映像機器

4K HDR対応テレビを考える【1】液晶とOLED

PS4ProやUHD BD対応レコーダーを導入して、次世代ソースが揃いつつありますが我が家のテレビは「4K60p」や「BT.2020」には対応しているものの「HDR」非対応なので、HDRを楽しむことが出来ません。

しばらく我慢しようと思っていたんですが、UHD BDを再生する度に必ず下記メッセージが出てきて私を煽ってくるのです。

「再生は出来るけど、低画質だよ」って毎回言われてとても不愉快。

PS4Proもそうです。

何かこう「あーあ。俺、もっとポテンシャルあるんだけどな」とぼやかれてる気がします。

えーい。わかったわかった。毎回言うなと。売り言葉に買い言葉だ。4Kテレビ買ってまだ2年も経ってないけどHDR対応テレビ検討してやろうじゃないか!とブツブツ独り言を呟いて、ちょっと本気でHDR対応テレビを調べる事にしました。

主要モデルを調べる

以前、「4K HDR対応テレビを考える(4K REGZA 比較)」の記事で、東芝のZ20Xは確かにいいけど、PS4ProをプレイするだけならM500Xのコスパは凄いんじゃないか?と書きました。

でもいざ自分が購入検討するとなると現世代モデルで見るなら、東芝ならほぼ終息ですが「58Z20X」、SONYなら「65Z9D」「55X9300D」、パナソニックは「58DX950」辺りを比較するところから始めたいと思います。そして調べ始めて俄然興味が出てきたのがLGの「55B6P」。OLED(有機EL)テレビです。

一般的には、最新ハイエンド液晶は非常に輝度が高いですが、液晶の特性上バックライト型なので黒レベルや光漏れなどは苦手とされます。ここをハイエンド機は独自の技術でクオリティを高めている訳です。OLEDは自発光型なのでそもそも黒レベルや光漏れには非常に強いですが、まだまだ輝度では液晶最高レベルには届かない状況です。

次世代高画質の認証規格「ULTRA HD PREMIUM」においても「4K解像度」「色深度10ビット」「色域BT.2020」「HDR」などが条件として決められていますが、輝度表示だけが液晶とOLEDで条件が異なります。

ULTRA HD PREMIUM  輝度表示基準

・液晶 最低輝度0.05nit~最高輝度1,000nit を満たすこと

・OLED 最低輝度0.0005nit~最高輝度540nit を満たすこと

参考)映画の平均輝度 0.024~48nit / 従来放送やBD規格(SDR) 0.117~100nit

つまり液晶は明るい方向に強く、OLEDは暗い方向に強い。という事ですね。もちろんこれを満たしていなくても「HDR対応テレビ」は沢山あります。でも、これから買うならやっぱりこの基準を満たすクオリティは欲しいところです。

基準数値を見ると「液晶はOLEDの2倍も明るくしているのか!暗い方は良く分からないけど1nit未満の争いだから大したことない気がする。液晶の方が凄いんじゃないか」とイメージされるかもしれません。

じゃ、そもそもこれってどのくらいの明るさを指してるんでしょうか。ネットで先人たちが色んな例を出してくれてましたのでいくつかピックアップしてみましょう。

こう見ると、意外に暗い部分の輝度も重要な気がしてきますね。深い宇宙が「廊下の暗がり程度」に薄暗いと星の光がぼやけます。宇宙の黒はしっかりと沈んでもらいたいですよね。OLEDはそうした表現が格段に違ってくる。という事です。

明るい部分も「蛍光灯」ですら6,000nitもあります。部分的な光であれば10,000nitくらいまであってもいいと思いますし、表現が豊かになると思います。1,000nitでもまだまだ足りないでしょう。(画面全白が1,000nitは眩し過ぎると思いますが)

ですから、明るい部屋で比較した時OLEDはハイエンド液晶に対してやはり暗いですね。540nitがそこまで暗い訳ではありません。従来の液晶テレビも500nit以下のものがほとんどですが「暗い」と感じる事はほとんどなかったと思います。ただHDRで求めているのは、部分的にキラリと光る部分をどこまで輝かせられるか、明暗差をつけて表現できるか、また白飛びせず階調を出せるか、というところですから1000nitくらいないと従来SDRとの大きな差を作れない。という事にもなります。

そもそも見た時の印象は見る場所の明るさにも影響されます。例えば外で見るスマホの画面はやたら暗いのに、同じ明るさ設定で真っ暗な部屋で見たら逆に眩しいですよね。人間の眼が明るさを調整しているからです。同じように明るい場所で見る1,000nitと暗い場所で見る500nitでは同じくらいの明るさに感じる事もある訳です。

さて、ここで絶対輝度と同等か、それ以上に大事になるのは「HDR(ハイダイナミックレンジ)」の言葉のとおり輝度の幅です。最大輝度が低めなら部屋も暗めにして見れば相対的に明るく見えます。でもコントラストの幅だけは部屋の明るさでは何ともなりません。この輝度の差が大きいほど、しっかり明暗のコントラストを感じる事が出来ますよね。

この観点で見るとどうでしょう。

液晶 0.05nit~1,000nit = 2万:1 のコントラスト表現

OLED 0.0005nit~540nit = 108万:1 のコントラスト表現

になります。

OLEDはそもそも自発光型なので、完全に光を消せば0nitを実現できます。つまりコントラスト比は「∞:1」を実現できます。ここはOLEDの圧倒的な強みになりますね。

ざっと確認するとこんな感じのようです(※様々なサイトを参考にしていますのでブレはあると思います)

この中でUHD PREMIUM認証を表明しているのはDX950とB6Pだけですが、基本的にこのレベルのモデルは全て基準を十分クリアしています。LGも規格上は540nitでクリアするところ800nitくらいまで出していますので確かにハイエンド液晶よりは落ちますが、ミドルレンジの液晶と比べればむしろ明るいくらいですね。

HDR規格について

ところでHDRと一口に言っても、実は方式が色々あります。まず放送コンテンツ向けの「HLG方式」と、UHD BDやゲームで採用されている「PQ方式」に大きく分かれます。また、PQ方式は更に「ドルビービジョン」「HDR10」に分かれます。

HDR10

まずHDR10はPQ方式の基本となるHDR規格で、現状多くのオンデマンド配信、UHD BDの標準規格、PS4Proなどで採用されている規格です。一般的に「HDR対応!」と言われているのはこの規格に対応している事を指していると考えていいと思います。

ドルビービジョン

HDR10の拡張規格で、HDR10より画質に優れた基準となります。(HDR10が基本的にはコンテンツごとに輝度が決め打ちされているのに対し、ドルビービジョンはシーンやフレーム単位のメタデータから輝度を決定できるので、より正確なHDR表現が出来るとされます)。ドルビービジョンはNetflixなどで対応が始まっており、2017年にはUHD BDプレイヤーでも対応モデルが出てくる予定です。

HLG

スカパーなどで配信が予定されており、今後の4Kテレビ放送はこの規格での配信が考えられています。一つのソースでSDRからHDRに自然に拡張するなど、生放送にも対応できる放送を意識して規格化されたものです。ドルビービジョンが10,000nitまで見据えた規格なのに対し、HLGは1,000nitまでなので画質面での頭打ちは早いでしょうね。

画質という意味では良い方からドルビービジョン>HDR10>HLGとされています。

さて、ここからが大事なんですが、今販売されている「HDR対応テレビ」でこの3つに対応しているものはありません。LGのOLED 6Pシリーズは「ドルビービジョン」「HDR10」の2つに対応していますが「HLG」には非対応です。その他の液晶は現状「HDR10」だけにしか対応していないと思われます。

Netflixでドルビービジョン作品が出ていますが、これを体験できるのは現状LGのOLEDだけです。ただ、ドルビービジョンやHLGはソフトウェアアップデートで対応できる可能性があり、例えばZ20XはスカパーでHLG放送が始まればアップデート対応すると発表されています。

「HDR対応なら何でもいい」訳ではなく、HDRの「どの規格に対応しているのか」「どのくらいの輝度/コントラスト対応が出来るのか」に注意しないといけない。という事ですね。

さて、こうなってくると「輝度の高さ」も重要ですが、いかにHDR作品(特に映画やゲーム)を上手く見せてくれるかという点で、LGのOLEDに俄然興味も沸いてきたという訳です。

次回はLGのOLEDモデルの評価について調べてみたいと思います。

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