4Kテレビを調べてみる。は一旦まとめたのですが、いよいよ自分の購入判断としても大詰めになってきました。
今迄の全体の調査という目線から、真剣に「お金を拠出する」という前提に立ってシビアな目で2機種を比較してきました。その2機種とは、パナソニック VIERA TH-55AX900 と TH-58AX800 です。
●画質
AX900
・輝度の高さが圧倒的。直下型&ローカルディミングの効果もしっかり出ていて、明るい光は眩しいくらいに輝き、陰になっている部分はしっかり黒く沈みます。
・オートモードではコントラストは高いものの、暗部階調が潰れがちになります。モードやパラメータで好みの画質を探す必要があるでしょう。但し、階調を重視するとどうしてもコントラストは弱めになります。ここがこのテレビの画質面での妥協点でしょう。
・色温度は高めで、青や白の瑞々しさが素晴らしく、晴れ渡るような色表現です。同時に植物の緑、人の肌色の質感なども非常に優秀です。
・映り込みが激しいのが気になるところ。設置環境によってはかなり気になると思います。
AX800
・全体のダイナミックレンジが狭く、やや暗めな画像。ただ家庭では丁度良い明るさだと思います。
・オートモードでも暗部の階調が素晴らしく、髪の毛の一本一本の描き分け、影部分にある造形の輪郭もしっかり分かります。但しその分AX900よりコントラストが弱いので、AX900でも調整すればAX800レベルの階調表現は出来ます。懐の深さではAX900の方が上でしょう。
・比較的色温度が低い印象です。字幕の白もやや黄色がかっていますし、水や空の青も何となく空気のフィルターを通したようなくすみを感じます。また黒についてはやや青みがかった黒になっています。
・比較的映り込みが少なく、AX900よりも反射を気にしなくて良いと思います。正面から見る限り薄っぺらさも感じないのがありがたいですね。
●その他スペック面
・メニュー操作のレスポンス・・・AX900の方がサクサクです。
・HDMI端子・・・AX900は全端子4K対応。AX800は1端子のみ。この差は大きいです。
・サイズ・・・AX900は55インチ。AX800は58インチ。58インチの方が理想に近いですが、地デジも観る事を考えると粗も目立ちますので大きすぎるのも考え物かもしれません。
・アプコン(超解像)・・・AX900の方が優秀に思えました。AX800の方がザラツキを感じましたが単にサイズによる差かもしれません。
・音声操作・・・AX900は直接テレビに話しかけて様々な操作が出来るのが面白いですね。AX800は専用リモコンが必要で、指示できる内容も少ないです。
・3D対応・・・AX800がアクティブシャッター方式でAX900が偏光方式です。あまり3D能力に興味はないので、使うとすれば偏光方式の方がカジュアルで良いかもしれませんね。
・その他一部機能差がありますが、個人的には影響ありません。
●総合評価
画質面では、AX800は狭いレンジの中での階調表現が優秀で、見ていて心地良いテレビです。AX900はデフォルトだと確かに明るく鮮やかですが、ちょっとモードやパラメータをいじった方がバランスが取れるかな。という印象。ただ、最終的なポテンシャルはレンジが広い分AX900に分があると予想しています。機能面では、やはりAX900の方が半世代分進んでますね。HDMIの4K端子の数、レスポンス、4Kアクトビラ対応など機能面では確実にAX900です。
モデルとしてはそれぞれスラントデザインか通常スタンド式か、という違いがありますが、AX900はスラントデザインがカッコいいですね。中央下部で青く光るLEDも高級感があります。
ずばり、今買うべき4Kテレビの「私の最大候補」は、パナソニック VIERA TH-55AX900/900F です。後は価格ですね。価格面で見比べたときに次に有力候補となるのは当然TH-58AX800Fです。
●今後の4K規格の展望
以前も触れましたが、4Kの買い時は今がベストか?と言われればそうでもありません。じゃ、いつが買い時なの?と言うと、今後もベストタイミングはやってこないと予想しています。
今後の規格の話で現時点で見えているのは下記です。
HDR対応
HDRとはハイダイナミックレンジの事で「え、そういう機能は今もあるよね?」と一見思いますが、実は全く新たな規格です。今までより格段に広い輝度のレンジを表現でき、なんと従来の100倍のピーク輝度まで再現出来るようになると言います。2015年に登場すると言われているUltra HD Blu-ray(4K対応Blu-ray)も「HDR対応」になります。
次世代Blu-ray規格では「4K&HDR」「4K&SDR(非HDR)」「2K&HDR」「2K&SDR(非HDR)」の4種類が発売されると言われており、最高品質はもちろん「4K&HDR」です。
ところが現在発売されている4Kテレビでこの「HDR」に対応したテレビは1台もありません。規格対応という面で優秀なAX900ですら非対応です。予定では、HDR非対応のテレビで再生する時にはプレイヤー側でSDRに圧縮して(つまりレンジを狭くして)再生されると言われています。
つまり、現時点のテレビを購入すると、4K Blu-rayでHDR収録されたBlu-rayのポテンシャルを最大限発揮できないという事です。このHDR対応テレビは2015年モデルで登場すると言われていますので「購入はHDR対応したテレビまで待つべきなんじゃないか!」と思われるでしょう。一理あります。
ITU-R BT.2020
次に、色再現の為の広域信号の規格です。従来はBT.709と呼ばれる規格で、ここから色再現力を1.7倍に拡張したのがBT.2020です。実はこの規格は既に最新モデルは結構対応できています。ただ落とし穴もあって「対応」といっても100%カバー出来ているとは限りません。現行のテレビでは恐らく100%カバーできているものはありませんから、完全なフル対応とは言えないかもしれません。
カラーフォーマット4:2:0&10bit
4:2:0というのは現行のテレビで普通に対応できていますが、色深度の10bitというのはSONYは対応できていません。実際の階調に影響を与えると思いますので10bit対応ではない現行のSONYは少し不利、他メーカーは条件クリア。という状態です。
規格と購入時期の見極め
さて、この辺りを考えると2015年モデルでは「HDR対応」になり「BT.2020のカバー率」も上がるでしょうから、そのモデルが出るまで待った方が賢いのでは?と考えるのも尤もだと思います。
ただ、現行モデルでも言える事ですが「規格対応さえしていれば、画質が上なのか」というと必ずしもそうとは言えない状況です。2015年モデルで規格には対応したテレビが出てくるでしょうが、最大100倍の輝度規格であるHDR対応テレビでも、実態としては当面ディスプレイのスペックが追いつかず輝度10倍程度までに留まるだろうという予測もありますし、そもそも現時点ではBT.709で撮影されている作品の方が多いと言います。
そんな中、2015年春モデルでHDR対応は十分可能性がありますが、春モデルの価格がこなれてくる頃にはUltra HD Blu-rayに最適化された秋モデルが見えてきます。ただ、ここまで待ってしまうと、今度は毎秒120フレームの8K動画や48bitの色深度に対応した「Super MHL」などの規格搭載がチラチラ見え始めるでしょう。そうすると次は「8Kを待たずに4Kを買うのが本当にいいのか?」と躊躇する事になり、結果的に8K規格の完全確定&コンテンツ提供まで決断できなくなってしまう恐れがあります。
少なくとも「規格」において注意すべきは「その規格がなければ一切再生できない(ダウンコンバートも許されない)」という規格にぶち当たった時です。ここしばらくで言えばそれが「HDMI2.0&HDCP2.2」でした。幸いにも次の1年で注目される「HDR」や「BT.2020」はそういう類の規格ではなさそうですから、こういうタイミングにスルっと買ってしまうのはアリなんじゃないかと思っています。
今買うか、HDR&BT.2020が完全対応した春モデルが少し値下がる夏前を狙うか、あたりが4Kに踏み込むタイミングじゃないでしょうか。それ以降だと8Kの動向に惑わされる気がするのです。もちろん4Kはスルーして8Kテレビまで見守る。というならそれもアリでしょう。
という事で、私の結論は、今4Kテレビが欲しいなら、今買うのはアリ。です。
さぁ、我が家も受け入れ準備をしよう。(要するに、今買いたい欲求を正当化したいだけ(笑))