AVアンプ/サラウンド ピュアオーディオ

IRS-OMEGA(スピーカー)&SC-LX86(AVアンプ)購入 ~その2~

「その2」では音質についてレビューしたいと思います。
実は諸事情ありまして、導入したAVアンプは最初同じPIONEERの「SC-LX56」でした。実際音も出てましたし良さも感じていました。しかしながら、買った時点から不具合を幾つか感じた為、初期不良交換してもらう事になり、その際、交換対象を差額を払って上位の「SC-LX86」にして頂いたのです。これはLX56に不満があったというのではなく、たまたま不具合の現象があったのも巡り会わせと思い「交換して頂くなら思い切って上位のLX86を」とお願いしてみた訳です。不具合対応とはいえ、わがままなお願いを聞いて頂いたショップ様、メーカー様には心よりお礼申し上げます。

ということで、結果的にAVアンプ3種類。スピーカー2種類の組み合わせで比較ができましたので、レビューとしては興味深いものになりました。

●アンプとスピーカー

聴き比べたAVアンプはこちら。

●SONY TA-DA5300ES

4年間使用してきたAVアンプ。癖のないフラットな音を出してくれていたので不満は感じていませんでした。このアンプは8Ω120Wという定格出力ながら最大出力では4Ωでも8Ωでも150Wとなっている変わった仕様。何らかの制限が掛けられているのかもしれませんね。

●PIONEER SC-LX56

最上位機種であるLX86との機能差もほぼなく(USB-DAC機能がない。DSD再生に対応していない。電源部分のパーツが違うという程度)、出力が少し小さいだけ。と圧倒的なコストパフォーマンス機だと思います。ちなみに4Ω定格210W(最大310W)で、合計720Wと十分な出力を持っているクラスD級(デジタル)アンプです。帯域感でのズレを補正するフルバンドフェイズコントロール機能をはじめ、かなり音質に拘った作りこみがされています。

●PIONEER SC-LX86

シリーズ最上位機種。このアンプはLX56と同じく、クラスD級(デジタル)アンプであり、LX56の更に上をいく4Ω定格250W(最大360W)で、合計810Wまでの出力を持っています。LX56の機能や音作りをベースに、更に駆動力を高め、細部に渡って音質が追及されています。

スピーカーはこちら
●infinity Kappa9.2i

http://audio-heritage.jp/INFINITY/speaker/kappa9-2i.html
infinityの中心となったKappaシリーズのフラグシップ。バスレフ型4way5スピーカーです。ツイーターEMIT-Rも評価が高く、低域には30cmウーハー×2個と抜群のスケール感で鳴らします。後に発売されたKappa100と双璧をなすKappaシリーズ高評価機です。

●infiniy IRS-OMEGA

http://audio-heritage.jp/INFINITY/speaker/irs-omega.html
IRS-OMEGAは、Kappaの上位であるIRSシリーズの一つです。IRSシリーズの中ではそれほどの評価は得ていませんが、当時価格ペア100万円だけあってKappaと比べると一段上のクラスの音を出します。Kappaはバスレフ型ですがこちらは密閉型。ウーハーも30cm×1個ですので、スケール感もありつつ締りのある音になっています。4way5スピーカーですが正面からは4つしかユニットが見えません。実はEMITツイーターの真裏(背面)にもう一つKappaに搭載されているEMIT-Rツイーターが搭載されています。Kappa9.2iと同じ4way5スピーカーながらこの辺りの構成バランスが違ってきています。

ちなみに、最後のIRSシリーズという事でギリシャ文字最後の「Ω(オメガ)」の名が付けられているのですが、実は「Kappa」も「κ(カッパー)」というギリシャ文字なんですね。infinityのスピーカーの多くにギリシャ文字が付けられているのは面白いです。

さて、以上の機器で試した組み合わせは下記のとおり。
〔1〕TA-DA5300ES  & IRS-OMEGA
〔2〕TA-DA5300ES  & Kappa9.2i
〔3〕SC-LX56 & IRS-OMEGA
〔4〕SC-LX56 & Kappa9.2i
〔5〕SC-LX86 & IRS-OMEGA

アンプ3台ともバイアンプ対応しているので、全てバイアンプでの比較です。
正直なところ、スピーカーの付け替えは本当に大変でした。何せ1本50kgを超える重さです。ベストな位置に移動させて、付け替えた邪魔なスピーカーを避けて。また、もう一度それを戻して。と何度も繰り返していたら筋肉痛になりました(笑)

●比較レビュー
〔1〕TA-DA5300ES  & IRS-OMEGA
まず5300ESで聴くOMEGAの中高域は非常にナチュラルです。
弦楽器の弦1本1本も厚みがあり、ボーカルの質感も良いです。

しかしながら音に広がりがなく、小部屋どころか奏者達が目の前にぎゅっと密集して演奏しているようです。解像度は高いので、きっちり楽器一つ一つを描き分けていますが迫力や楽しさはありません。狭苦しい音。

低域を見てみると、解像感とアタックの強さ、スピード感は良いです。ズンっとパンチを入れられたような重さ、パンっと弾くような強さ。そして中域以上の音に遅れを取らないスピード感です。もたつきも膨らみもなく鋭く鳴らします。ですが、雄大さ、響きはほとんど感じません。密閉型の箱の中からドンっと吐き出された単音は、そのまま耳へ届きます。その為、弦楽器や管楽器のスケール感や、ドラムやその他打楽器の生々しさ、圧倒的な迫力の存在感。などは一切出ません。中域以下の音楽を楽しむのは不向きで、あくまで中高域分野の音を邪魔せず、補助役に回る雰囲気です。その為、音量は大きいのに物足りない。力強さはあるのに心に響かない。という淡泊な低域となってしまっています。

これらの欠点は5300ESの音が悪いからではなく、5300ESでOMEGAをドライブできていないからだと感じました。

〔2〕TA-DA5300ES  & Kappa9.2i
次にスピーカーをKappa9.2iに変えてみます。
OMEGAにも一長一短ありましたが、そんなOMEGAに比べてもKappaは女性ボーカルの質が決定的に低いです。従来Kappaだけを聴いてた時はそれ程気にならなかったボーカルですがOMEGAが正しく口を開いて歌っているように聞こえるのに対しKappaは女性の声が平べったく、サ行が刺さり、奥行きもなく薄っぺらいのです。何となくずっと口を横に「イー」と開いて歌っている軽薄なイメージがします。また、シャカシャカした音で耳障りな部分もあります。但しスケールは大きいので左右への広がりは気持ちいいです

女性ボーカル以外でも、高域部分全般においてKappaはやはり平べったく薄い感じで立体感がまるでありません。ただ、質感がそれほど悪い訳ではなく、少しうるさいながらも弦楽器やシンバル系も鳴らします。鳴りが広いので奥行き感はないものの、広がりは感じさせる。広い割に少しごちゃっとしています。

中域や男性ボーカル付近まで下りてくるとKappaの広がりの味も出てきます。と言っても、高域ほどの質の差はなくなりKappaも得意のワイドな音場と低域から拾い上げられる厚みでカバーされます。

更に低域になってくるとKappaはその素晴らしい持ち味を発揮します。音を聴いているのではなく「響きを聴いている」といってもよいです。ティンパニのダーン!という響きは、スピーカーの遥か奥で鳴らした音が響いて体に届きます。また、決して音量を目いっぱい上げなければいけないという訳ではなく、耳に圧迫感を感じないレベルの音量でも、大きく部屋を包むように響きます。しかしながら、スピード感はなく、どちらかというとモッタリしているとも思えますが、それでもドラムなどは響き重視で楽しく聴けます。まさに前方にドラムセットがあり、高いところからシンバルが、足元からドスドスバスが、間からスネアなどの音が響く。そんな生々しさです。ベースやコントラバスなどの弦の厚み。チューバやホルンなどの響き。民族音楽のリズム楽器なども本当に生々しいと思います。このKappaの持つ「響きと広がり」は非常に心地いいのですが、悪く言えば「もたついてボヤけた音」とも言えます。

〔3〕SC-LX56 & IRS-OMEGA 
〔4〕SC-LX56 & Kappa9.2i

では、次にそれぞれアンプをSC-LX56に変えてみます。

OMEGAは中高域は更に艶やかになり、広がりも出てきます。低域も厚みを増し、響きを備えてきます。特に弦楽器、金管楽器、女性ボーカルの艶と張り、明瞭さはとても先ほどと同じスピーカーの音とは思えません。また、Kappaの方でも中高域の薄っぺらさが落ち着きました。低域も響きの良さはそのままにクリアな音になっています。

それぞれ5300ESで弱点として聴こえていたポイントが見事に改善されてきました。ただ、Kappaの場合は「弱点が少し改善されたな」という印象なのに対し、OMEGAは別物と思えるほど豊かな音に変わりました。アンプを換えた時の変化率がOMGEAの方が断然大きいのです。先ほども記載したとおり5300ESではOMEGAをドライブできていなかったのが理由だと思いますし、OMEGAのポテンシャルに驚かされました。

OMEGAとKappaは低域の鳴りが全く違いますが、映画を見ると特に顕著でした。タイタニック ブルーレイ版の例を紹介してみます。


前半でタイタニック号が全速の力を出す為に、エンジンのクランクを回すシーンがあるのですがOMEGAは「ガルン!ガルン!」と大きなクランクが回る音が力強くクッキリと鳴りますが、響きが全くありません。一方Kappaは「ブアーン!ブアーン!」と大きな響きで鳴りますが、クランクの音の輪郭はぼやけます。

同じくタイタニック後半の船の後部が海に浸かり、前部が斜めに突き出しているシーンで船が軋む音が聞こえるのですが、OMEGAでは「ギギギギギ」と船が軋む音がしています。KAPPAでは「ブァーーーン」と軋む音というよりは、船全体が唸っているように聞こえます。

よって、音の質では完全にOMEGAです。OMEGAで聴くことで「実はこんな音が録音されていたのか!」というのが分かります。一方、Kappaの方がその巨大さ、そして何とも言えない怖さを感じ取る事が出来ます。タイタニック号の軋み音で言えば、OMEGAの音はタイタニックの甲板で逃げる人が間近で聴いた音。Kappaの音はタイタニックから既に逃げ出し遠いボートの上から聴いた音です。

〔5〕SC-LX86 & IRS-OMEGA
最後に、SC-LX56からシリーズ上位のSC-LX86 に変えてみます。
今回の比較で驚いた事の一つはLX56とLX86の違いです。この2つは同メーカー同シリーズのアンプであり、カタログスペックで見ると違いは、USBDAC機能の有無、DSDへの対応、電源トランスの違いくらいしかありません。もちろんアンプの出力差はあるにせよ「音の傾向」としては近いだろう。と思っていました。

実際に店頭で自分のCDを持ち込んで聞いたときには56に対して86の方がよりクッキリしていてレンジも広く、低音も力強い。という印象なので「ああ、確かにクラスの違いがあるんだなぁ。でも、この音質の差が実勢価格2倍の差として妥当か?と言われるとそこまで違わないかなぁ。」というレベルでした。

ところが、自宅で聴き比べてみると86はそんな次元じゃなくて「全く別の音」が鳴っていると感じました。情報量も広がりも桁が違っていて、つまりは聴こえる音そのものが違うレベル。これは十二分に価格差分の違いがある。と実感しました。

56は艶やかでクリアな音作りで、女性ボーカルは艶めかしく透明で、弦楽器、金管楽器のハリと力強さがあります。86に変えるとそこからグンと情報量が増え、明らかに音の数が増えます。特に中高域(ちょうどボーカルあたりの音)が増えています。逆に言うと、56はまだまだ音の情報量が足りておらず、その時鳴っている主役級の音(トランペットだったり、バイオリンだったり、ボーカルだったり)が特に際立って張って聴こえる特性がありました。86はそれらすべてがフラットであり、全ての音色が偏りなく鳴ります。また、情報の多さと同時に、何も音がなくなった時の静寂感も素晴らしいと思います。

先ほどのタイタニックでいえば、クランクの回転は「ガルン!」という力強い音に「響き」が加わってきます。後半の船の軋み音も輪郭を残しつつ深みのある音へと変化します。LX86&OMEGAは「56&OMEGA+56&Kappa」の良い面をうまく融合した感じです。最終的なスケール感ではやはりKappaの方が上だと思いますが、質の高い迫力のある音という総合力でLX86&OMEGAは一段ステージが上という印象ですね。

このLX86のレベルの高さは様々な作品を観ていて本当に心地よく「THIS IS IT」「ヘアスプレー」といった音楽が中心の作品では迫力あるサウンドが部屋を包み込み、ジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」などの精緻な効果音デザインにハッとさせられます。

さて、話は変わって音楽を聴く時の視聴モードにも触れたいと思います。

56は当たり前ですが、何もいじらないピュアダイレクトモードが最も良い音に聞こえます。またEXTRA STEREOモードも捨てがたく、広く包まれる感じが楽しいモードです。ただ、中高域あたりの音が薄っぺらくなり、ボーカルのサ行なども気になりだします。イコライザーで細かくいじってやる事で好みの音には近づきますが、この傾向は消えません。ですから、心地よく音楽を聴くにはピュアダイレクト。遊びでEXTRA STEREO。といった感じですね。「2chオーディオを無理矢理マルチにしてエフェクトを掛けても良い結果は生まれない」という常識的な感想に至りました。

86はピュアダイレクトモードで、その情報量の多さとフラットさがよく分かります。加えてEXTRA STEREOモードが凄いです。広く包まれ豊かな音になるにも関わらず、音が痩せる事もなく、中高域の質感も全く変わりません。イコライザーでいじる必要はなく、そのままの標準設定がベストな音になります。ダイレクトと比べて、中高域が少し軽くなる、低域も弱くなる、音数が減るといったマイナス変化もありますが、音の傾向はピュアダイレクトのものを残しながら包囲感を作り出すので、曲や好みによってイコライザーでわずかに低音を持ち上げてやるかどうか。というくらいで、通常リスニングモードとしてピュアダイレクトと優劣付けがたいクオリティになります。楽器の質感、深みを味わいたい時はピュアダイレクト。音楽を楽しく聴きたい時はEXTRA STEREO。と日常のリスニングモードとして使い分けられるレベルです。56で感じていた固定観念は打ち崩され、マルチ化してエフェクトを掛けていながらこれだけの音質が維持できるのか。と驚きました。

●最後に

今回本当に勉強になったのは、組み合わせの大切さです。
アンプがTA-DA5300ESの場合は、OMEGAよりKappaの方が総合力では上でした。
ところが、アンプをSC-LX56に変えた時点で、KappaよりOMEGAの方が良くなりました。
同じアンプにグレードアップしたのに「良い」と感じるスピーカーが逆転したのです。
アンプとの相性。それから、アンプの駆動力でどのくらいポテンシャルを出せているか。などによって、こういう逆転現象が起こるわけですね。「そんな事当たり前」と言われればもちろんそうなんですが、ここまでそれが実体験できたのは本当に勉強になりました。

Kappa9.2iもOMEGAもアンプを選ぶと言われます。そもそもAVアンプなんかで鳴らせる訳がないというのが一般的な意見だと思います。そういう意味では、今回はスピーカーを正しく評価したというよりは、AVアンプとの組み合わせでどうなるか。の感想を書かせて頂いたといった方が良いでしょう。Kappaについて厳しいコメントも書きましたが、そもそももっとKappaを鳴らし切れるアンプを使っていればKappaに対する評価も大きく変わるんだと思います。そこは勘違いしてはいけませんし、スピーカーのポテンシャルに対する勝手な思い込みを作ってはいけませんね。

一方、LX86の高出力D級のポテンシャルも安価なAVアンプとは別物だと感じましたし、OMEGAのポテンシャルを多少は引き出せているのではないかなぁと感じます。ですからアンプの方も「AVアンプだから」と一括りに区別するのではなく、それぞれの能力を客観的に感じていければいいと思います。

それはそうと、タイタニックのブルーレイ版。キレイになりすぎてCGが丸わかりになっちゃってますね。私は映画館、LD版、DVD版、と観てきましたが、これまで「あー。動き的には確かにCGだなぁ」と感じていた船や乗員/乗客が、ブルーレイではクッキリしすぎてて「完全に見たままCG」になっています。船のロープが船首に立ったディカプリオの体を突き抜けてるなども初めて気づいてしまいました。でも、だからブルーレイはダメだ。というのではなくて、音も映像も抜群に素晴らしいです。

さて、音質比較はこのあたりにして「その3」では「SC-LX86」自体に注目して機能面を見てみたいと思います!

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