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【解説】PMA-3000NEがDENONアンプの新たなステージと言える理由

DENONのプリメインアンプはこれまで様々なラインナップが登場してきました。2000シリーズ、SA1、SX1、SX1 Limited、A110など。そんな中で現行フラグシップのPMA-3000NEこそがこれまでのDENONアンプの新たなステージの幕開けであるという事をご紹介したいと思います。

DENONのアンプ開発の系譜

こちらはDENONが公式に出していたUHC-MOS Single Push-Pullの歴史です。

見て頂くとPOA-S1という伝説の弩級モノラルパワーアンプを始まりとして、様々なレイヤーでアンプ開発が進んできたことを示しています。ここで興味深いのは5段にグレード分けされているところです。

フラグシップはS一桁シリーズ、次いで2段目はS二桁シリーズ、3段目にA100の記念モデルシリーズ、4段目に一般モデルの上位機2000番台シリーズ、最後にエントリーグレードの1000番台シリーズです。DENONのアンプとしては更に入門機としてこの下に数字3桁シリーズが続いていきます。

何となくモデル名の決め方からすると、3000というのは2000や2500の系譜の先にいるように思いますが、この図を見るとPMA-3000NEはフラグシップである「S一桁」シリーズの延長に位置付けられています。これは単に最新モデルだから一番上に持って行った。という事ではなく、このポジションにPMA-3000NEを置くには必然性があると捉えています。

3000の位置づけとは

まず、2000番台シリーズが「2000」⇒「2500」と数字を500増やしたので、その次だから「3000」なのかな?と感じると思いますが、これは違います。1000番台、2000番台モデルに対して、新たに「3000番台」を作ったという事です。つまり3000は2000番台の後継ではなく、グレードが一つ上の新しい数字です。ですから系譜としては、1000番台同様に2500の後継は2500、あるいは2600などと繋がっていくはずで、3000には繋がらないはずです。

では逆に3000はSX2やSZ1などという名前にはならないのか?という事これもまた違う位置づけです。Sシリーズは「特別モデル」と位置付けられており汎用量産モデルとは一線を画するラインです。といっても単に「高級」というだけではなくて、ある種実験モデル的な「一世代だけ作るスポットモデル」という位置づけです。

ですから実はSA1の後継がSXではありませんし、SXの後継がSX1でもないのです。そしてSX11はSX1の単なる廉価モデルでもありません。これらは全く音の傾向の異なるそれぞれ「バラバラのモデル」なのです。

そして3000という数字が意味するのは「実験モデル」ではなく、ここから新たな「3000」シリーズという一貫した系譜が始まるという始祖モデルを意味しています。見方を変えれば、色々とSシリーズで実験してきたことを一旦取りまとめて、新しいDENONのステージの「最初の完成モデル」として3000という数字を冠したと考えることが出来ます。

1000番台、2000番台の音とは

DENON伝統の音。というと皆さんはどんな音の傾向をイメージされるでしょうか。骨太で厚みのある音。低域がどっしりしていてピラミッド型の音バランス。繊細さや高解像という方向よりは、熱くて強い音作りを得意とする。そんなイメージを持たれるんじゃないでしょうか。

このDENONサウンドと呼ばれる傾向を長年進化させてきたのが1000番台、2000番台というDENONの歴代モデルだと思います。またそれまでのAE→REに続いて2016年から始まったNE(New Era)シリーズはDACも搭載して現代的スピードも意識してはいますが、でもやっぱり安心のDENONサウンドをしっかり守っているシリーズだと思います。

DENONの音が好き。という方はこの音をイメージされると思います。

Sシリーズの音とは

一方、スポットモデルとして開発されたSシリーズの音の傾向は一貫していません。

PMA-SA1
従来のDENONサウンドの「艶やかさ」に振り切った弩級モデル。つまり、いわゆるDENONサウンドの「強みを突き抜けさせた」ある種、気持ちいいDENONサウンドのフラグシップです。「きめ細やかで滑らか、まろやか」を極めた音です。その代わり「制動力、音の分離」といったハイファイな音作りは意識していません。

PMA-SX
もう一つのDENONサウンドの方向。徹底した「太さと厚み」に拘ったモデル。アナログな濃い音で地面を揺らす。そんなパワフルな音を目指したアンプです。

PMA-SX1
SXの名が付いていますが、無印SXとは全く異なります。SX1は太さと厚みから脱却し「鮮度」を第一に掲げたモデルです。不要な贅肉をそぎ落として透明感とスピード感を徹底。今までのDENONとは全く違うサウンドを目指した特殊なモデルです。逆に従来のDENONの厚みや艶を期待するとちょっと違うかも・・・と感じると思います。

PMA-SX1 Limited
サウンドマスターの山内さんがDENONとして目指す音として掲げた「Vivid & Spacious」を徹底して貫いた特別モデル。SX1で方向づけた「透明感、鮮度」を磨きに磨いて鮮烈で広がりのある音を作りました。もう伝統的なDENONサウンドとは全く違うステージ。ややもすると、DENONなのに線が細い、どっしり感が足りないと感じられるサウンドだったのではないかと思います。

PMA-SX11
一見PMA-SX1の下位モデルではありますが性格が異なり、SX1の鮮度のエッセンスを活かしながら力強さを付加したモデル。出力もSX1が50Wなのに対しSX11は120Wと圧倒的に強い。一方アンプ回路はSX1が差動1段だったのに対し、SX11は差動2段です。鮮度より厚みを取る判断で音のクオリティという意味ではSX1に譲るかもしれませんが、力強さとのバランスという意味では評価されるモデルです。PMA-3000NEに繋がる系譜の一台と言えます。

御覧のようにSシリーズは一つの系譜のように見えますが「その時最大に尖った一台を作る」という根っこのコンセプトが共通しているだけで、音作りは全く異なるモデル達なのです。

モデル発売年個性価格
SA12005年艶の頂点72.6万円
SX2008年厚みの頂点78.75万円
SX12014年鮮度の頂点63.8万円
SX112015年SX1+力強さ46.2万円
SX1 Limited2019年SX1を磨き上げたVivid & Spacious85.8万円

特にS一桁シリーズはパーツも量産性を度外視して徹底的に拘っているためその時々の最高モデルとなっています。ただ「フラグシップ」というよりは「特別モデル」という表現の方が適切だと思います。対してSX11は比較的バランスモデルと言えますね。

A100、A110の音とは

A100は100周年記念モデル、A110は110周年記念モデルです。記念でモルなのでその時のDENONサウンドの集大成をリーズナブルに発売するというコンセプトのようです。ですからこのA100とA110も音の傾向は違います。その時のDENONを代表する音です。

A100
SXの2年後(2010年)に発売。当時のベースモデルであるPMA-2000SEをベースに、SXの「厚み」を加えて完成させたDENONらしい太い音のバランスの到達点。

A110
SX1 Limitedの1年後(2020年)に発売。PMA-2500NEをベースに置きながら、SX1 LimitedのVivid&Spaciousを取り込み、尖りすぎず低域の力強さと鮮度、空間描写のバランスを採った理想的なモデル。これまでのDENONサウンドの集大成と呼べる1台で、筐体も含めてPMA-3000NEの土台になったモデルです。

3000が到達した場所とは?

これまで伝統的なDENONサウンドの進化、様々に尖った特別モデル、それらのバランスを採ってその時代を象徴する記念モデル、これらの全てを飲み込んで登場したのが「PMA-3000NE」です。

PMA-3000NEはいわば
・DENON伝統的な厚み
・SA1の艶
・SXの力強さ
・SX1/SX1 Ltdの鮮度、Vivid & Spacious
・SX11やA110のバランス感覚

これらを全部ぶち込み、全てのDENONサウンドを過去にして新しいDENONサウンドのスタート地点に立ったモデルと言えます。

なぜそんな事が言えるのか?という理由の一つが「差動1段アンプ回路」です。

従来のDENONアンプでは電圧増幅段に「差動2段」を採用していました。しかし音の鮮度を上げる為、SX1/SX1 Ltdでは「差動1段」へ簡素化したのです。回路をシンプルにすることで信号を通過する素子が減り、音の鮮度が飛躍的に高まります。段数が少ないほど回路を通る波形のズレを小さく出来る為、音の輪郭がボケず「透明感」と「空間表現力」に繋がります。これがVivid & Spaciousの肝でもあり、Vivid & Spaciousは「差動1段」によって実現します。

しかし、段数を減らすと「増幅率(ゲイン)」を稼ぐことが難しくなります。1段目で丁寧に形を整え、2段目でドカンとパワーを乗せる事が出来るので2500NEは回路が2段ある事で「音に厚みを出しやすい」というメリットがありました。回路が複雑になり素子が増える事で「歪み」による「厚み」や「コク」といった心地良さにも繋がっていました。なのでA110ではSX1のVivid & Spaciousを継承すると言いながらも差動2段にする事で厚みを獲得していたのです。

逆に、SX1は段数を減らしたことにより、DENON伝統の「重厚さと濃密さ」をやや減退させ、透明だけど線が細い音になってしまったとも言えます。SX11も力強さを出すために敢えて差動2段に戻しています。差動2段の厚みを取るか、差動1段で鮮度を取るか、これがDENONサウンドが目指す音によって都度選択してきた2つでした。

差動2段差動1段
厚み×
鮮度×
代表モデル2500NE、SA1、SX11、A110などSX1、SX1 Ltd

ところがPMA-3000NEでは最新のUHC-MOS(大電流型FET)を採用することにより、ついに差動1段でも十分なゲインを得る事に成功したのです。この大電流型FETは一つで普通のトランジスタ何十個分もの電流を流せる素子です。

PMA-3000NEはこのシンプルな1段回路を「4つ(クアッド)」組み合わせるような贅沢な構成を取ることで、鮮度が高く、厚みもあるという複合的なメリットを作り出す事に成功し「SA1/SXの重厚さ、艶」「2500NEの躍動感」「SX1 Ltdの透明感と空間表現」全てを集約しました。つまり、力強く、躍動感がありながら、広い空間表現と透明感を融合しました。

これによって1段構成のまま2段構成に負けない「低域の沈み込み」「押し出しの強さ」を実現したという事です。

これまでのDENONが作ってきた全てのサウンドを統合出来た事は、新しいDENONサウンドのスタートを意味します。だから「2000番台」でもなく「Sシリーズ」でもなく、全く新しい「3000」というDENONのステージラインを作りだせたという事です。

単純に系譜を図示するとこんな表現になるんじゃないかと思います。

数字シリーズというのは「標準ライン=大量生産ライン」になりますので「3000」は従来のSシリーズより安価にリリースできています。なぜSシリーズのようなコストが掛からなかったか?というと、SX1 Ltdのように魔改造して作り上げた採算度外視の物量モデルの本質部分を継承し、パーツ選びや振動対策のノウハウを新しいテクノロジーと共に、最初から設計に組み込んで完成させたからです。魔改造的物量を投入しなくてもこのレベルのものを作るステージに来た。これが「3000」という数字でリリースできた理由です。

いわゆるグレードという意味では、確かに「3000」はSシリーズより格下のポジションです。しかしながらSシリーズのクオリティを上回る世界観を「最新テクノロジー」という武器によって標準モデルで実現した「下剋上」的モデルだとも言えます。だから、一番最初にお見せしたDENON公式の系譜図でPMA-3000NEはフラグシップラインの延長に位置付けられているという事だと思いますし、Sシリーズより安いから音も格下だ、とは言えないというのが「新しい数字ライン」の示す意味ではないかと思っています。

各サイトではどのように比較されているか

商業記事ですので新モデルへの忖度はあるという前提ですが、非常に高い評価がされています。



それぞれPMA-SA1、PMA-SX1、PMA-A110との比較をされていますが、総じて言える事はPMA-3000NEは「繊細さ」と「力強さ」の両方を兼ね備えている点が高い評価になっている事です。何かの特徴だけが突出しているのではなく、あらゆる音の出方がハイレベルにまとまっている。そしてVivid & Spaciousを体現する鮮やかで軽やかな音と広がる空間表現、この辺りはこれまでよりも更に高いクオリティで実現しているのだと思います。

他のYoutube動画などでもPMA-3000NEについてはほとんど不満点がなく、完成度の高い一台として評されている印象です。昔のDENONサウンドが好きな方からするとやや力強さや熱が足りないと言う方もいますし、一方、解像感の高いアンプと比べて情報量では劣るがやっぱりDENONらしい力強さがあると言う方もいます。あるいは瑞々しく繊細で密度の高い音とコメントする方もいます。つまり比較対象によって相対的にどの評価にも繋がる、まさに「ど真ん中」の音作りを「高いレベル」で実現しているアンプなのだろうと感じました。

3000番台が新しいステージを作る

これまでのDENONサウンドを統合してSX1/SX1 Ltdでしか実践できていなかった差動1段回路での新しいサウンドを3000NEで実現しました。ここからこれが「DENONのフラグシップ標準」としてスタートすることになります。また今後もこれとは違ったベクトルで新しい「Sシリーズ」が生まれるかもしれません。

こうした「特別モデルとしてのSシリーズ」と「標準モデルとしての数字シリーズ」が相対しながら、また新しいグレードが作られていくのでしょう。このDENONの進化の流れはとても特殊で、他のメーカーには見られない開発系譜だと思います。次のSシリーズが出てきて、120周年ではA120が生まれ、そしてブレイクスルーが融合を生み、また新しい数字が冠せられる。そんなDENON系譜の未来も期待したいですね。

今回、ついに「3000」という新しいグレードラインが誕生したことは素晴らしい事ですし、単なる2000、2500、3000という数字の追加ではなく、30年間続いた2000番台から初めて「3」という数字が登場したことの意味を感じ取りたいと思います。こうした系譜も知る事でワクワクする1台としてPMA-3000NE導入を決断出来ました。

※本記事は各種情報から考察も交えて記載したものですので、DENON公式見解とは異なる可能性もある事をご了承くださいませ。皆様のアンプ選びの一助になれば幸いです。

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