PlayStation4について基本的な部分はご紹介しましたので、今回はゲームサウンドの話をしてみます。
PS4と言えば、まずよく言われるのが高品質なグラフィック。1080p/60fpsという高画質&滑らかな動きに目を奪われます。
ですが、エンターテイメントコンテンツに於いて、ないがしろに出来ないもう一つの要素が「音」です。映画でもそうですね。迫力のある映像と迫力のあるサウンド。その2つが壮大な体験をもたらしてくれているのです。
そこで今回は「PS4の紹介」というよりは、「ゲームにマルチサラウンド環境を!」というテーマで記事を書いてみます。多分に独りよがりな内容かもしれませんが、小難しい規格の話ではなくそもそもマルチサラウンドっていいものだよ。というご紹介をしてみたいと思います。
●PS4で採用された新フォーマット
さて、PS4ではDTS社のサラウンドフォーマット「DTSーHD Master-Audio|7.1」に対応しています。
AV Watchでの紹介でもありますが実際に本体側面に「DTSーHD Master-Audio|7.1」と記載されています。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20131118_624096.html
サラウンドフォーマット自体には色々種類があってドルビー社やDTS社が双璧となり、より高品質なサラウンドフォーマットを目指してしのぎを削っているのですが、実態としてゲームを「マルチサラウンド」でプレイしているユーザはほんの一握りだと思うんです。私の周りでもマルチサラウンド環境を作ってゲームを楽しんでいる方はわずかしかいません。
●みんなマルチサラウンドを体験していない
実はもう14年も前になるPS2の時代からマルチサラウンドには対応していましたし、実際5.1ch対応のゲームもありました。それからPS3が発売され、例えば「みんなのGOLF5」というどちらかというと地味なサウンドデザインのゲームですら「7.1chサラウンド」に対応していました。
でも、ほとんどのユーザはマルチサラウンドを体験していないのではないでしょうか?
映像はSDからHD、そしてフルHDとスペックアップしていき、多くのユーザが「グラフィックが綺麗だ!」という事に喜びを感じているのに、なぜかサウンドに関してはトンと無関心。これはおかしな話です。
ゲームを開発している人は、より高いグラフィックを追い求めるのと同時に、音楽やサウンドデザインにも拘っています。そもそも「グラフィックがあーだこーだ」とかあまり興味がないライトユーザはともかく、フレームレートがどうだ、質感がどうだ、と口うるさいゲーマーが「開発者が作りこんだサウンドデザイン」を体験しない、あるいは「体験しようともしない」というのは物凄くアンバランスだと思うんです。
●リアリティのある世界を作るのにマルチサラウンドは当たり前
私はもう随分と昔からマルチサラウンドの楽しさを味わってきました。まだ世の中にDVDが存在せず、LDの時代(初めてディスクリートな5.1chが世の中に出てきた頃)から5.1ch環境を作っていましたし、もちろんゲームに於いても対応しているゲームは全てマルチサラウンドでプレイしてきました。
例えば、レースゲーム
自分の後ろから車が迫って来る様子も音だけで感じ取れます。1台が自分の真横にいて、もう1台は左後方から詰め寄ってきている。まさに自分が運転席にいて、ライバル車が周りを取り囲んでいる様子が音で感じ取れるのです。
でもそれって現実世界では当たり前の事ですよね?。だって自分は運転席にいる想定なんです。後ろから迫って来る車のエンジン音が前から聴こえてきたら変ですよね?
例えば、FPS
前で誰かが喋っている場面で、くるっと後ろを振り向くと、今度はさっき喋ってた人の声が後方から聴こえてくるようになります。
でもこれも当たり前ですよね?喋ってた人に背を向けたのに、その人の声が変わらず前から聴こえてたら変ですよね?
例えば、FF14
川のせせらぎ、小鳥たちの声、誰かが後ろで戦っていて、仲間が真横で援護してくれている、そんな世界のど真ん中に自分がいる事が実感できます。
でも当たり前のことですよね?自分の周りに自然や人々が取り囲んでいるのに、その音が全部前から集約されて聴こえてくるというのは変ですよね?
昔のゲームは2次元世界でした。スーパーマリオブラザースは横から見ているゲームでしたし、ゼルダの伝説は上から主人公たちを見下ろしていました。画面内にいる主人公を遠くから見ている視点のゲームだからサウンドも前からだけ聴こえていて不自然には感じなかったんですよね。むしろ後ろから音が聴こえたら「それはどこの音だよ!」という事になります。
でも、徐々に3次元世界でプレイする一人称視点のゲームが増えてきました。自分の目線で操作が出来、右を向いたり左を向いたり、後ろを振り返って歩いたり、つまりその世界の中心にプレイヤーがいるような世界作りが増えたのです。画面には見えていないけれど、左右にも世界があり、後ろにも世界が広がっています。ですから、それに合わせてサウンドデザインが変化するのは当たり前ですよね。後ろにあるはずの音が前から聴こえるような事があったらおかしいのです。全く辻褄が合いません。
ゲーム製作者はそれをきちんと理解しています。PS3やPS4のゲームでは、非常に丁寧な音作りがされていて、マルチサラウンドを使って辻褄が合う世界観を実現しています。にもかかわらず、もしユーザ側がグラフィックばかりに目を取られ、音をなおざりにしているとすれば本当に勿体ないですし、ゲーム開発者が折角作った本来のゲームの楽しみ方が出来ていない事になります。
PS4では更にコントローラーにもスピーカーが付いて自分を取り囲むサラウンドに加えて自分の手元で音が聴こえる、実質8.1chを実現しています。身に着けている通信機に入った音声、銃を撃った時の薬莢の音など、自分の体とその周囲で鳴る音をコントローラーのスピーカーも利用して鳴らしてくれます。
このトータルなサラウンド効果、緻密に計算されたサウンドデザインを体験せずして据え置きゲーム機の本領を語る事は出来ません。ポータブルでは実現できない世界、「然るべき場所に座っている事」を前提にした据え置き機ならではのゲーム体験がそこにあるのです。
●マルチサラウンド環境を作るのは難しい?
とは言いながら、7.1ch環境を作ろうとすると部屋にスピーカーを7つ(8つ)置かないといけない訳です。そんなスペースないよ。という方も多いでしょうし、またそれだけの数のスピーカーとAVアンプを買い揃えるのも大変だ。という方も多いでしょう。この辺りがネックでサラウンド環境を諦めている方も多いと思います。
もちろん誰にでも簡単に導入できる訳じゃない事は分かっています。まして、DTSーHD Master-Audioに対応したAVアンプと、各チャンネルごとのスピーカーを揃える事は大変です。
分かります。確かに分かるんです。でも、そうは言ってもPS2から14年も経ちました。ゲームが好きで、PS4も発売日に購入するような皆さんには、せめてドルビーデジタルやDTSデジタルサラウンド5.1ch環境は作ってもらって、その世界を体験して欲しいと思います。PS2時代ならまだしも、PS4で描き出される息を飲むほどリアリティのある世界を目の当たりにしながら、後ろの音が前から聴こえるというような滑稽でチグハグなゲーム体験は勿体ないと思いませんか。
●どんなスピーカーを置く?
入門者向けにはお手軽にサラウンド感を味わえるスピーカーとしてよく下記2つを見かけます。
・フロントのみでサラウンド感を作り出すサウンドバー
・同じ小さいスピーカーを5つ(あるいは7つ)セットにしたサラウンドスピーカーセット
私はサウンドバーよりも物理的にスピーカーを沢山置く方法をお薦めします。サウンドバーは包囲感は味わえますが、本当の意味で後ろの音が後ろから聴こえる訳ではありません。
ただし、あまり小さいスピーカーを沢山置いてもパワーに欠けます。サブウーファーがあるので重低音の雰囲気は出ますが、やはり全体の音の厚みは出てきません。ですから、せめてメインスピーカーは出来ればもう少ししっかりしたものが良いですね。そして更には、センター、サラウンド側などのスピーカーももっと能力の高い物になるに越したことはありません。
そうなってくると、大き目のサラウンドスピーカーセットを買うか、あるいはバラバラにスピーカーを揃えるか、その場合はAVアンプも別途用意が必要だ。という感じで泥沼化していってしまうかもしれません。そこはバランス感覚を持って自分に合った環境を作ってもらえれば良いと思いますが、とにかく「テレビ内蔵スピーカー(2チャンネルだけ)」はゲームソースのポテンシャル的に勿体なさすぎ。という事は間違いありません。
●PS4をマルチサラウンドで楽しもう!
我が家のサラウンド環境は幸いにもDTSーHD Master-Audioに対応していますし、スピーカーも7つ揃っています。今のところPS4のゲームのポテンシャルを十分再現出来る環境にあります。
皆さんも、もしマルチサラウンド環境をお持ちでないのであれば、是非検討してみてはいかがでしょうか。今からでも、いやPS4で更に高品質なゲームが出てきた今だからこそ、そのポテンシャルを存分に楽しめる環境を作って頂けたら。と思います。
折角の1080p対応ゲームなのにSDディスプレイでしか見ないんじゃ勿体ない。
折角のマルチチャンネル音源なのにステレオでしか聴かないんじゃ勿体ない。
ゲーム体験の差という意味では、むしろ後者の方が比重が重いんじゃないか?とさえ思っています。