恒例の「ヘッドフォン祭」に行ってきました。
https://www.fujiya-avic.jp/event/1210_headphone_fes/
今回の「秋のヘッドフォン祭2012」で注目していたのはハイレゾDAPとfitearの新作イヤホンです。
1.ハイレゾDAP
今年は続々とハイレゾDAPが登場してきました。
・夏に発売された最強DAP iBassoの「HDP-R10」
・そして今回のヘッドフォン祭でお披露目される iriverの「AK100」
・更に、高音質DAPの元祖とも言える HiFiMANの最新フラグシップ「HM-901」
R10が発売されて買おうかどうしようか。と迷っていましたが、発売が控えていたHM-901を聴いてから判断しよう。と決めていました。更に、そこにiriverのAK100も投入されたので、今日のヘッドフォン祭は本当に楽しみだったんですよね。
●irver 「AK100」
ということで、まずは本日行われたAK100の説明会に参加。
概要、コンセプト、仕様などの説明で、ハイレゾDAP開発への本気度を感じる事ができました。DACにWolfsonのWM8740を使い、それも相当に追いこんでチューニングしてあるとの事。しかしながら、ハイレゾ音源の代名詞とも言えるDSD形式には対応していない。という点はどうしても気になります。
まず好感を持ったのは作りが非常に良いという事。
ヘアライン加工で質感のいい本体。MicroSDスロットもスライドカバーが付いていて美しい。
1600万色IPS液晶と感度のいいタッチパネル。
この仕上がりで、片手にスッポリ収まる何とも言えないカワイイプレイヤーです。
胸ポケットにいつも忍ばせておきたくなるほど所有欲をくすぐられます。
実際にタッチ操作した感じもよく、画面が2.4インチしかない為なかなか難しくはあるものの、タッチ自体でのストレスはほとんど感じません。
音量は右についたツマミで調整するのですが、ちゃんと電源ボタンを1度押してスクリーンオフにしたときにはボリュームロックを掛けられる設定もあり、カバンの中で勝手に音量が変わる。なんて事もありません。音量の階調も必要十分な細かさでベストな音量を調整できます。曲を選んでから再生されるまでの時間も短く、キビキビと反応してくれます。
microSDは2枚挿しでき、公式には32GB×2枚となっていますが、非公式に64GB×2枚も動作する様子です。本体内蔵32GBと合わせると最大160GBもの音楽ファイルを持ち歩けます(システム領域があるので実際は少し減りますが)
とにかく丁寧に作られていて、ずっと手の中でコロコロ触っていたくなるプレイヤーでした。
さて、肝心の音ですが、チェック用音源を入れて持参したMicroSDを挿し、UE18Proで聴いてみました。
一聴した感想としては、非常に優等生だという事。高域から低域まで大きな不満はなく、破綻もしていない。なるほどクセのないフラットな音づくりというのは間違いないな。と感じました。ですが、正直言ってもっともっと凄い音を期待していたというのもあって、少し肩透かしを食らった気もします。決して悪い音じゃない。だけど、何となくUE18Proの良さを活かせていなくてちょっと眠たい退屈な音に聴こえてしまうのです。
●HiFiMAN「HM-901」
という事で、AK100には一定の満足をして、次にHiFiMANのブースへ。
ここでは待望のHM-901を試聴します。
http://www.twctokyo.co.jp/hifiman/HiFiMAN.html
こちらはmicroSDではなく、通常のSDカードが挿せます。さっき手持ちのmicroSDをアダプタに入れて挿入。同じくUE18Proで試聴。
なんとこちらは先ほどとは打って変わって、楽しくドラマチックな音を鳴らします。低域も力強くズシンと響いてきます。
先ほどのAK100の何となくの物足りなさの1つが「低域」だった事にここで気付きました。
AK100も決して低域が出ていない訳ではありません。でも力強さがなかったのです。低域の音量の問題ではありません。低域の響きと深さと強さ。これがHM-901にはあります。また、だからといって中域や高域に乱れや不満がある訳ではありません。解像度も高く全ての音をパワフルに鳴らしてくれます。
確かにAK100もDACには拘っていましたが、こちらはR10でも搭載しているハイエンドDAC ES9018を2個積み、オペアンプにOPA2107とOPA627を2個ずつ。と圧倒的なスペックでパーツが投入されています。この辺りもAK100との差として出ているのかもしれません。
さて、では外観と操作性ですが、外観についてはAK100と比べると無骨で大きく、上品さはありません。プラスチッキーな作りで決して質感が高いとも言えません。液晶画面も暗めで粗く、AK100と比べると画面デザインも見づらいものです。
ただ、ジョグダイヤルを利用した操作性はさほど悪くはなく、iPod Classicを操作しているような感覚です。AK100はタッチが中心でしたがこちらは完全に物理操作のみという事で、これはこれで良いと思います。
但し大きな不満があります。ボリューム変更のステップ幅が大きすぎるんです。1つ音量を変えると大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりして、ベストな音量を取る事ができずストレスを感じます。また、AK100に比べれば断然筐体が大きいですよね。取り回しも含めればアンプとDAPの2段重ねよりはマシといったところで、ハイエンドDAP環境としては納得できるレベルではありますが、AK100を体験してしまうとあの小ささは魅力的すぎます。
そして確認しきれず。だったんですが、HM-901もDSDに対応していない可能性があるようです。この大きさとスペックで投入しておきながらDSD非対応となるとこれは非常に残念です。実際どうなんでしょう?
●iBasso 「HDP-R10」
さて、最後に先行して発売されたHDP-R10との比較です。
R10は以前店頭で軽く試聴しただけで、祭ブースでも見かけませんでしたが、一緒に行った友人が所有していたので今回それをじっくり聴かせてもらいました。
まず感想としては音が抜群にいい。ということです。
HM-901で感じた力強さもあります。音のバランスもいい。欠点が見当たらない音です。
比較するとやっぱりAK100はHM-901やR10より一段劣ると言わざるを得ません。
そして、もちろんR10はDSDに完全対応しています。
ただ操作性には問題があります。キビキビ動くAK100や、物理操作のHM-901と違ってモッサリAndroidです。何となく思った事と違った反応をしてしまうんじゃないか。とビクビクしながらタッチ操作をしなければいけない印象ですね。とはいっても、T51の地獄の低品質タッチパネルと比べれば断然マトモです。
また、友人に言わせるとR10は電源を入れる度に曲データの全サーチを始めるのでその待ち時間が鬱陶しいとの事。microSDに大量のデータを突っ込もうものなら相当待たされるだろう。との事でした。更に、曲を選択してから再生までの時間も数秒待たされます。数秒というと短いようにも思いますが、実際操作していると「あれ?再生始まってるかな?」と気になってしまうレベル。他の機種ではこんな事がないので結構気になりますね。
そして非常に困るのがポップノイズです。これも試させてもらいましたが、電源を入れた時、スリープから復帰する時に、バツン!と大きなポップノイズが鳴ります。不愉快とかっていうレベルではなく耳に悪影響が出るんじゃないかと言うほどツンざくような音です。これは運用上本当に怖いと思いました。
ポップノイズ、長時間のサーチ、再生までの待ち時間、タッチ操作の感度などもし可能であればファームアップで改善してもらいたいところですね。逆に改善されないのであればこれらは他機種では感じないストレス要素として非常にハンデになります。
●DAPまとめ
という事で3機種のまとめです。
音質
R10=HM-901>>>AK100
(R10と901の「=」は記憶に残るイメージです。誰かちゃんとした901とR10の比較レビューを…)
操作性
HM-901>=AK100>>R10
プレイヤーとしての基本挙動
AK100>>HM-901>>>>>R10(ポップノイズ、サーチ、待ち時間など完成度の低さ)
ボリュームの調整しやすさ
R10=AK100>>>>>HM-901
携帯性
AK100>>>>R10=HM-901
本体の質感
AK100>>>>R10=HM-901
値段
AK100(約5万円)>>>R10(約8万円)>HM-901(約10万円)
もちろんブースで触ったレベルなのでチェックしきれていない部分はたくさんあります。
トータルするとAK100は非常に優秀なんですが、肝心の音で負けている。というのが本当に悩ましいところです。そして、その音質差も価格とのバランスで言うとさほど悪いという訳ではありません。ただ、結局高額なお金を出す訳ですから「もっと音の良いDAPがある」という事がわかっていながらAK100をチョイスするのも、また悔しいところではあります。こんな堂々巡りな悩みにハマりつつ、でも今のDAP環境への不満も明確化されてしまったので本当に困った状態です。困った困った。
2.イヤホン
さて、今回はfitearの新作。アニソンを聴くのに最適という変わったコンセプトで開発された萌音(モネ)に注目です。
http://fitear.jp/monet/index.html
春のヘッドフォン祭で感動し今なお一番欲しいイヤホンMH335DWの再チェックと合わせて萌音も試聴。
335DWの
3Way / 3Unit / 5Driver(Low-2 / Low・Mid-2 / High-1)
と全体のバランスを保ちながら低域に力点を置いた構成に対し
萌音は
3way / 3unit / 4driver(Low.Mid:2 / High-A:1 / High-B:1)
と一見高域重視のドライバ構成だったので、軽めの音を出すのでは?と想像していましたが、実際に聴くと少し違っていました。
確かに中高域はキラキラしていて、萌音でしか聴けない音を聴かせてくれます。一方で低域も決しておざなりではなく、しっかりバランスを取って鳴らしてくれました。
続いて久々に335DWも聴いてみましたが、個性的な萌音に比べるとこちらは完成度で勝負といった感じです。とにかく欠点がない。破綻がない。どの音域にも不満がなく煌びやかに鳴らしてくれる。という点で、やっぱり至高は335DW。といった印象を持ちました。
春の時に感じた335DWの良さを今回も変わらず感じましたので、やっぱり現時点では次に買うなら335DWと考えています。
3.AK100と335DWと
とここでふと思いました。
DAPの試聴はずっとUE18Proでしてきたけど、実は物足りないと感じたAK100も335DWで聴いたら全然イメージが変わるんじゃないか??
でも、自分はどちらも所有していません。
離れたブースにあるAK100のデモ機を勝手に借りて、fitearブースに持ってくる訳にもいきません。どうしようかなぁ。と悩んでいたのですが、AK100のブースのスタッフの方が非常に優しい方で「わかりました。じゃ、私も一緒に335DWのブースに行きましょう」とAK100を持ってfitearのブースまで出張(?)してくれたのです。
こんな事してくれると思ってなかったのでちょっと感激しました。
iriverブースにあったAK100をfitearブースに持ちこんで試聴!
聴いてみたところ、AK100のフラットな音に335DWの解像度の高い音が加わって、眠たく退屈な雰囲気は吹っ飛びました。ただ、両方少し軽めの味付けなのでHM-901&UE18Proで感じたドッシリとした音の印象にはなりません。
AK100&335DWとHM-901&UE18Proだと、私の好みは後者の方でした。
でも、イヤホン単体で見るとUE18Proよりも335DWの方が好きです。
という事で、本当はHM-901&335DWも試したいところでしたが、さすがにそれは断念。
逆に、まずはDAPを購入してから、それに合うイヤホンを再度きちんと検証した方がいいな。と判断しました。
他にもユニバーサルの頂点の1つ。AKGのK3003なんかも聴かせてもらいましたが、力強さという点ではUE18Proや335DWには劣る印象でしたので現時点で購入候補には入らなさそうです。
そんなこんなで今回のヘッドフォン祭も満足な体験ができました。
正直なところ、AK100を買う気で参加したのですが、結局AK100を買うには至らず、むしろどのDAPも一長一短である事を知ってしまったのでもう少し悩む事にします。
現時点では自分の中ではHM-901に傾いていますが10万円という値段を考えるとなかなか難しいですね^^;
4.ダイナミックオーディオ マラソン試聴会
実はヘッドフォン祭とは全然関係ないんですが同じ外苑前で、ダイナミックオーディオさんによるマラソン試聴会が開かれていたので、ちょこっとだけ覗いてきました。
こっちはポータブルではなく、完全据え置きピュアオーディオの世界です。
大きなステージに多くの機器やスピーカーが並べられ、まるでコンサートを聴くように数百人のお客さんがハイエンドオーディオを聴いています。これはこれでまた凄い世界ですね。
CDプレイヤー(+オプション)だけで280万円といった機器の比較試聴なんかがされてましたが、こっちはポータブルと違ってぐっと価格レンジが上がりますねぇ。
私も一時期据え置きにも興味を持った時期がありましたが、もう今はちょっと着いていけそうにありません。。
演目表と布で出来たカレンダーを頂戴してきました。
このダイナミックオーディオのカレンダー。多分もらうの10年以上ぶりです。。
今も変わらず同じ雰囲気で作られているのを知って嬉しくなりました。