まだNGPなんて言われてた頃、ネットワーク料金の設定は非常に重要と書きましたが、
ようやく発表されましたね。
結論から言うと、今回の3Gに関するプランは予感が的中して残念な結果でした。
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GIGAZINEより
・プリペイドデータプラン 20h
料金:980円
通信速度:下り最大128kbps、上り最大64kbps
通信可能時間:20時間
通信利用期間(残り時間が有効な期間):30日間
・プリペイドデータプラン 100h
料金:4980円
通信速度:下り最大128kbps、上り最大64kbps
通信可能時間:100時間
利用可能日数(残り時間が有効な期間):180日間
備考:上記に加えて下り最大14Mbps、上り最大5.7Mbpsの通信を3時間利用可能
そして同プランの延長や変更などについては30日または180日間の「通信利用期間」または14日間の「更新猶予期間」内にNTTドコモが提供する専用WEBサイトにアクセスすることで手続き可能。もし更新が行われない場合、契約は自動的に解約となり、再度新規契約が必要になるとされています。
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さて、では何がどう残念なのか書いてみます。
■1
PSVitaが3G回線で何をやろうとしているのかはまだわかりません。
ただ、20時間という時間制限で料金設定していることから、
「常時接続によるサービス。」つまり、どこでも通信といったバックエンドでの自動通信は想定しておらず
あくまで能動的に回線にアクセスするサービスのみをターゲットにしていると考えられます。
定額であれば、いつでもずっと接続しておけますが、
20時間という制限があると、ユーザは回線接続を能動的にオンオフする事になります。
この時点で「持ち歩いている」という据え置き機と決定的な差別化ができるインフラを活かしきれません。
持ち歩いている事を活かして、モバイルだからこそできる積極的な通信サービスを封鎖し
ただ、外でも通信できる。という消極的な通信サービスだけに限定した。という事です。
■2
WiFiモデルを用意した事。
ユーザは将来3G回線を使ったどんな楽しいサービスが出てくるかを知らない段階で
どちらのモデルを買うかを選択させられることになります。
例えば、iPadであれば、3G回線を付けることのメリット、違いはほとんどのユーザが理解しています。
その上で、自分の用途を踏まえWiFiモデルで十分との判断をします。
一方、Vitaの場合はほとんど未知数の状態で選択を迫られる訳です。
そして、一度WiFiモデルを手に取ったユーザは、よほどの事がない限り3Gモデルを買いなおすことはしません。
■3
30日間という限定があるために、毎月更新手続きが必要になる点
ユーザは、回線契約の継続を常に意識せねばならず、その月の利用料980円を強く意識してしまいます。
例えば、今やっているゲームがない。あるいは3G回線サービスを利用するゲームを今やっていない。
とすると、来月3G回線の利用料を払いたくない。と誰しも思うでしょう。
でも、一度更新を止めてしまうと、次に復活するには2,100円の事務手数料がかかります。
これはユーザを3G離れさせるのに十分な要件です。
もっと言えば、3G契約をやめさせたいのではないか?と皮肉りたくなります。
※20時間プランをベースに指摘しましたが、103時間プランでも本質は変わりません。
さて、これらの指摘から、どのような問題点が出てくるでしょうか。
・常時接続を想定していない
・回線速度も遅い
・WiFiモデルのユーザも多数いる
まず、これらの点から、ゲーム開発メーカーは3G回線のメリットを最大限に活かしたゲームは作れないという事が言えます。
WiFiユーザを切り捨てたゲームを作ると反感を買うのは目に見えていますし、
どちらにしても常時接続は想定していないので、3G回線でできることは「オマケ」程度になると想像できます。
ですから3G回線でだけ手に入れられる幻のアイテム!なんて事も絶対あり得ません。
3Gなんてなくても十分楽しめます。でも3Gがあると、ちょびっとだけ楽しみがあります。
といった程度にしか3Gは活かせないという事です。
とすると、そんなオマケ機能の為に、毎月980円を払いたいというユーザがどれほど出てくるでしょうか?
まして、更新を一度でも忘れるとペナルティ2,100円が課せられるわけです。
一度更新しなかったユーザに、再度3G回線契約をさせるのは至難の業です。
3G機能を活かしたゲームが作られない
↓
ユーザは3G契約に魅力を感じず、3G契約を行わなくなる
↓
ますます3G機能を使ったゲームは作られなくなる
という悪循環になり、3G回線というメリットは失われる。という結果になります。
では、どうすれば良いのか?
例えば料金プランの案を示してみましょう。
●プラン案1
20時間980円。但し利用期間に制限なし。
20時間を超えた瞬間に、また20時間分(980円)がオートチャージされる。
(但し一定期間の利用料の上限を任意に決められ、オートチャージストップも掛けられる)
ユーザメリット
・期間に制限はないため、全く利用しない時期があっても損することはない。
・更新手続きの煩雑さもなく、自然に回線を利用できる。
・親が支払う場合は、上限設定することで過度な支払いになる事を抑制できる
メーカー&キャリアメリット
・自動的な課金システムにより、ユーザの契約継続率が高くなる(解約率が低くなる)
もちろん、どのようなプランであっても、ユーザだけが得をするものでは成り立ちません。
メーカー&キャリアが目指すべきは、高額の代金回収ではなく、いかに解約させずに課金を継続できるか。であるべきです。
その為には、毎月能動的に手続きを取らせ、更にその手続きを忘れたら手数料=ペナルティを
払わせるなどというのは愚の骨頂です。
そして更に掘り下げて、私は下記方式を推奨します。
●プラン案2
・WiFi専用モデルを撤廃し、全て3G付モデルとする。
・PS Plus への統合や、PSN Vita+などの新サービスメニューを作り、
3G利用料の定額料金や、付加サービスを連動させる。
→回線料という概念を廃止し、あくまでVitaのサービスとして提供
こっちの方がドラスティックですね。
値段次第ですが、相当安価にする必要があるでしょう。月500円など。
キャリアからすれば月500円で定額回線を提供するなど無茶だと言うかもしれませんが、
実際にイオンSIMは 100kbps使い放題で980円/月 で提供しています。
http://www.bmobile.ne.jp/aeon/
頑張ってできないプランではないと思いますし、
電話やPCと違って、ゲームは集中的にやる時期とやらない時期が起こりうること、
ユーザはいちいちその度に解約しないので、放置ユーザからの課金が相当数生まれる事。
などを考えると、必ずしもキャリアに不利とは言い切れません。
まして、docomoという巨大インフラを使いながら128kbpsという低速度縛りを行うわけですから
過度な帯域の圧迫もないでしょう。
それよりも、電話以外の新たな回線契約を増やせるという事に価値を見出すべきです。
このような方法で3G回線の契約が当たり前になれば、
さっきとは真逆で、ゲーム開発メーカーは回線速度は遅いなりにも
3G回線を活かした面白いアイデアをゲームに盛り込めます。
そうすると3Gの価値は上がり、ユーザの利用度合いも高まります。
ますますゲーム開発メーカーは、売り上げを上げるために色んな3G機能を検討する。
という好循環が生まれます。
ここまで来て初めて「3DS」では絶対できない優位性が生まれますし、
据え置き機では絶対できない、常時接続を活かしたサービスが生まれます。
ソニーとdocomoには今一度、慎重に深く考え直してもらいたいところです。