価格と定めて比較しました。
一番左が現在のSC-LX86です。
ONKYOは上位機種であるTX-RZ810ですら7チャンネル分しかアンプを搭載していなかった為脱落です。
YAMAHAもターゲット価格帯で狙えるアンプがRX-A2050(型落ち)しかありませんでしたがスピーカーアサイン可否が良く分からなかったので保留としました。そもそもサラウンドも独自技術への拘りが強い為あえてチョイスしたくないメーカーでもあります(昔はYAMAHAのAVアンプも使ってたんですけどね)。
他メーカーではSONYもAVアンプを出していますが、かつての隆盛は見る影もなく今ではプリアウト端子すらない廉価アンプしか出していないので土俵にも上がりません。
という事で、既にこの時点で「SC-LX59」「SR7010」「AVR-X4300H」の3モデルに絞られました。ざっと特徴を見てみると下記のようなイメージです。
Pioneer SC-LX59
純粋パイオニア思想最後のシリーズ(今年からONKYOの思想が入った3桁シリーズに変わったため純粋なパイオニアモデルはこのシリーズで終わり)。上位モデル同等のサラウンド処理エンジンを持っておりミドルクラスながらアンプ部以外は上位モデルと遜色ないスペック。そのアンプ部も実勢同価格帯と比べれば明らかにパワフルでワンランク上位レベル。そして何よりパイオニアはサラウンド技術の評価が抜群に高く、音場補正技術「MCACC Pro」は他メーカーの同等技術を大きく上回ると言われます。4KフルスペックHDMI入力端子が3つしかないのは心許ないですが、4つ以上の機器を繋げる予定もしばらくないので許容範囲と判断しました。
純粋にAVサラウンド力で見るならパイオニアが一番
Marantz SR7010
これも2015年モデルの為、標準価格23万円でありながら非常にリーズナブルになっています。アンプの素性はAVアンプとしては非常に高いとされており、必要な機能も全て網羅されています。解像度が高くクリアな音と評価されますが映画などを観るサラウンドとしては線が細く、低域の迫力が足りないとも言われるので好みが分かれそうですね。いかにもAVアンプというデザインではなくオーディオ機器としての佇まいが良いです。実は検討途中までデザインとアンプの質の良さからMarantzにしよう!と決めていました。
音楽鑑賞も含め、音の美しさで選ぶならMarantzが一番
DENON AVR-X4300H
唯一の最新モデル。最初からDTS:Xにも対応ているのは最新モデルならではですが、一方で発売したばかりなのでディスカウント率は高くありません。ですから標準価格で見れば他の2機種より1ランク下のモデルとも言えます。この差はアンプ部に表れてくると思います。サラウンドはMarantzとは逆で低域の迫力、太さが評価されており、軽く試聴した際も確かにイメージ通りの音だと感じました。そういう意味では「迫力」という点においては駆動力不足を技術で補える気がします。前モデルのAVR-X4200Wに対して同等価格水準で2ch追加して9chアンプに拡張するなど開発に対するチャレンジ意識の高さも感じます。何気に少しサイズがコンパクトなのも魅力。最後までこっちにしようか迷った機種。
迫力あるサラウンドと最初から全部入りの最新モデル
どのメーカーも最上位モデルに対してアンプ部が非力な為、特にMarantzのサラウンド評価は気がかりでした。我が家ではピュアオーディオは別システムで聴くので音楽鑑賞を意識したアンプ作りよりも映画サラウンドに振れたAVアンプを選びたいと考え、まずMarantzを選択肢から落としたのです。ルックスが良いだけに残念。
あとはパイオニアかDENONですがこれが大いに迷いました。全チャンネル4Kフルスペック対応のHDMI端子や迫力あるサラウンドという点でDENONに気持ちも揺れましたが、DENONはともすればボワボワ輪郭のぼやけたサウンドになりそうな気がした事から、しっかり輪郭、質感、解像感も保ちながらサラウンド技術に優れ、駆動力も比較的高いパイオニアを選ぶのが賢明だろう。と判断しました。もちろん今もパイオニアを使っているので設定周りの勝手が分かる安心感もありました。
ちなみに念の為「DTS:Xにおいてもイネーブルドスピーカーがしっかり作用するか」「オブジェクトオーディオに対応していない場合もNeural:X、ドルビーサラウンドとしてアップミックスされるかどうか」「フロントプリアウトとして残りをアサインする事が間違いなくできるかどうか」をDENONとパイオニアそれぞれのサポート窓口に確認し、最終的にどちらも条件をクリアしている事を確認した上でSC-LX59の導入を決めました。他機種より少し安かった。というのも最後の一押しですね。
正直なところAVアンプはミドルクラスが最もコスパが高いと思います。以前SC-LX86という最上位モデル(33万円)を選びましたが、また規格が変わったら買い替えないといけないと考えるとパワーアンプ部は外出しして、プロセッサとして中級AVアンプを選ぶのは良い選択肢だと思います。さすがに低価格機は機能スペックが追い付いていない事もありますが中級モデルであれば機能やエンジンはしっかりしたものを積んできています。もし今後アンプ部に不満を感じても上位モデルに買い替えるのではなく、5チャンネル分のパワーアンプを追加で買う検討をすると思います。
※音楽鑑賞自体もAVアンプで行われる方にとっては、ハイレゾ対応(DSDなど)やDLNAなどのネットワーク機能もご興味あると思います。ほか、スマホ/タブレット用のアプリにも結構違いがありますし、必要に応じて色々調べてみて頂ければと思います。