オーラNISMO購入にあたって気になっていたのがスポーツリセッティング(特別チューニング)です。この通称スポリセを行うと車の特性がどう変化するのか調べてみました。
インターネット情報の事前調査
オーラNISMOにおけるスポリセとは何か?というと、NISMOが実施してくれる専用VCM(ビークルコントロールモジュール)を採用したチューニングメニューの事で、高効率モーター、インバーター、大容量リチウムイオンバッテリーをコントロールするVCMをチューニングすることで加速感や回生力などの挙動や特性を変える事が出来るというものです。

インターネットではオーラNISMO FFの前期モデル(マイナーチェンジ前)とオーラNISMO 4WD(後期モデルのみ)の情報が比較的沢山出てきました。それによると何となく以下のような特徴が言えるようです。
■オーラNISMO FF前期モデルにスポリセを施すと
・ピーキーな初速の加速感が少し穏やかになる
・アクセスコントロールがしやすくなる
・Bレンジでは回生力が強くなる
この評価だけを見ると、FFではスポリセを施行するとなんだか大人しくなる感じ?だとしたら、あまりスポリセしたいという気持ちにならないなと感じました。
■オーラNISMO 4WDにスポリセを施すと
・大人しかった加速力がFF並みの速さになる
・Bレンジでは回生力が強くなる
こっちは凄いですね。4WDはFFよりも加速力が弱い。重量も重くなっているので初速でもたつくのは仕方ない。と言われていましたが、なんとスポリセによってFFの加速感を取り戻せるというのです。こうなると4WD特有の安定感、ハンドリング、押し出しとFFの初速感を兼ね備えた完全体になるじゃないですか。4WD所有者ならスポリセは是非施したいという気持ちになるんじゃないでしょうか。
オーラNISMO 後期モデルでのスポーツリセッティング公式情報
なかなかオーラNISMO FF後期モデルに対するスポリセ施行のレビューが少なく正確なところが分からなかったので、スポリセを施行するニスモパフォーマンスセンター併設ディーラーで聞いてみました。
公式資料を読むとスポリセによってどのような特性変化が生まれるか記載されていました。確かにFFと4WDではスポリセの効果が違うようです。
■FFのスポーツリセッティング特性変化についての公式情報
| Dレンジ | Bレンジ | |
| NISMO | タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスはそのままに、減速時の回生力を、高速側は強化する事で、高速時の制動力を高め、一方、低速時は緩和する事で、フットブレーキによるコントロール性を高めました。 | タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスはそのままに、加えて減速時の回生力を全速度域で強化しました。 |
| ノーマル | 加速感を強化しました。回生力は変更なし。 | 加速感、および回生力は中速域以上を強化しました。 |
| ECO | 発進時の加速力はオリジナルに近い特性としつつ、全体的に穏やかな加速感が得られるセッティングとしました。 | 発進時から、よりナチュラルな加速特性とし、合わせて回生力の強化によって、更にECOドライビングに繋がる特性としました。 |
■4WDのスポーツリセッティング特性変化についての公式情報
| Dレンジ | Bレンジ | |
| NISMO | 加速感を強化し、タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスとしました。減速時の回生力を、高速側は強化する事で、高速時の制動力を高め、一方、低速側は緩和する事で、フットブレーキによるコントロール性を高めました | 加速感を強化し、タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスとしました。加えて減速時の回生力を全速度域で強化しました。 |
| ノーマル | 加速感を強化しました。回生力は変更なし。 | 加速感を強化しました。また中速域以上の回生力を強化しました。 |
| ECO | 変更無し。 | 回生力のみ強化しました。 |
そしてFF、4WDともにNISMOモードではエンジン回転を増やして充電力を高めているようです。ほか全体的にBレンジの回生力を強めて充電力を高めていますね。充電が気になる場合のBレンジ選択がより効果的になったというイメージです。
FF車のスポーツリセッティングの効果
まずはFFにスポリセを施行するとどのように変わるのか?を解説します。
NISMOモード
FFのNISMOモードはとにかく初速の加速感の高さが特徴ですが、この速さを維持したまま回生力だけ調整を掛けているという感じのようです。Dレンジでは高速域の回生は強めて速度調節しやすくし、低速域は回生を弱めて軽快さが増すチューニング。Bレンジは全速度域で回生強化をしているという事ですから、しっかり回生力を働かせて充電することで電欠を抑える特性のようです。
ノーマルモード
Dレンジで加速感を強化したというのが凄いですね。標準でもノーマルの加速感はそこそこありましたので更に俊敏になります。またBレンジも加速感を強めながら、中速以上ではしっかり回生が効くようになったという事です。ノーマルモードでも機敏さが増しそうですね。
ECOモード
Dレンジでは初速は標準に近いもののそこから穏やかに加速していくという事のようです。より落ち着いた運転をしたければECOという個性が備わった感じです。Bレンジでもナチュラルな加速と回生強化ですから穏やかなまさにECOといった運転が強調されるようになったのだと思います。
こう見ると、前期モデルの時の評判であった「加速が大人しくなる」という印象ではなく、この後期モデルでのスポリセの評価としては、NISMOとノーマルは更に俊敏さに磨きがかかり、ECOはきっちり差別化して穏やかな運転が出来るようになったというように個性が際立ったというべきではないでしょうか。これは楽しみですし、スポリセを施したオーラNISMO は本領発揮と言えます。
ちなみに加速については、そもそも前期モデルは加速がピーキーだったので「スポリセでやや落ち着かせた」、後期モデルはそもそもその調整になった状態が標準なので「スポリセで加速は触らないようにした」というのが実態なのかもしれません。だとすると、スポリセ施行後の加速感は前期後期で同等なのかもしれません。
4WD車のスポーツリセッティングの効果
次に4WDのスポリセ施行でどのように変わるのか?解説します。
NISMOモード
そもそも4WDはFFよりも加速感が弱かったのでこれを高めるとの事。そしてその上で、FFのスポリセ同様Dレンジは高速域の加速を強め、低速域の加速を弱める。Bレンジは全速度域で回生を高めるという事で、結果的に4WDとFFの特性が同じになるようになったようです。
ノーマルモード
こちらはFFと全く同じ特性変化です。という事は全く同じ特性になったのかというと、実はノーマルももともとFFより4WDの加速は大人しかったみたいなんですよね。つまり、数値化するとすればFFは2から3に加速力が上がった、4WDは1から2に加速力が上がってFFのスポリセ前の状態まで引き上げたという事みたいです。
ECOモード
こちらはDレンジは何も触らず。Bレンジは回生を強めるというだけに留まっていますが、この回生もFFの方がより強くなっていると思われます。
公式資料の図で比較してみました
公式資料では特性変化の説明だけでなく、変化イメージを図示されていました。
■FFの特性変化(縦が加速力、横が回生力)

■4WDの特性変化(縦が加速力、横が回生力)

緻密な図ではないため、ざっとした読み取りになりますが、それでもFFと4WDでは明らかに純正状態の能力もスポリセ後の特性も違う事が分かりました。公式カタログにある加速力ではFFも4WDも違いがないようなまとめ方がされていましたが、やっぱり標準状態でもFFの方が加速力が上だったという事ですね。
そこで何となくこの図の読み取りを数値として示してみる事にします。
加速力を比較してみると(公式数値ではありませんのでご注意ください)
まず加速力から見てみましょう。※数値は公式資料の図より相対的な値として独自に推測したものです。
■FF
| NISMO | ノーマル | ECO | |
| 標準 | 6 | 3 | 1 |
| スポリセ後 | 6 | 4 | 1(ナチュラルに?) |
■4WD
| NISMO | ノーマル | ECO | |
| 標準 | 5 | 2 | 1 |
| スポリセ後 | 6 | 3 | 1 |
・NISMOモードでは4WDの加速がFFに追いついて並んだ格好
・ノーマルモードでは4WDがFFに追いつくも、FFが更に突き放した格好
・ECOモードはFFの変化特性がどんな感じか興味深いですね
回生力を比較してみると(公式数値ではありませんのでご注意ください)
同じく回生力を見るとこんな感じでしょうか。低速/中速/高速での回生力の強さを数値化してみました。
※数値は公式資料の図より相対的な値として独自に推測したものです。
■Dレンジ(FF&4WD):NISMOモードのみ低速&高速で調整
| NISMO | ノーマル | ECO | |
| 標準 | 2/2/2 | 0.5/0.5/0.5 | 2/2/2 |
| スポリセ後 | 1/2/3 | 0.5/0.5/0.5 | 2/2/2 |
■Bレンジ(FF&4WD):全体的に回生強化。ノーマルの低速のみ変化なし。
| NISMO | ノーマル | ECO | |
| 標準 | 3/3/3 | 1/1/1 | 4/4/4 |
| スポリセ後 | 5/5/5 | 1/2/2 | FF 6/6/6 4WD 5/5/5 |
前期モデルと後期モデルでのスポーツリセッティングの違い
後期モデルのスポリセではFFでも加速力が大人しくなる事がないというのは安心材料でした。インターネット上で出てくるこれらの感想はあくまで前期モデルでの感想のようです。
合わせて前期モデルのスポリセが発表された時の特性変化コメントと比較してみましょう。
| 後期モデル(FF) | 前期モデル(FF) | 特徴比較(読み取れる所感) | |
| NISMO Dレンジ | タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスはそのままに、減速時の回生力を、高速側は強化する事で、高速時の制動力を高め、一方、低速時は緩和する事で、フットブレーキによるコントロール性を高めました。 | アクセルコントロールを重視したセッティングを実施。アクセルワークでのスピードコントロールのし易さを実現しました。 | 後期モデルがレスポンスは変えていないというのに対し、前期モデルはレスポンスを落としたように読み取れます。元々後期の加速力を弱めてあったとすると、これで前期後期が同等になったと推測する事が出来ます。 |
| NISMO Bレンジ | タイムラグを最小限に抑えた敏感なアクセルレスポンスはそのままに、加えて減速時の回生力を全速度域で強化しました。 | アクセルレスポンスを重視したセッティングを実施。アクセルワークに敏感に反応し、アクセルON/OFFで のタイムラグを最小限に抑えます。加えて減速時の回生力も強化しました。 | 同じようなセッティングだと思われます |
| ノーマル Dレンジ | 加速感を強化しました。回生力は変更なし。 | 変更無し。 | 後期は加速力が上がっています |
| ノーマル Bレンジ | 加速感、および回生力は中速域以上を強化しました。 | 回生力のみを強化しました。 | 後期は加速力が上がっています |
| ECO Dレンジ | 発進時の加速力はオリジナルに近い特性としつつ、全体的に穏やかな加速感が得られるセッティングとしました。 | 発進時の加速力はオリジナルに近い特性としつつ、全体的に穏やかな加速感が得られるセッティングとしました。 | 同じようなセッティングだと思われます |
| ECO Bレンジ | 発進時から、よりナチュラルな加速特性とし、合わせて回生力の強化によって、更にECOドライビングに繋がる特性としました。 | 発進時から、よりフラットな加速特性とし、合わせて回生力の強化によって、更にECOドライビングに繋がる特性としました。 | 同じようなセッティングだと思われます |
<前期モデルスポーツリセッティングリリース記事>
公式コメントで比較すると、NISMO Dレンジでは前期モデルは大人しくなるセッティングがされたように読み取れます。またノーマルは後期モデルでは加速力をスポリセ前より上げているのも特徴的ですね。やはり前期と後期ではスポリセによる特性変化が一部異なっています。
スポーツリセッティングの世代について
ちなみに後期モデルスポーツリセッティングに2025年8月以降モデルに適合したものが発表されました。これは公式サイトに記載のある「TYPE-2」といった表現のものとは別で、どちらも同じ「TYPE-2」ではあるのですが適合車種によってリリースを分けているようです。
| 世代 | 発表 | 発売開始 | 適合車種 | 金額 |
| 後期モデル 第1世代 | 2024年11月14日 | 2WD 2024年12月下旬 4WD 2025年1月下旬 | ・オーラNISMO マイナーチェンジ後(’24/7~) ・オーラNISMO tuned e-POWER 4WD | 143,000円(税込) |
| 後期モデル 第2世代 | 2025年12月11日 | 2026年1月下旬 | ・オーラNISMO(’25/8~) ・オーラNISMO tuned e-POWER 4WD(’25/8~) | 154,000円(税込) |
この情報だけで見ると、2024年7月モデルは第1世代を施行、2025年8月モデルは第2世代を施行と見えます。2025年8月~2026年1月までの空白期間はどうすれば良いのか謎ですよね。

後日判明した事実
実は私はこの第2世代情報がリリースされる前の2025年12月にスポリセを施行しました。まだ25年8月モデル適合版が発表される前でしたが実際には適合版が施行されており価格もしっかり154,000円でした。特に詳細説明はありませんでしたが、どうやらサイレント先取りしていたようです。2025年8月以降モデルには適合版の正式リリース日とは関係なく第2世代スポリセが施行されるという事なのかもしれません。
とはいえ、そもそも2024年7月モデルと2025年8月モデルでは走行性能部分に違いはないと思われますので、実態としてスポリセのチューン特性も変わっていないと考えて良いと思っています。
<後期モデル 第1世代 スポーツリセッティング リリース記事>
<後期モデル 第2世代 スポーツリセッティング リリース記事>
スポーツリセッティング施行による注意点
さてスポリセ施行には注意点もあります。標準で付いていた保証について、スポーツリセッティングを施した車両は、エンジン、補機類、駆動系部品、電動パワートレインの一部が日産自動車株式会社の保証からNISMOの保証に変わるのです。
これによって該当部分の保証が1年ないしは2万kmまでに変更されます。既に標準保証が切れた後に施行するのであれば、そこからNISMO保証が始まるのでむしろ良いですが、標準保証が残っている間はその部分の標準保証を捨ててNISMO保証に移行する事になりますので十分理解の上施行しましょう。
また標準保証は日産で、スポリセのNISMO保証はNISMOでの対応となります。よって、不具合などがあった場合どちらの保証対応となる部分っか?の切り分けが必要になります。そういった意味では、スポリセ施行が出来るニスモパフォーマンスセンターが一体化したディーラーで車を買うと安心です。両機能を持った店舗であれば窓口が一本化されるので、切り分け問題でディーラーとNISMOでたらいまわしにならずに済みます。
これらの注意点も理解した上で考えるのであれば、今回の後期モデルのスポリセは「やらない理由がない」くらいに良い方向への特性変化になると思います。
私の場合はオーラNISMO FF後期モデルを新車で購入する訳ですが、納車と同時にスポリセもしてしまいたいと考えました。スポリセしてこそオーラNISMO の本領発揮!と考えればチャレンジするしかないです!
該当部分の保証は短くなりますがニスモパフォーマンスセンターで購入してそこでスポリセ施行も行って頂くので何かあったときにはそのまま購入ディーラーへ相談できます。こういった点もあるので私の場合は「ニスモパフォーマンスセンター併設の日産ディーラーで新車を買う」という判断になりました。

